2025年度『社会福祉法人 中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」』の助成を受けて実施した、少年院でのワークショップをレポートします。

中学生~20歳程度の16名の少年たちを対象に、美術家の塩川岳さんと、アシスタントの倉持太一さんと共に、塩川岳さんワークショップ@少年院2日間のワークショップを実施しました。少人数で丁寧に関われるように、5~6人ずつ、男女別の3グループに分けて、1日1グループ60分間ずつ×3コマを2日間という設定にしました。

男の子たちは2日間かけて、個人制作とみんなで協力することの両方を体験できるような内容を検討しました。例えば家をつくるなど、1時間の中でも達成感が味わえて、且つ何か驚きも欲しい、という法務教官の方のお話を元に『光る自分空間』をつくることにしました。

1日目は、まずは段ボールで一人一つの空間づくり。屋根と壁になる板段ボールに、蛍光塗料やカッティングシート、ペンなどを使って、自由に装飾を行い自分だけの空間をつくりました。絵を描くことに集中する子もいれば、カッティングシートを好きな形に切って模様を貼ることにする子など、つくり方もそれぞれでした。

1日目の最後には、部屋を暗くして手持ちのブラックライトで自分の空間や他の人がつくった空間を鑑賞しました。蛍光塗料が光ると明るい時とは違う雰囲気が味わえて、「もっとこうしたい」など、翌日への期待が膨らんだ様子でした。

2日目は、それぞれの自分の空間にさらに装飾を加えた後、カラービニールシートと園芸用支柱を使用して、一つの街のようにつなげていきました。支柱を支える役割と、固定する役割など、一人ではできない作業は、大人も手伝いながらみんなで協力して完成させました。

そうしてつながった一つの空間を、最後には再びブラックライトで鑑賞。誰かがつくった空間を行き来しながらお互いに鑑賞し合い、何が描かれているのか気づいたことをお話ししながらゆっくり鑑賞して、一人ひとりの作品の違いや面白さを楽しみました。

女の子たちは、1日ずつ、異なる内容で実施しました。手や足に絵の具がつくようなダイナミックな活動がしたいという要望と、人見知りな子がいるので1日目にワーっと楽しい経験ができれば2日目につなげやすいかもしれない、という法務教官の方のお話を受けて、1日目に『透明エアドーム』、2日目は『光る絵』をつくりました。

『透明エアドーム』は、部屋いっぱいの大きさのドームを、ホワイトシートと透明シートを貼り合わせてつくりました。シートを貼り合わせる作業も一人ではできないので、子どもたちも大人も一緒になって声をかけ合いながら作業をしました。

ドームの形が完成したら、事前にカットしてもらっていたカラフルなカッティングシートを貼って、最後はドームを膨らませて鑑賞タイム。部屋を暗くしてドームの中に入り、みんながつくったカッティングシートの影や色が部屋に漂う様子を楽しみました。

2日目の『光る絵』は、まずは部屋いっぱいに広げたクラフト紙にランダムにペンで線を引きました。その後、1人1枚、90cm×2mの大きさを分担して、ペンで引いた線をきっかけにして、模様を描いたり、形に色を塗ったり、自由に絵を描いていきました。

最後は、みんなの絵をまた一つにつなげて、ブラックライトの下で鑑賞しました。暗くなって絵が光ると歓声が上がり、絵の周りを一周して鑑賞しながら、何が描かれているかなど、お互いに気づいたことを伝え合う時間にもなりました。

ワークショップ終了後に書いてもらった、子どもたちのアンケートの一部をご紹介します。


●子どもたちより

・試行錯誤しながらつくった作品なので、できた時に意外と絵になっているなあと思いました。みんなの作品も上手だなと思いました。

・つなげた時に、隣の絵同士が偶然つながって見えるようになったりする絵のつながりや、みんなが自由に描いた絵がとても元気なパワーを感じる絵となったのがすごく素敵でした。ブラックライトを当てて光らすのも幻想的でとても最高でした。

・(印象に残っていることは)絵具を手に塗って、クラフト紙に手形を付けてみんなで笑ったことです。みんな上手ってほめてくれて嬉しかったです。

・自分の個性が表現できる作品ができて嬉しかった。作品をつくる中で勉強になることもいっぱいあったし、人生での一つの経験になりました。ありがとうございます。


アーティストとともに、いろいろな素材や道具に出会い、そこから自分の想いやイメージをどうやって形にしようか、一人ひとりが考えて試行錯誤してつくり上げた作品は、どれも見応えがあり、私たちも元気をもらうような作品ばかりでした。つくる時間の中で、自然と協力することやお互いの作品を認め合う姿が見られて、子どもたちのアンケートにも「みんな」という言葉が残されていたのが印象的でした。

一緒にワークショップの内容を考えて協力してくださった少年院の皆様、そして、ご支援いただいた「赤い羽根福祉基金」の寄付者の皆様に心よりお礼申し上げます。


【助成】社会福祉法人 中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」

都内公立小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたち7人と取り組んだワークショップ。
アーティストの小倉笑さん(パフォーマー・ダンサー・振付家・演出家)、アシスタントの金子美月さん(ダンサー・振付家・演出家)と、たくさん身体を動かしながらコミュニケーションを重ねた全5回のワークショップのうち、2回目のワークショップの様子をお届けします。

