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「ダイナミックな造形を子どもたちに体験させたい」という要望を幼稚園より受けて、美術家・山添joseph勇さんによる造形ワークショップが開催されました。全2日間行われたワークショップの2日目、5歳クラスの様子をレポートします。
朝9時半。園のホールに集まった子どもたちは14人。お休みの子がいたので、ちょっと少なめです。ホールには大きなケースにびっしりつまったたくさんのせんたくばさみ。そして大きなモニターには、色々な形をした、色とりどりのせんたくばさみが次々に映し出されていています。
「おはようございます」と話を切り出した山添さん。「今日は何も用意していないけど、せんたくばさみをたくさん持ってきました。何かを作らなくてもいいので(壁面状の空間に)くっつけたり、服や体につけたりして遊んでみてください」
それだけ子どもたちに伝えると、まず5分くらい、モニターに映し出したせんたくばさみを眺めていてもらいました。普段見慣れているせんたくばさみのはずなのに、形も色も、こんなに色々あることに子どもたちは早くも気づいた様子。「これはフランスのだよ」と山添さんが言うと「えーー?!」と驚きの声。今日は面白いことになりそうと、子どもたちも予感がしたようです。
「じゃあはじめよう」という一声で子どもたちは一斉にせんたくばさみの周りへ集まりました。赤、白、黄色、みどり、ピンク、青、半透明のものなどだいたいの色ごとにわかれていますがそれぞれの色のなかにも微妙な色違いがあるので、全部で200色くらいあるとのこと。奥の深い色彩と、多種多様な形の洪水には、圧倒されるインパクトがあります。子どもたちは、さっそく手にとってつなげてみたり、服や髪の毛につけてみたり、壁面のように無色透明のビニールを張った空間に挟んで遊んだり、大中小のサイズがそろったせんたくばさみを家族に見立てて、即興で物語を語ってみたり、自分一人の空間をとって、ひたすら何かをつくろうとしたり。本当に色々なことをして遊びはじめました。どうしたらいいかわからなくてぼーっとしちゃう子は一人もいなくて、みんなどんどん手を動かしてはせんたくばさみで何かしようとしているのが気持ちいいくらいでした。
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せんたくばさみという、つなげるのも切り離すのも、子どもが簡単に扱うことのできる非常にシンプルなツールゆえ、広がりは無限で、時間の経過とともに変わりゆく子どもたちのせんたくばさみとの関わり方は見ていてとても興味深いものがありました。個人の作業がグループ作業に変わったり、一度やりきったものを全部壊してまったく違う新しいものを創りだそうとしたり、個人の作業が終わったからと、友だちのためにせんたくばさみを集める作業をすることにしたり、どこまでもひたすらつなぎ続けていたり・・・。山添さんが「あと10分くらいで片付けの時間だよ」というまでは、この遊びはエンドレスに続くのではないかと思われるほど、子どもたちは夢中になってせんたくばさみと向き合っていました。
最後は、作ったものも、つなげたものも全部崩し、あちこちに散らばったせんたくばさみをかき集めて、色ごとに元のケースに納めておしまいとなりました。作っていく作業と片付ける作業は、目的も意味も異なるものですが、色の美しさのせいか、どちらもとても創造的な作業に感じたのは私だけでしょうか。
ワークショップに参加した先生たちも、せんたくばさみの奥深さを実感してくれて、これからは園の遊びに取り入れたいと前向きな感想をいただくことができました。
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山添 joseph 勇(美術家・深沢アート研究所代表)
https://www.children-art.net/yamazoe_joseph_isamu/
★せんたくばさみ会議 https://pegs.exblog.jp/

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夏休み最後の日曜日となるこの日、雲ひとつないギラギラ光る太陽の下で、にんじんのタネまきをメインにワークデーを行いました。集まったのは約30名。暑さにも負けない元気いっぱいの子どもと大人ばかりで、「日に焼けたねー!」などと挨拶をかわしながら集まり、いつものようにミニ黒板に書きだした今日のメニューをみんなで確認し合ってから作業にとりかかりました。