2回目ということもあり、リラックスした様子で小倉さん・金子さんと挨拶を交わす子どもたち。それぞれが考えた「呼ばれたい名前」の名札をつけ、「今日はこう呼んでほしいな」などとみんなで談笑しています。

まずは自己紹介ダンス。自分の名前に動きをつけて発表し、それを全員が真似していきます。ブリッジする子、片足立ちをする子、ゴロンと横になる子…名前に「スーパームーン」をつけた子は、それに因んで「月」のポーズを見せてくれました。

ストレッチをしたら円になり、手拍子を回していくワークを実施。同じ方向に回しても、反対向きに回してもOKです。途中、クルッとまわって手拍子をした子に「それいいね!」と小倉さんが反応し、クルッとまわる動きも追加に。だんだん早くなるスピードに大盛り上がりの子どもたちでした。
そのまま、ゴシゴシと隣の人の身体をさすったり、みんなで円のまま歩いたり、簡単な動きをつなげていくと、いつの間にか1曲分の振付が完成!音楽にのせてみんな楽しそうに「ゆるゆるダンス」を踊っていました。

「今日のテーマは、“かるさ”と“おもさ”で踊ってみようです!」と小倉さんから発表された後、教室のあちこちに散らばる子どもたち。自分の名前を、小指で “かるく” 書いてみたり、腰で “おもく” 書いてみたり、お題に合わせていろんな動きを体験します。
「かるく書いた時はどんな感じ?」と尋ねると「スルスル~」「ふわふわ!」「はやい!」「上の方に書いてる」といろんな返答が。続いて「おもく書いた時は?」と尋ねると「かたい感じ」「下に下がっていく」など、それぞれ動きながら、考えながら答えてくれました。

それでは、さっきの曲を「かるい」と「おもい」を混ぜて踊ってみよう!
小倉さんのかけ声に合わせて、ふわふわとかる~く踊ってみたり、かたくおも~く踊ってみたり。先ほど言葉で表したことを意識しながら、自分の身体の動きに集中する子どもたちの姿がありました。そして何より、ゴシゴシと近くの人の身体をさする振付の時には、「待ってました!」とばかりに、それはそれは嬉しそうな笑顔で友達や先生たちとふれあう様子が素敵です。

後半はペアになり、相手が動かす新聞紙の動きを自分の身体で表現していくワークを実施。
小倉さんと金子さんが見本をみせると、「新聞のまねっこしてる!」と、すぐに「何をしたいか」を理解する子どもたち。
各ペアに新聞を配布したら、さあやってみよう!上がったり下がったり、激しい動きに一生懸命ついていく子や、相手が動きやすいように優しく新聞を動かしていく子も。はじめは気分が乗らなくてゴロンとしていた子も、新聞を持った先生が近づき、新聞を動かしていくと、その動きにつられて思わず立ち上がり、みんなと一緒に楽しそうにのびのびと踊ってくれました。

最後は2チームに分かれて、それぞれの動きを見合いっこ。新聞がふわふわと風になびくような“かるい”動きも、ギュギュッとかたく丸めた“おもい”動きも、新聞の動きをよくみながら、それぞれが全身をつかって思いっきり表現していました。
子どもたちから感想をきくと、「ゆっくりの動きがきれいだった」「丸まるところがおもしろかった!」と、それぞれのチームの素敵なところがたくさん!AちゃんとBちゃんのペアは「Aちゃんの新聞の動かし方が好きだな」「新聞をBちゃんっぽく動かしたからだよ」と、お互いを思いあいながらの息ぴったりのやりとりがほほえましかったです。

ワークを重ねていくにつれて、どんどん開放的になっていく子どもたち。残り3回、これからどんな表現をみせてくれるのか、とても楽しみになったワークショップでした。

芸術家と子どもたちでは今年度、令和6年度(補正予算) 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の支援を受けて、豊島区内のひとり親家庭や困窮家庭の子どもたち、海外にルーツを持つ子どもたちなどとのワークショップを実施しています。 この企画では、演劇・身体表現・音楽など様々なジャンルのアーティストが関わってワークショップが進行しており、今回のブログでは、ダンスチームを担当している小山まさしさんと、小学1~6年生の子どもたち12人とのワークショップの様子をお届けします。

実施概要
対象:豊島区内に住む小学1~6年生の子どもたち12人
実施日:2025年10月16日(木)
アーティスト:小山まさし(ダンスアーティスト・アートマネージャー)
アシスタント:泊舞々(ダンサー・振付家)
 

※昨年度までの活動はこちら


豊島区内で学習支援をおこなっている「まなびすたーり」の協力をえて、参加者となる子どもたちと出会い、今年度のワークショップをスタートして5回目となるこの日。 インド、ネパール、中国、日本と、様々な国のルーツの子どもたちがゆるやかに集い、お喋りをしたり、走り回ったり、ホワイトボードに絵を描いたりしながら、ワークショップが始まるのを待っていました。

「みなさん、おいで~」と、“もじゃもじゃ”こと、小山まさしさん、“まいまい”こと、泊舞々さんが子どもたちに声をかけると、それぞれのペースで反応する子どもたち。 「学校の新聞に、もじゃもじゃとまいまいのこと書いたよ~」と、話してくれる子の姿からも、アーティストと子どもたちがすっかり打ち解けている様子が伺えます。

「ちょっとしたゲームをやろうかな」と、小山さんが取り出したのは、タオルを丸めた1つのボール。ボールを投げる時に「なげた!」、受け取る時に「とった!」と声に出しながら、みんなで自由にボールを投げ合うワークが始まりました。はじめは「やらなーい」と輪に加わらなかった子も、自分の元にボールが飛んでくると、思わず投げ返したりと、少しずつ輪に加わっていきます。

「ずっと歩き続けながらやってみよう」「3秒以内にボールは投げよう」など、1つずつルールを加えていくと、子どもたちもお互いに目を合わせ、声をかけあいながら、ボールのやりとりも活発になっていきました。 その傍らで、みんなの様子を絵で表現してくれる子も…!

 

続いて、2つのグループに分かれ、小山さんから出されたお題の順に並ぶワークに挑戦。「背の順」「誕生日順」「靴のサイズ順」など、次々出されるお題に対して、大急ぎでやりとりしながら、楽しそうに取り組んでいました。まだ日本語があまり得意でない子には、自然と英語でフォローを入れてくれる子などもおり、この場でしか交流がない子たち同士でも、関係性が生まれている様子が印象的でした。

 

次は、横一列に並び、色んな歩き方をしてみよう!はじめは、ちょっとふざけながら走り抜けるだけだった子どもたちも、小山さんたちの声掛けや、実際に動きを見たりすることによって、少しずつ工夫する姿が見られました。背中でズリズリ進んでみたり、ロボットみたいに歩いたり、ポーズをとりながら動いてみたり…。のびのびと思い思いの動きをする子どもたちの様子は、もうそれだけで、舞台のワンシーンのようでした。

最後は、みんなお楽しみのリクエスト曲タイム!子どもたち一人ひとり、小山さんのスマートフォンから好きな曲を選んで、自由に踊ったり、何をしてもいい時間です。自分の国の曲を流して楽しそうに踊る子や、日本の童謡「うみ」を流しながら小山さんの背中に乗って気持ちよさそうに泳いでいる子も。流行りの曲でみんなで一緒にはしゃぐ姿もありました。

色んな言語や文化が入り混じる中、たくさん身体を動かしながら、お喋りしながら、みんなで場を共有した、あっという間の60分。「次はいつ~?」と尋ねてくれる子の姿に嬉しさを感じながら、「また来月ね」と約束をし、帰路につく子どもたちを見送りました。

ワークショップ実施にあたり、サポートしてくださった保護者や地域の皆様、そして、ご支援くださった令和6年度(補正予算) 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の皆様に、この場を借りて心よりお礼申し上げます。


主催:特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

助成:令和6年度(補正予算) 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業

協力:まなびすたーり、社会福祉法人 愛の家 愛の家ファミリーホーム、認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

今年度のパフォーマンスキッズ・トーキョー(PKT)幕開けです!!

先日、都内小学校の体育学習発表会におきまして、今年度のパフォーマンスキッズ・トーキョーの幕開けとなる成果発表公演が行われました。
あいにくの雨により一日順延となりましたが、当日は晴天に恵まれ、さわやかな青空の下での発表となりました。

今年度の6年生は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う最初の緊急事態宣言が発令された2020年に小学校に入学した子どもたち。つまり、今回のPKTに参加した5、6年生は、以前のような、全学年が一緒に校庭に集い、大勢の観客の前で実施する運動会を一度も経験したことがないとのことで、先生からは、「今年は全学年での実施に戻すことになったので、会場全体が一体となって盛り上がるような、その中心に自分たちがいるような経験を、子どもたちにさせてあげたい」というご要望をうかがいました。

そんな先生の熱い思いがつまった一曲は、70年代のヒット曲『September』アース・ウィンド&ファイアー。「私、使いたい曲があるんです!」という先生の選曲とアーティストの中村蓉さん(振付家・ダンサー)が打合せの席に持ってきてくださった曲が、はからずも一致したことですっかり意気投合!!わくわくと期待が膨らむ打合せとなりました。

老若男女、誰もが一度は耳にしたことがある楽しいナンバーで、ノリノリで登場する子どもたち(と、大人たち。笑)

ワークショップの最初のころは、子どもたちよりも、汗だくの大人たちのエネルギーが勝っていたように感じましたが・・・回を重ねるごとに、身体も心もほぐれていき、本番では笑顔がこぼれ、楽しそうなみんなの表情がまぶしかった!!

2曲目は、最新のJポップのナンバーです。
5年生と6年生に分かれて、グループ創作を行いました。

「だんだん食べる 赤と青の星々 未来から過去
順々に食べる 何十回も嚙み潰し 溶けたら飲もう・・・」

とても詩的な歌詞からイメージをふくらませ、子どもたち自身で振付を考えました。

「面白がりながら、少しふざけながら、生真面目に、素直に・・・」それぞれのスタンスで歌詞の言葉と向き合い、創作に取り組む子どもたち。歌詞の捉え方も自由で、発想も表現も自由。
そんな時間をみんなで過ごす子どもたちは、とても楽しそうでした。

最後は・・・古いアメリカ映画から「雨にぬれても」。
傘を持って、可愛らしいナンバーに仕上がりました!!