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グリグリでは、これまでも何度もにんじん作りにチャレンジしていますが、今年は、メンバーの中で福島県相馬市において、馬の支援活動を行っているSさんファミリーの呼びかけもあり、これまでよりも盛大ににんじんを育ててみようということになり、この日はタネまきをすることにしました。
Sさんが買ってきてくれたのは3種類のにんじん。乾燥しきった土にたっぷりの水をまき、肥料を混ぜてよーく土づくりをしてからのタネまき。かわいい絵も添えられたネームプレートを子どもたちが作ってくれました。最後にそっとわらをかぶせて、もう一度たっぷりの水をあげておきました。
これから一週間、乾燥しないようにメンバーとスタッフが日替わりで水やり当番です!
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1時近くまで作業をした後は、ランチタイムです。この日は、7月28日に開催したイベント「畑@校庭まるごと体感デー」のスライドショーを見ながら、打ち上げを兼ねたものとなりました。スタッフのKくんが家からタイカレーを仕込んで持ち寄ってくれたので、もうみんな大喜び!!具材はもちろん畑でとれたお野菜です。ちょっと辛いけど、子どもたちもおいしそうに食べていました。その他、収穫したトマトを同じく畑のバジルで作ったバジルソースであえたサラダ、採れたてのきゅうりと谷中生姜に手作りのシソ味噌をつけていただくなど、とても豪華なランチとなりました。
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猛暑が続くと、暑い、暑いと部屋にこもりがちですが、暑い中でもバラがきれいに咲いていたり、トンボが飛んでいて秋はもうすぐそこまで来ていることを実感したり、やはり畑で植物や虫と戯れることは私たちに色々な感覚を呼び起こしてくれるものだなと感じた一日でした。メンバーの子どもや大人たちも、きっと色々な季節の変化を感じたことだと思います。
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そして最後の最後に、スタッフの一人が色とりどりのトマトや、まだ青くて固いトマトでピクルスを作ってくれました!ひと月後ほど味をしみ込ませた後、ワークデーのラインタイムにいただけそうです。
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「畑@校庭まるごと体感デー」の全体レポートに続き、その中で開催されたプログラムのひとつ、「ぷちライブ!」の様子をお届けします。子どもから大人まで楽しめる、「ぷちライブ!」も今回で10回目となりました。
お迎えしたアーティストは、「COINN」。こどもと、おとなと、あかちゃんに送る、4人組の音楽バンド。ギター、ウクレレ、チェロ、ドラム、歌、色とりどりな編成で、愉快で切ないミュージックコンサートを奏でてくださる方々です。午前は小さなお子さんとご家族向けのほんわか室内ライブ、午後は芝生が広がる校庭での屋外ライブ、と2ステージ行いました。
○午前は親子・家族向けの室内ライブ
午前は、小さなお子さんを抱っこしながらでも聞きやすい室内でのライブ。アンプラグドのやさしい楽器の音色に包まれた時間となりました。COINNのオリジナル曲はもちろん、季節は夏、ということで即興?のお化け話を語った後に「おばけなんてないさ」を歌ったりしてほんわかした時間を過ごしました。

○午後はどなたでも楽しめる屋外ライブ
暑さの厳しい日だったのでお客さんがどのくらい集まるか心配しましたが、少し日が陰ってきた頃から人の姿も少しずつ増え、いつのまにか、たくさんの方々がライブの始まりを待っていてくれました。ライブが始めると、子どもたちは惹きつけられるようにじっとCOINNの姿を見つめ、楽器にも興味深々。知らず知らずのうちに近寄ってくる子どもたちも。メンバーの方々も、アコーディオンやギターを抱えて観客の中に入っていき、お客さんを盛り上げたり、みんなで一緒に歌ったり。夕暮れ時に、ホッと一息つけるような音楽の時間となりました。