演目のタイトルは「今から、人生を動かす!!!」

「今から、○○を動かす!!!」の○○に入る言葉を子どもたちから募集して決めました。
ちなみに採用されたのは、特別支援学級の5、6年生が考えてくれたもの。
まもなく小学校を卒業し、次のステージに踏み出していく高学年の皆さんにぴったりの、いいタイトルになりました。

普段は指導するお立場で、本番は見ているのみという先生方も、全曲子どもたちと一緒に踊った体育学習発表会。「(雨による)順延のおかげでもう一日練習できます!」と大真面目におっしゃった先生の姿が忘れられません。
そんな先生たちと一緒に踊る子どもたちの楽しそうな笑顔に、見ている観客の皆さんもにっこり。

と、みんなで楽しく駆け抜けた、今回のパフォーマンスキッズ・トーキョー。
これからも、各地の学校やホールで、ぞくぞくと開幕してまいります。
どんな子どもたち、先生たちとの出会いが待っているか、楽しみでなりません!!
乞うご期待です。

積水ハウス株式会社/積水ハウスマッチングプログラムからのご支援を受け、2024年6月~2025年2月までの計10回、東京都清瀬市にある2つの児童養護施設で暮らす子どもたちが交流するワークショップを実施しました。
実施に際しては、積水ハウス株式会社の従業員様発案のアイデアと、当団体の活動とを融合して行いました。
アーティストの棚川寛子さん(舞台音楽家)、アシスタントの井上貴子さん(俳優)、加藤幸夫さん(俳優)、黒木佳奈(俳優)さん、佐藤円さん(俳優)と子どもたちで取り組んだワークショップの様子を紹介します。

「自分たちの夢の街をつくろう」をテーマに、棚川寛子さんと子どもたちのワークショップがスタートしました。ワークショップの初日、アーティストから子どもたちに、どんな作品をつくってみたいか問いかけると、海や川、建物といった街並みがひとつずつ登場して、最後に街が完成する、といったアイデアを子どもたちが提案してくれました。このアイデアをもとに、「自分たちの夢の街」には、どんな建物があって、周りにはどんな自然が広がっているのか考えていきました。

2日目からは、「夢の街」づくりがスタート。まずは、「自分が住んでみたい理想の家」を考えてみました。工作用紙1枚を自分の土地として、家の大きさや庭の広さなどをイメージしてから、色画用紙などを使って、「理想の家」をつくっていきました。工作用紙を切ったり折り曲げたりして家の外壁や屋根をつくったり、外壁をくり抜いてカラーセロファンを貼り付けてステンドグラスのような窓をつくったり…

外観のみならず、家の中にもこだわって、ベッドや机をつくって置いたり、庭に大きな木や池をつくってみたり… 試行錯誤を繰り返しながら、自分が住んでみたい「理想の家」ができ上っていきました。

「理想の家」ができたら、今度は、みんなの住む街づくり。グループに分かれて、自分たちの街にどんな建物があって、周りにはどんな自然が広がっているかを考えながら、街をつくっていきました。海づくりのグループは、海の上にペンギンの乗った氷山を浮かべたり、釣り竿をつくって海釣りをして遊んだりしました。動物園のグループは、ゾウやウサギ、キリンやカエルといった生き物たちを、折り紙でひとつひとつ丁寧につくっていきました。鉄道づくりのグループは、線路が川にまたがる様子をみて、「橋をつくらなきゃ!」と急遽鉄橋を作製。子どもたちのアイデアと共に、街並みが広がっていきました。

また、今回はワークショップの期間中に、子どもたちがプロのお芝居を鑑賞する機会をつくることを考えました。アーティストの棚川寛子さんが、劇場へ来ることが難しい人たちにも舞台の感動や俳優のエネルギーを伝えたいという思いではじめた「テーブルシアター」を施設にお招きして、ノルウェーの昔話『三びきのやぎのがらがらどん』(演出:棚川寛子、脚本:森山真利恵、美術:深沢襟、出演:三島景太、森山冬子、吉見亮)を上演。いつもワークショップをしている会場で、ワークショップメンバー以外の施設の子どもたちも一緒に、プロの演技を間近で観劇しました。上演後は、俳優たちとおしゃべりをしたり、舞台装置に触れてみたり、作品の中で使われた楽器を演奏してみたりして楽しみました。

最終日は、施設の職員や他の子どもたちなどに、「自分たちの夢の街」を紹介する発表会です。発表のタイトルは『My Dream Town, My Dream House!!』 最初に、ワークショップメンバーがグループ毎につくった海や川、動物園や鉄道が登場。レポーター役の子どもたちが、小型カメラで撮影した映像をスクリーンに投影しながら、司会者役のアーティストの質問に答えながら、それぞれのこだわりポイントを紹介しました。

続けて、子どもたちが一人ずつ順番に「自分の理想の家」を持って登場。司会者役をアーティストから子どもにバトンタッチして、インタビュー形式で、自分の家のお気に入りポイントを紹介していきました。インタビューの内容は、司会者役の子ども自身が考えてくれました。(アドリブ満載でした)。

最後にアーティストや施設の職員・ボランティアスタッフなど大人たちがつくった建物もみんなで並べて「自分たちの夢の街」が完成。みんなで楽器演奏して発表会は終了しました。終演後は、観客に街の中をお散歩してもらいながら、改めて、子どもたちがつくり上げた街並みを鑑賞してもらいました。

発表会が終わったあと、自分のつくった家のみならず、アーティストや職員の方々がつくった家なども、両手いっぱいに抱えて、大切に部屋に持って帰る子どもたちの姿がありました。

発表後の振り返りでは、施設の職員の方々から、普段の生活の中では物静かな子どもが、ワークショップでは嬉々として積極的に活動している姿があることや、家づくりなどに際して、子どもたちが自分のこだわりを全開にして、伸び伸びと制作活動に取り組めたことへの感謝が述べられました。また、ワークショップでは、家づくり以外にも、ハンカチ落としをして思いっきり遊んだり、ジェスチャーゲームでお互いの表現を楽しみ合ったりしながら、2つの児童養護施設の子どもたちの関係性を育んできましたが、回を重ねるにつれて、違う施設の子ども同士で話しあったり、お互いに協力しながら制作に取り組む姿がみられたことが嬉しかった、との声も聞かれました。今回、家づくりをしながら、アーティストと子どもたち、そして、子どもたち同士が、好きな遊びや音楽のことなど、とりとめもないおしゃべりをたくさんしました。何気ない会話でしたが、そうした時間をみんなで一緒に過ごせたことも、今回のワークショップの宝物になったように思います。

最後になりましたが、子どもたちの意見や想いを真摯に受け止めながらワークショップを進めてくださったアーティストの棚川さんとアシスタントの皆様、子どもたちに寄り添いながらワークショップを支えてくださった施設の職員とボランティアスタッフの皆様、そして、ワークショップをご支援いただきました積水ハウス株式会社と積水ハウスグループの従業員の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました!!


【助成】積水ハウス株式会社

2024年度「コープみらい×中央共同募金会『子ども・子育て支援助成~生活に困難がある子どもやその家族への支援活動を応援!〜』の助成を受けて実施した、2つめの児童自立支援施設でのワークショップをレポートします。(1施設目のレポートはこちら

25名程度の中高生たちを対象に、パーカッショニストの関根真理さんとURIさん、ギタリストの小沢あきさんと、3日間のワークショップを実施しました。

施設の中で普段から音楽の授業はあるけれど、合唱が中心で楽器にふれる機会が少ないこと、子どもたちは音楽が好きな子もいて、ギターやピアノに興味がある子がいること、加えて施設の中で行われる演芸会で音楽的な出し物をする子たちもいるということで、たくさんの楽器にふれて、音楽を楽しむ時間をつくっていくことにしました。

1日目は、アーティストが用意した打楽器のほか、施設のドラムなども借りて、まずは子どもたちに楽器の楽しさを体験してもらう回となりました。2日目は、打楽器の中でもジャンベ、ジュンジュン、カウベルなどのパートに分かれて「クク(KUKU)」という西アフリカのリズムを元にしたパーカッションアンサンブルに挑戦。後半は各々が取り組みたい楽器(ギター、ドラム、小物パーカッション)に分かれてリズム演奏や、イメージに合わせた即興演奏などに取り組みました。

3日目は、全員で演奏する「クク」のリズムアンサンブルに、ギター、ドラム、小物パーカッションチームそれぞれの演奏コーナーを加えて、ある島の夜のお祭りのように構成して合奏しました。

合奏の冒頭は、打楽器チームが鳴らす不思議な音からスタート。ジャングルの奥から聞こえてきそうな、動物の鳴き声のような不思議な音が鳴り始め、次第にみんなのククのリズムが重なっていきました。ある子が見つけた楽器は、クイーカと言って筒の中にある棒を湿った布で擦ることで鳴き声のような音が出ました。ククのリズムの間には、アーティストの指揮に合わせてパートごとに演奏を止める、また加わるなど、パートが変化することでリズムの聞こえ方が変わることも楽しみました。

ギターチームのコーナー『ギターの森』では、GとEmのコードを使った演奏を披露してくれました。短い練習時間でしたが、職員の中にもギターが弾ける方がいて、一緒に練習した成果を、他の子どもたちも興味を持って聞いてくれていました。

そしてドラムチームは『ドラムの丘』と題して、アーティストと一緒に、2人ずつドラムの即興演奏を披露。練習の時に、リズムをきちんと演奏しようとすると技術的に難しい部分もあり意気消沈する姿も見られましたが、決まったリズムではなく、自分が演奏したいように鳴らしてみることも取り入れて、一人ひとりが違うリズムを聞かせてくれました。そして最後には、3つのドラムを全員で演奏して小物パーカッションチームへバトンタッチ。

 

再び登場した小物パーカッションチームが『音の魔術師』と題して、それぞれが選んだ好きな楽器を使いながら、カリンバという楽器でマクドナルドのポテトができあがる時のメロディーを奏でたり、ソロで歌を歌ってくれたり、寸劇も織り交ぜて場を盛り上げてくれました。