IMG_3546a.JPG去る7月28日、にしすがも創造舎の校庭で「畑@校庭まるごと体感デー」が開催されました。連日の猛暑で熱中症が心配される中、400名にも及び方々にご来場いただき、本当にありがとうございました。
このイベントは、当初はグリグリの収穫祭として開催していたものですが、2010年にアースデイマーケットさんと出会い、オーガニックの食材を提供する農家さんのマーケットや親子向けの音楽ライブ、カモ・カフェのオープン・カフェが開かれるコラボ・イベントとして、今回が4回目の開催となりました。
グリグリのメンバーこの日のために準備したのは、畑で育てたじゃがいもとハーブの石がまPIZZA、手作りモヒートジンジャーエール、スペシャルアイスティー、メンバーのお母さんによる絵本の読み聞かせ、そしてキッズゲームです。キッズゲームは毎年子どもたちが自主的に企画・運営しているもので、今年は得点が書かれた箱にボールを投げ入れて遊ぶボール遊びでした。ルールを説明する係、列の整理をする係、ボールを渡す係、得点を数える係と子どもたちで担当を決め、いつになく整然と進むゲームの様子からは、子どもたちの成長目覚ましい姿が見受けられました。
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夕方の風が心地よく吹くころに始まるぷちライブ、今年のゲストは4人組のCOINN。優しく穏やかな音色のギターと歌によるライブには、大勢のお子さん連れが集まり、ゆったりとくつろぎながら生演奏に身をゆだねる姿が印象的でした。
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アースデイマーケットは、静岡のお茶屋さん、手作りジャムやさん、シフォンケーキにスモークチーズ、柑橘系のドリンクなど7店の多彩な作り手が集まり、来場者を楽しませてくれました。よーく冷えたドリンクは絶品でした!
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ところで、今回は特別に来場者のみなさんに野菜やお花のタネをプレゼントさせてもらいました。某企業から物資提供いただきました。
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「畑@校庭・・・」は、次回は春ごろ開催の予定です。再び皆さまにお会いできることを楽しみにしております。

にしすがも創造舎にある「ギロンと探偵のいる2年1組」で不定期に開催している親子向けワークショップ。今年度2回目は、『誰も知らない不思議な「たまご海」』で、踊って遊んでお話をつくろう!』という演劇ワークショップでした。
アーティストは、「パフォーマンス集団たまご」の皆さん(柴田千絵里さん、一平杏子さん、 川越美樹さん)と、ダンサーの石井友樹さんにお越しいただきました。誰でも知っている童話などを元に、子どもも大人も楽しめる歌あり踊りありの楽しい作品などを作っている皆さんです。
まず最初は参加者の皆さんの自己紹介。お名前を教えてもらった後は、「今日はたまご海のお祭りに行くよ!」という説明をして、ワークショップの始まりです。

お祭りに行くためには、まずたまご海の仲間にならなければいけません。方法は簡単、親子で海にいる生き物を自由に選んで冠を作ってもらいます。家族でどんな生き物が良いか考えて、一人ひとり名前も考えました。みんななあっという間に絵を描いて、カニの親子にイルカの親子、サメの親子にウニの親子と、楽しい海の仲間が増えていきました。

冠が出来た後は、その生き物になって自己紹介です。黒板に書かれたヒトデと同じだよと説明してくれる男の子や、エビが好きなイルカがいたりして、面白い海になってきました。

そして、次は身体も動かしていきます。自分たちの選んだ海の生き物の動きがどんな動きかも考えながら海の中をお散歩です。その時に、目が合ったらお辞儀をする、目が合ったら「たまご魚語」であいさつをする、目が合ったら「ハイタッチ!」と、いろいろなルールを交えながら、いろんな親子も交流できるようにしていきます。「たまご魚語」は、「パクパク、スイスイ、フリフリ、ウオウオ」の4つ。全部「こんにちは」の意味ですが、一つ一つに動作も決まっていて、動きも一緒にご挨拶します。

身体を動かして海も暖まった後には、いよいよお祭りに出発です!でも、お祭りの会場に行くまでには、様々な困難が待ち構えているのです。たまごのメンバーであるカメの親子について、みんなで会場に出発です。最初は普通に歩いているだけですが、時折「小さな石が転がってきた!」「大きな石が転がって来た!」「サメがやってきたから食べられないように、右へ、左へ、逃げろ~!」と、カメ親子の掛け声に合わせてみんなで上へ下へ右へ左へ右往左往。一気に身体を動かしました。

無事にお祭り会場に到着した後は、ダンサーのクラゲ先生から、たまご海の盆踊りを教えてもらいました。クラゲの形みたいな動きや、「たまご魚語」で使った動きも入っています。最後には、自分たちの魚のポーズも考えて、みんなで輪になって踊りました。時々、クラゲ先生から注文が出されて、みんなでつながって、うつぼになったり、ワカメになったりして、何回も盆通りを楽しみました。翌日に海の日を控えて、盆踊りで夏を満喫した一日になりました!

参加者の方からは、「たっぷり体を動かして表現して1時間ずっと笑っていたので参加して良かったです!!」「家でもまたやってみようかと思います。」「皆さんが笑顔で、とても楽しい雰囲気でした。」などの感想をいただきました。

にしすがも創造舎にある「ギロンと探偵のいる2年1組」では、絵本の読み聞かせの他にも、親子向けワークショップを開催しています。今年度は3回予定しており、1回目は『声とからだで音つむぎ』という音楽ワークショップでした。
アーティストは、音楽パフォーマンスグループ「つむぎね」から、宮内康乃さん、大島菜央さん、中尾果さんの3名にお越しいただきました。普段は主に声とピアニカを使って活動している方々で、今回のワークショップは声と身体だけを使った、とてもシンプルなだけに発見の多い内容となりました。

まず最初は、自由に歩くところから。そして「パン!」という手を叩く音を合図が聞こえたら、「ピタッ!」と止まります。最初はアーティストがリードしますが、合図を出す人を参加者に回していきます。子どもの手だと音も小さくなりますが、みんなしっかり音を聞いて止まっていて、だんだん聞く事に耳が慣れていくようでした。
少し身体をほぐした後は、声と身体を使った自己紹介です。みんなで一つの輪になって、それぞれの名前の一文字ずつを、高い音や低い音、短い音や長い音など、いろいろな声の出し方で読んで、それを皆で真似します。音に合わせて真ん中に集まったり、ポーズが出来たり、身体も自然に動かしながら、全員の名前を声に出していきました。

続いては、呼吸に息を合わせて声を出す練習です。「スーッ」と大きく息を吐いて、そこからできるだけ長~い音を出します。息が途切れるまで、みんな頑張りました。呼吸に合わせた発声をした後は、座って声は一休み。輪になって隣の人の真似っこをするワークです。最初は手を叩くところから。大きな音、小さな音、相手に伝えるスピードも速くしたり遅くしたり少しずつ変化していきます。手拍子だけでなく、声も取り入れいき、隣の人をよく聞いて、相手を見つめる姿が印象的でした。

順番に回すことに慣れた後は、真似する内容をいろんな人が変えて良い事にしていきます。真似をしても良いし、自分で変えても良いし、参加者に委ねながら音の出し方が変化しつつ、自然に動作も加わっていろんな音や動きが生まれました。
たくさんの声や動きを経験した後は、いよいよ「音つむぎ」。ダンサーでもある大島さんが、糸を紡ぐような身体の動きで、みんなの声を紡ぎだしていきます。みんなの声を集めた塊を参加者に渡すと、子どもたちは手のひらの中に本当に声の塊があるように、大事に大事に、そっと受け取り、また違う子に渡していきます。その動作に合わせてみんなは声を出していきました。

たくさん声を紡いだ後は、みんなで「音の森」を作ります。自分で好きな音を出しても良いし、誰かの音を真似しても良いし、誰かの音に合わせて何か音を考えても良いし、お互いの響きの中で森を作っていきました。

そして、たくさんの音に囲まれた後は森が夜になり、再び静寂が訪れます。最後は寝転がって目を閉じる時間。耳がたくさんの音を吸収した後の静寂は、何かいつもと違って感じられました。

参加者の方からは、「声とからだでこんなことができるのか!と新たな発見があった。」「物を使わずに遊べることがわかり、家でもやってみようと思いました。」「自由なんだって嬉しくなりました。みんなとつながってるんだって嬉しくなりました。」「からだと声の動きは双子の兄弟だと実感しました。」などの感想をいただきました。

保育園の4歳児クラスで行われた、グラフィックデザイナーの種市一寛さん&宮添浩司さんによるユニット「バレ・バレ」のワークショップをご紹介します。アーティストの方が提案してくれることはいつも刺激になるので、こういった機会を楽しみにしているし、作ることが多少苦手な子も思いっきり楽しんで、今後の制作へつなげていけるような活動を、という先生からのリクエスト。会場は保育室で、いつもの部屋をまるごと海の中に作り変えてのワークショップとなりました。

まずは、ホールで子どもたちと出会います。挨拶の後は海の絵本を見せながらの導入。見た事のある魚の名前などを口々に話し出す子どもたちに、「これからみんなで海に探検に行きたい人?」と尋ねると、「行く!」と元気に答える子や、「ちょっと怖い」と答える子も。そこで、海に行くために「魔法のスーツ」を装着します。ポリ袋で出来たスーツですが、子どもたちのワクワク感が高まって、そのまま海の中(保育室)へと出発です!
最初の数秒はソーッと部屋に入る子どもたち。でも入ってしまえばもう気持ちを押さえずに、てんこ盛りになったすずらんテープの山に埋もれたり、壁に貼られた魚たちや天井のネットなどに触ったり「ワーワーキャーキャー」大興奮の子どもたちに、大人も笑いが止まりません。