最後にはまた全員でククのリズムを奏でながらフィナーレ。いつの間にか50分間という超大作の合奏ができあがりました。3日間という短い時間でしたが、楽器やリズムとの出会いを通して、相手の音を聞きながらリズムを合わせたり、他チームの演奏に耳を傾けたりしながら、全員の音楽が重なり合う心地よさを感じる時間になりました。

実施後の子どもたちや職員の方のアンケートの一部をご紹介します。


●子どもたちより

・やっぱりドラムは想像以上に難しかったけれど、それを乗り越えられたからこそ、さらに楽しかったと思います。

・まとめると、すごく楽しかった。みんなの音が合わさっていくのがゾワゾワした。

・寮生や先生方と一緒に音でコミュニケーションを取ったり、リズムに乗って演奏などを行ったことが楽しかったです。

・印象的なことは、どの回もとても賑やかだったことです。1~3回目の中でも、やっぱり最後は全体が一丸となって演奏や出し物をした3回目が一番思い出に残っています!

・ミスしても失敗してもいいということを、先生方から学べて、自由にやる時、何かを表現する時は、正解はないんだということを知る機会になったと思います。

 

●職員の方々より

・楽器に触れる貴重な経験だけではなく、全体で一つの作品をつくり上げていく過程と、その出来映えが本当に素晴らしかったです。

・音楽や楽器への興味、関心が高まったと思います。音符や楽譜が読めなくても演奏する経験ができたことは、とても良いものとなったと思います。

・今後もいろいろな芸術にふれる機会をつくりたいと思います。言葉や行動だけではない、いろいろな自己表現方法を学んで欲しいと思っています。とても良い機会をいただきました。

・歌うことや人前で発表することが苦手な子どもが、前に出て元気よく参加していたのが印象的でした。

・全体的に子どもたちは飲み込みが早く、大人では覚えるのに困難そうにみえるリズムにも上手に合わせていたのが印象的だった。


文化芸術にもいろいろな分野があるので、各施設の要望や子どもたちが興味、関心があることに応じたワークショップをつくっていくことが大切だなと改めて思いました。また、音楽に限らず、これからも継続して施設に関わることで、表現にもいろいろな方法があることを体験してもらえると良いな、とも思っています。

最後になりましたが、様々な場にいる子どもたちに、表現活動の場を届けることに賛同してくださり、ご支援いただいた寄付者の皆様、そしてコープみらいと中央共同募金会の皆様に心より感謝申し上げます。

石坂亥士さん(神楽太鼓演奏家・踊るパーカッショニスト)と少年院にいる14~16歳くらいの男の子たち20人とのワークショップを行いました。
社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」の助成を受けて実施した、音楽ワークショップの様子をご紹介します。

珍しい民族楽器がズラリと並ぶ体育館で、ワークショップはスタート。何が始まるのかと、子どもたちのソワソワした空気の中、トーキングドラム(西アフリカの太鼓)を鳴らしながら石坂さんが登場しました。

「この太鼓は、どこの国の楽器だと思う?」という問いかけに「ジャマイカ」「ガーナ」「アフリカ」など、考えながら手を挙げて答えてくれる子どもたち。音を鳴らすと、その迫力に思わず、お~!と驚く姿もありました。
「そんなにかたくならなくていいよ」と、まずは石坂さんの叩くリズムにのせて、ジャンプをしたり自由にステップを踏んだりして、身体をほぐしていきます。

「自由に楽器をさわっていいよ」という石坂さんの声掛けに、それぞれ気になる楽器を手に取る子どもたち。小物楽器を一つ一つさわってみる子もいれば、一つの太鼓をずっと奏でている子、音階を見つけてカエルのうたを演奏している子もいました。

子どもたちを見渡しながら、ジェンベ(西アフリカの太鼓)を奏でている石坂さんのもとに、1人、また1人と、同じくジェンベを持った子どもたちが集い、並んでリズムを合わせる姿も。そこにバラフォン(西アフリカの木琴)を持った子も加わり、言葉を交わさずとも、音のコミュニケーションが生まれていました。

「グループで即興演奏をしてみよう。始まりと終わりは、自分たちで決めるんだよ。」という石坂さんの提案に合わせて、5人ずつのグループに分かれ、それぞれ演奏したい楽器を持ち寄った子どもたち。話し合いなどないまま、いきなり本番の即興演奏に、お互いに自分のタイミングで、みんな思い切って音を鳴らしてくれました。
「引き際が大事。」「音が自分の中に入っている感じだから、もっと外に感覚を広げるといいよ。」といった石坂さんの言葉とともに、探り探りだった子どもたちの演奏も、堂々としたものに変化していきます。

最後はまた、みんなで自由に楽器を鳴らそう!はじめよりも、身体の動きが開放的になっている子も増え、楽器を鳴らしながら石坂さんと向き合って踊り始める子や、色んな音の鳴らし方を試してみる子も。

そんな姿につられるように、子ども同士でも向き合ってステップを踏んでみたり、何人かで集まってセッションを楽しむ様子もあちらこちらに見られました。

子どもたちの自由で開放的なリズムが鳴り響いていた、あっという間の90分。
ワークショップ終了後、子どもたちが書いてくれた感想文をいくつか紹介します。


・触ったことも見たこともないような楽器ばかりでとてもワクワクしました。実際に使ってみると、物によって様々な音が出ておもしろかったですし、楽しかったです。少年院を出院して社会に戻っても、辛い時は音楽を聴こうと思いました。