そうして空間自体を満喫したところで、アーティストが一つだけ吊るされた魚に注目。「1匹だけだと淋しいよね。お友だち作ろうか?」と問いかけて、制作の時間に突入しました。まずは、丸や三角に切られた3色ほどの画用紙を使って魚の形を作ります。色の選び方や組み合わせ方で一人ひとり違った魚が登場します。

一通り形が出来た所で、「お魚さんにお洋服を着せてあげよう。」と、飾り付けに使う様々な素材(マスキングテープ、シール、毛糸など)を紹介します。材料が登場するとまた子どもたちの興味も深まり、材料の箱に群がりながら、それぞれ自分が使ってみたい素材を持っていきます。マスキングテープは、ハサミで切るのが難しい素材でもありますが、何回も繰り返すうちに、なんとかかんとか切れるようにもなり、この1日だけでもまた子どもたちの成長を感じました。

材料だけでなく、イカやタコなど、アーティストが作った別の見本なども時々見せながら、子どもたちのイメージを少しずつ刺激して制作は進みます。一つ完成するごとに天井から吊るして飾るのですが、大人を見つけては自分の作品がどこにあるか教えてくれる子もいて、誰かに自分の作品を見てもらうことの大切さも改めて感じました。

次々に作品を持ってくる子どもたちに、天井に吊るす作業が追い付かずスタッフもてんやわんやですが、予想以上に4個5個と作り続けても途切れない子どもたちの集中力には感心しきりです。
時間が経つと、材料が増える面白さと同時に、同じ素材でもいろいろな使い方が生まれてきます。形の紙を長~くつなげたり、リボンを長くつかって垂らすようにしてみたり、魚だけじゃなく、お魚さんの家なども加わりました。紙コップなどの立体的な素材も加わると、海はますます豊かになっていきます。


制作が終盤に差し掛かった頃には、「魔法のシール」を少しずつ子どもたちに渡しておきます。そうして60分程が経過したところで、保育室の電気を半分消灯。何事かと思っている子どもたちに、海が夜になるからと片付けの声かけをします。そして一度全員で座ったら、アーティストから魔法の呪文が。「海さん、おやすみなさい。」とみんなで一緒に唱えると、そこはもう夜の海!実は、魔法のシールや、最初からいた魚たちには畜光塗料が仕込んであり、夜の海で光るようになっているのです。子どもたちは「ウワーッ!!!」と大喜びで、暗いにもかかわらず海中を動き回って、全身で楽しさと喜びを表してくれました。

夜の海を堪能した後は、海が朝になり、みんなでホールに戻ってワークショップを終えました。終了後の振り返りでは、先生から、「制作が苦手な子もいたので、あんなに集中するとは思わなかった。」「今日は能力的な個人差があまり出ずに、一人ひとりが興味を持って取り組んでいた。」「いろんな素材を心豊かに使えた。」などの感想をいただきました。また、この日は作品を夕方まで飾っておき保護者の方に見てもらえるようにしたり、実施後も少し海を残しておいたり、その後も園で活用して下さるとのことでした。
アーティストは、楽しい環境を整えて、楽しい仕掛けを用意して、タイミングを見計らいながら子どもたちを刺激します。でもアーティストが一方的に投げかけるだけではワークショップは成り立ちません。子どもたちの時々の反応や制作の様子に応じて、より制作に集中していけるように、より子どもたちがイメージを広げていけるように刺激をしていく。そうして、出来あがった海の豊かさの中で、子どもたちの集中力と、空間や材料への反応の良さ、一人ひとりが持っている力や想像力の広さに本当に感動した一日でした。
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バレ・バレ/グラフィックデザイナー
https://www.children-art.net/bare_bare/

保育園の5歳児クラス15人を対象に行われた、入手杏奈さん(ダンサー・振付家)のワークショップをご紹介します。静かな動きや賑やかな動きなど、楽しくいろいろな身体の動きを経験させたい、そしていろんな事を楽しめる子どもたちなので、アーティストがやりたい事をめいっぱいやってほしい、という先生からのリクエスト。友だちと触れ合ったり、誰かの真似をしたりすることも含め、40分間、汗だくになるまでめいっぱい身体を動かしました。
ホールに入ってきた子どもたちは、まずアーティストとご挨拶。実は、先生が事前に「バレリーナの人が来るよ。」と伝えて下さったので、チュチュも着ていない入手さんに、少しがっかりしたらしい子どもたち。でも、入手さんが「ダンスをしています。」と自己紹介し、少し踊ってみせると、その面白さに「クスクス」と笑いがこらえきれません。スリッパを飛ばしたり、カーテンの裏から手だけ出して踊ったり、最後には一人ひとりの頭を「ポンポン」とタッチして、子どもたちの心をつかみます。

入手さんの挨拶が終わった後は、子どもたちも先生も、みんな一緒になって身体も使ってご挨拶。近くにいる人と「おはようございます。」と挨拶するところから初めて、指と指で挨拶したり、お尻とお尻で挨拶したり。最後には、子どもたちのアイデアで、頭でご挨拶。相手が痛くないように気をつけながら、そっと頭を「コツン」と挨拶します。
そうして身体がほぐれた後は、輪になってのワークです。隣の人にタッチして、そのまた隣の人にタッチして、相手から送られてくるものを、さらに別の人に渡していきます。隣同士だけではなく、ランダムに好きな人に渡す、というのもやってみました。続いては、一度みんな座ってみます。すると、入手さんから「目を閉じたまま真似をしよう。」との声かけが。子どもたちは意味が分からず「え~?」と言う子もいますが、とにかく目を閉じます。そしてどんな真似をするかと言うと、手で床を叩いたり、足をふみならしたり、音を鳴らす動きの真似でした。要領がわかった子どもたちは納得した様子でワークに取り掛かります。自分の聞いた音の鳴らし方が合っているか気になって目を空けてしまう子もいる中で、まじめにギュッと目を閉じて、正解じゃないけど自分が思った動きで応える子も数名。入手さんは、そういう子も「いいね。」と認めます。

後半は、いろんな動きを経験した身体をさらに開いていきます。面白い擬音語や会話等も用いながら、どんどん入手さんの動きを真似していきます。手拍子したり、寝転がったり、「リンリン」は電話の動作、「モジモジ」は身体をクネクネさせながら、「ムキムキ」は力持ちのポーズなど、ホール中を所せましと移動しながら様々な動きを取り入れます。電話をかける動作をしながら、「お父さん?」「お母さん?」「先生?」「象さん?」など、ユーモアのある台詞も加えて、入手さんの面白い動きや言葉に、子どもたちの笑いも止まりません。

さて、そして最後は、たくさん真似した動きを、「曲に合わせてやってみようか?」という入手さんからの問いかけ。ここでも子どもたちは少し「キョトン」とした様子。そうすると、電話の「リンリンリン」という音がどこからともなく聞こえてきます。そしてかかった曲は、『恋のダイヤル6700』byフィンガー5!実は、これまでの動きが歌詞にピッタリ合うように考えられていたのです。「リンリンリリリン」ではもちろん電話をかける動き、「男らしく」という歌詞のところでは、「ムキムキ」でやったポーズ等など。
最初は、テンポの良い曲のスピードや振りについていくのに必死な子もいますが、何回か繰り返していくと、踊ることがどんどん楽しくなっている様子が伝わってきます。ジャンプするところでは、1回目より2回目、2回目より3回目の方が思いっきり飛ぶようになり、最後に好きなポーズを決めるところも、段々格好良くなっていく子どもたち。曲にのって、身体をいろいろ動かす事そのものを楽しめるようにしていきます。

何回か繰り返し踊っているうちに40分はあっという間に過ぎて行き、一度終わりの挨拶もしたのですが、最後に「もう1回踊りたい!」という事で、最後の最後にもう1回踊って、この日のワークショップを終えました。保育室に戻る時も「リンリン」の動作をしながら名残惜しそうに入手さんに話しかける子が絶えません。今回のワークショップは2日間の実施で1週間後に2回目を迎えるのですが、既に次回を楽しみにしてくれている様子に、スタッフも嬉しくなりました。
実施後の振り返りでは、先生から「早速普段の保育でもやってみます。」との言葉をいただきました。梅雨に入って外で遊ぶ機会も減ってしまうかもしれませんが、身体を動かすのが大好きな子どもたちだったので、これからも身体のいろんな楽しさを発見していってほしいと思いました。
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入手杏奈(いりて あんな)/ダンサー・振付家
https://www.children-art.net/irite_anna/