・多分今後少年院ではあじわえない楽しさでしたし、あんなに大人の人と楽しく遊ぶ事が今までなかったので、とても楽しかったです。

・今までにない楽しみや嬉しさが楽器を通して表現できたり、自分の中にたまっているものを全て出せるような感じで、少年院でやれて良かったなと思いました。

・楽器を通して心に余裕が出来た気がします。今まであまり興味のなかったものも深堀りすると案外好きになる事を知り、出院後も色々な物に目を向けてみようと思うようになりました。


本当に自由な空間の中、様々な表現をみせてくれた子どもたち。
参加してくださった先生からは、子どもたちの意外な一面が見られたとのご感想もいただきました。
たった数時間の出来事ですが、音楽を通して感じた楽しさや、ワクワクしながら世界が広がっていく感覚など、子どもたちの中に残り続けてくれたらいいなと思います。

最後になりますが、子どもたちの様々な表現を引き出してくださった石坂さん、そして、子どもたちが安全に楽しく参加できるようご協力くださった少年院の先生方に心より感謝申し上げます。

【助成】社会福祉法人中央共同募金会「赤い羽根福祉基金」

都内公立小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたち21人と取り組んだワークショップ。アーティストの北川結さん(ダンサー・振付家・イラストレーター)、アシスタントの内海正考さん(ダンサー・三味線弾き)と出会い、みんなで一緒になって踊ること、一人で踊ること、どちらものびのび楽しんだ2日間になりました。

事前の打合せでは、先生から「いろいろな身体の動かし方を経験して、子どもたちがとにかく楽しいと思えるような時間にしたい」また、「音楽がある中で身体を動かしたい」というリクエストがあり、耳なじみのあるJ-POPに加え、内海さんの弾く三味線の生演奏で踊ってみることを検討して、当日を迎えました。

出会いの瞬間はいつだってドキドキ。少し緊張している様子もありながら、北川さん・内海さんの「おはようございまーす!」という大きな声に、子どもたちも負けていません。今度はうってかわって、蚊が鳴くくらいの北川さんの「おはようございます」に、子どもたちにも自然と笑顔が。

最初は、アーティストの動き真似からスタート。みんなで大きな円をつくり、中心に居る北川さんをじっくりみてみると、一見動いていないようでゆっくりと手があがっています。ぽつぽつと気づく子が出てきて、最後はみんなで大きく手を天井に。次第にダイナミックな動きになっていき、途中で音楽がかかるとリズムに乗ってノリノリで真似する子どもたちの姿がありました。動きの見本となるリーダーもアーティストから先生、そして子どもたちにバトンタッチされ、スキップ・ジャンプの激しい動き、なめらかな動き、一人ひとりから発信される個性的な動きをみんなで楽しみました。

1日目の後半は、内海さんの弾く三味線の即興演奏にあわせて身体を動かしました。しっとりした曲調の中、ゆっくり歩いてみたり、立っているところからスローモーションで寝そべって目をつぶってみたり。中には、ものすごく時間をかけて身体を倒すことにハマる子もいましたが、みんなが自分のペースを貫き、全員が気もちよくやりきれるように“待つ”雰囲気が素敵でした。今度は陽気な曲調にあわせて自由に歩き回り、すれ違った友だちと手と手でタッチ、足と足でタッチ。だんだんと自分たちで動きを自由に発見していく子どもたち。すると、何かを食べる動きをしながら歩いている子が!それを見つけた北川さんが「みんなも好きなものを食べながら動いてみよう!」と声をかけると、そば?バナナ?お寿司?いろいろなものをイメージして楽しそうに食べ歩く姿が見られました。さらには、出会った人と食べ物を交換しあうというアイデアも生まれ、和やかに交流する子どもたち。落ちているものを拾って「おいしー!」というユニークな姿も。

最後に各々の考える「めちゃめちゃかっこいいポーズ」を決めて、ワークショップ終了。そして、感想を伝え合う時間へ。この2日間特徴的だったのが、こまめに感想タイムがあったこと。北川さんからの「今の動きはどうだった?」「三味線の音で動いてみたのはどうだった?」の問いかけに、それぞれが思ったことをたくさん共有してくれました。印象的だったのは、「ダンスほとんどおどってないじゃん!」という感想。確かに、テレビでみるダンスや、運動会で振りを覚えて踊るダンスとは少し違ったかもしれません。北川さんは嬉しそうに「ゆうちゃん(北川さんの呼称)には、一人ひとりの動きがすごいダンスだったよ」と伝えてくれました。

・・・

2日目は、子どもたちも最初からエンジン全開!ウォーミングアップの後は、2人組のワークに挑戦しました。言葉を使わずに、相手と呼応するように動き、最後は何かしらのポーズで止まります。相手と少し離れたところから始まり、「前に進み出て、相手と動いて、止まる」とルールはシンプルですが、相手より先に出るのか・後にでるのか、相手に協調するように動くか・まったく違った動きをしてみるか、どこでどのように止まるかなど、選択肢は無数にあります。みんなに温かく見守られながら1組ずつ挑戦。相手の出方を探るように目と目をあわせて丁寧に歩み出たり、相手のポーズとシンメトリになるようにポーズしてみたり、どう止まろうかじっくり考えて最後は相手が出した足にタッチするようにポーズしたり、一方がポーズした周りをぐるぐる軽やかに動き回り最後は相手の前でストンと正座で着地したり、毎回、二人の高い集中力と予想を超える素敵な動きに大きな拍手がおくられました。北川さん・内海さんからも、一人ひとりの素敵だったところについてコメントがおくられ、子どもたちも先生たちもみんな嬉しそう。