梅雨入りしてすぐのグリグリワークデーは、何とか雨に挟まれた晴れ間に実施する事ができました。畑の緑も色鮮やかに賑わい、メンバーさんもたくさん訪れ作業がどんどん進む一日となりました。

活動の最初には黒板でその日のメニュー(前回やり残した事も含めてみんなで考える)を確認、今日の「つもり」ということで、その日一人ひとりがやる「つもり」の事も教えてもらいました。ブドウが気になっている人や、子ども畑の計画等みんなで何となくお互いの事を共有してスタートです。
子どもたちはサッと子ども畑に向かい、雑草を抜き始めました。前回撒いた種も少し芽を出していましたが、それ以外にも植えたいものを考えて苗を買い出しに。一方で、今年に入り成長のスピードがぐんと伸びたブドウは、あっという間に大人の背丈も越える程に。しっかり誘引します。

さらに、今日一番期待していたのは、石釜の試行運転。新しいメンバーで火を熾す達人が登場、夏祭りに向けて、一度試しに使ってみようという事に。積み木のような薪が並ぶ様が何となく可愛い。ちょこちょこ子どもたちも様子を見に来ては、一人前に団扇を仰いだり、中を覗いたり興味津々な様子です。

石釜を達人にお任せした後は、ごぼうの葉も剪定。切られた大きな葉は、子どもたちの日傘に回収されていきました。その隣では、自分が植えたから!と収穫を楽しみにしていたニンニクを、兄妹でどんどん引っこ抜き、白くて大きい立派なニンニクがてんこ盛りです。

畑作業の傍ら、子どもたちは虫に気を取られることもしばしば。永遠のアイドル、ダンゴ虫を両手いっぱいに抱えて披露してくれます。もちろん虫だけでなく、ワイルドベリーの収穫もしっかりと。

その他にも雑草を抜いたり、トマトを植えるための畑を耕したりしていたら、あっという間にお昼の時間。石釜も1時間程経ったところで、おにぎりやホットドックなど、いろいろ試しに焼きながら芝生広場でランチタイムとしました。ピザもとりあえず焼けていたので、7月の夏祭りでも石釜を使って何かを焼けるかも!?とメンバーもワクワクです。

午後からは、ハーブを植えている畑でも作業をしました。少し日陰になっているので、蚊の発生率が高い気がしますが、かゆさと、どくだみの香に耐えながら、抜いても抜いても出てくるどくだみたちを、コツコツコツコツ抜きます。「根っこが抜けると気持良い!」と言いながら根っこに夢中になる子どもに、気が滅入りそうになる大人は励まされました。ラベンダーやじゃがいもの花も満開で目も癒されます。

芝生広場では、工具を持参したパパさんがついに柵を完成させようと、やんちゃな男の子たちに工具の使い方教えつつ、黙々と組み立ててくれました。立派に完成した柵は早速畑へ。全体の景観も考慮しつつ場所を決め、畑の素敵さが一段と増しました!

また、各家庭で立派に成長したトマトの苗を畑に植え替え、害虫予防ににニラやオレガノも植えました。メンバーがたくさん育ててくれたので、畑に入りきらなかった子たちは、ベランダで鉢植えにしました。

そして、石釜試行運転が終了した後は、壁面修理の続きです。セメントの配合などがなかなか難しく、ヒビが入っているところもあったので、みんなで相談しながら作業をしました。実は夕方から雨が降ってしまったので、ちょっと先が心配ではありますが、試行錯誤を重ねるのはグリグリメンバーの得意な事、また次回以降様子を見ながら完成させていきたいです。
最後には、また黒板の所へ集合して、みんなが何をしたか振り返りを行います。あちらこちらで散らばって作業をしていると分からない事もあるので、こうして共有する時間はとても大切。これから夏野菜も収穫できるよう、梅雨や暑さに負けない畑をみんなで守り育てていきたいです!

保育園の5歳児クラスで行われた、カブさん(美術家・深沢アート研究所緑化研究室代表)のワークショップをご紹介します。会場になったのは、いつも子どもたちが生活している保育室。一人ひとりが作る過程もありながら、最終的にみんなで一つの作品になる経験をさせたい、との先生からのリクエスト。今回は、セロテープという素材にとことん向き合い、大きな透明の空間を作ろう、という内容でした。

実は、この日の1週間前に既に4歳児クラスでワークショップを実施していたので、隣で見ていた5歳児の子どもたちは期待が高まって、今日のワークショップをとても楽しみにしていたとのこと。部屋に入ってくると、「宇宙にするんだ!」など、既にイメージが広がっている様子でした。ワクワクする気持を押さえながら、まずはアーティストからのご挨拶。その後、今日みんなとやる事、道具の使い方などを説明していきました。
まずは、セロテープの使い方からです。セロテープ台を一人ずつ取り、両手を使ってセロテープをある程度の長さに切る。そしてクルクルっと丸めて滴のようにしていきます。何回か丸めてある程度大きくなったら、最後は顔を描いて自分だけの滴が完成です。小さいところに慎重に、真剣に好きな色を使って描いていきます。

練習が終わったら、今度はセロテープを教室中、好きな所に貼り巡らせます。脚立や机などをきっかけにして、あっちからこっち、こっちからそっちへ。長さが足りなかったり、上手く空中でセロテープを切れなかったり、セロテープ台の扱いも最初は難しい事もあります。でも、さすが5歳さん、大人が手伝おうとしても「いい!」と、自分たちで出来る方法を見つけていきます。経験を通して、子どもが成長していく瞬間でした。

また、貼り巡らせたセロテープには、滴(子どもによってオバケだったり、蛇だったり、好きなもの)などを張り付けて装飾します。ふと気付くと、制作のヒントになるよう流していたプロジェクタのイメージにもセロテープの影が映って面白い事に。自分の影で遊ぶ子もちらほら。

そして、ある程度時間が経つと、セロテープだけでなく、マジックで絵を描く事も始めます。いつもの紙と違って、立った画面に描くのは難しいかと思いきや、そんな事は気にせず友だちとおしゃべりもしながら描いていました。

時間が経つと、自分の空間をある程度決めて、そこを重点的に作り込む子も登場します。真剣にセロテープを見つめる姿は立派な職人さんのよう。そして、高い所にも低い所にもセロテープが貼ってあるので、屈んだり四つん這いになったり、子どもたちは身体を器用にいろんな風に使って部屋中を移動します。下手に大人が入ろうとすると、行く手を塞がれて進めなくなるゾーンもありました。

さらに時間が経過したところで、アーティストからセロテープ以外の素材も紹介されます。セロテープをとことん突き詰める事ももちろん、楽しんで制作できる事も大切、という事で、キラキラの折り紙、アルミホイル、カラーテープなど、子どもたちの想像力を刺激するような工夫です。嬉しそうにアルミホイルを見せてくれた男の子、何かと思えば、アルミホイルの上に、違う光り方をする銀の折り紙がいくつも貼られた素敵な作品になっていました。

始まってから約90分間、子どもたちの集中力は途切れる事がありません。友だちと一緒になって、のりまき&梅干しを隣同士に飾ったり、「大きくなったらオバケと友だちになりたいからオバケばっかり作るの。」と自分の作品を追及したり、それぞれの想像力を活かして、いろんな物語が生まれていました。最後には、みんなで集まって作った空間を眺めてみます。アーティストは、みんなが頑張った事を認めると同時に、「今日は特別ね。」と、いつも好きなだけ好きなようにセロテープを使える訳ではない事を、きちんと子どもたちに説明してワークショップを終えました。
先生からは、「最初は手探りだったけど、どんどん集中していく子どもの様子が分かった。」「アーティストやスタッフがサポートする姿を見て、子どもたち自身もお互いに助け合う事を学んでその場で実践していた。」などの感想をいただきました。また、この日はこの作品を残しておいて、空間を眺めながらお昼ご飯を食べたそうです。一見とてもシンプルな事のようですが、アーティストの導入や、素材を投入するタイミングなどにもいろいろな思いや考えがあってこそ成り立つワークショップ。そして道具の使い方ももちろん、自分の中で様々なイメージを広げて身体全部を使って次々に制作に取り組む子どもたちの姿に、本当に一瞬一瞬彼らが何かを吸収して成長している事をヒシヒシと感じた一日でした。
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カブ(かぶ)/美術家・深沢アート研究所緑化研究室代表
https://www.children-art.net/kabu/