温かい空気で満ちた中、最後は一人ずつ三味線の音と踊ることに挑戦。みんなで大きな円になるように座り、その中心で心ゆくまで踊ります。「内海くんがあわせてくれるの?」という質問に、「内海くんもみんなにあわせるし、みんなも音をきいてあわせることもできるかも。さっき二人(組のワーク)で止まったみたいに、今度は内海くんと一緒に終わりを見つけてね」と北川さん。

何しよう?と戸惑う様子もなく、元気な曲調と一緒にくるくる回る姿、手を羽ばたかせるような動き、ジャンプするようなステップ、日本舞踊のようなしなやかな動き、だだただ佇むようなポーズと三味線の儚げな音・・・一人ひとりが三味線との素晴らしいセッションを見せてくれました。内海さんと目をあわせて最後のポーズを決める子も。三味線の音に子どもたちがあわせたとも、踊りに内海さんがあわせたとも言い切れない、ゆるやかな音と身体のコミュニケーションを見ているようでした。もちろん、毎回一人ひとりに自然と大きな拍手が。

一番最後の感想タイムでは、にっこり笑顔で躍動感たっぷりに手足を動かし、動きでこのワークショップの感想を表現してくれる子も。ポジティブなエネルギーが伝わってきました。

ワークショップ後、先生との振返りでは、「言葉で表現することが苦手な子もいるが、身体で自分を表せることを経験できた」「いつもだったら時間の制約などで大人が“終わり”としてしまうような場面でも、子どもたちの選択を“待つ”ことができたのがよかった」といった感想をいただきました。

アーティスト・子どもたち・先生方みんなが一緒になって、気もちよく身体を動かしたり、ちょっぴり挑戦したり、お互いの表現に驚いたり、拍手をおくったり、時には応援したり。ダンスを通して、自然と自分も相手も尊重できるような温かい雰囲気に包まれた素敵な2日間でした。


このワークショップは、「ブリヂストン BSmile募金」より助成いただき実施しました。

 

2024度、「コープみらい×中央共同募金会『子ども・子育て支援助成~生活に困難がある子どもやその家族への支援活動を応援!〜』」の助成を受けて実施した、児童自立支援施設でのワークショップをレポートします。

振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんと、アシスタントとして安次嶺菜緒さん、山田暁さんの2名のダンサーと共に、2日間のワークショップを実施しました。子どもたちは、15人程度の3グループに分かれて、各グループ50分間のワークショップを2日間体験しました。

初日、まず初めは、アーティストが踊ってみせる自己紹介からワークショップがスタートしました。3人のダンスに真剣な眼差しを送る子どもたち。3人が子どもたちの列に入って近づくと、ちょっと逃げたり笑ったり、子どもたちの緊張感も自然とほぐれていきました。その後に、ストレッチやジャンプでウォーミングアップをしてワークに入っていきました。

最初のワークは、二人一組になって、相手の動きに付いていくワーク。リーダーが差し出した2本の指に目線を合わせて、指と目線をつなげたままリーダーの動きに付いていきます。丁寧でダイナミックなアシスタントの見本を見てルールが分かったら早速やってみました。リーダーは手を動かすだけでも、付いていく相手は全身を使わなければならず、転がったり身体をひねったり、いつの間にか自分一人ではやらない動きが生まれていました。

次に、少しルールを発展させて、指と目線ではなく、好きな身体の部位を組み合わせてやってみました。例えば肘に耳で付いていったり、拳に肩で付いていったり、身体の部位を変えてみることで、動きの面白さも広がっていきました。

1日目の最後は、ユキオさんとの『手と手のダンス』。二人組で行ったワークと同じ要領で、ユキオさんの手のひらと子どもたちの手のひらでつながって一対一で踊るダンスです。手のひらの間にあたたかさやエネルギーが感じられて、見ている方も幸せな気持ちになるダンスでした。

約1ヶ月後に訪れた2日目のワークショップ。子どもたちがユキオさんたちのことを覚えていて、施設に着いた時から「あの時の人だ」と出迎えてくれました。

2日目のワークショップでは、まずは1日目のワークを思い出してやってみました。1日目よりも動きが豊かになって、大胆な動きが見られたような気がします。

身体がほぐれたところで、新聞を使ったワークに新たに取り組みました。一人が新聞を丸めたり固めたり伸ばしたりしながらいろいろな形をつくり、その形を身体で表してみる、というものです。慣れてきたら、新聞紙を動かし続けて、ポーズや形ではなく、新聞紙の動きを連続した身体の動きで表現していきました。

新聞でどんな形をつくるか、完成形をイメージしながらつくる子もいれば、偶発的に生まれる新聞の一瞬一瞬の動きを身体で受け止めて、どんどん動きに変換していく子もいました。中には、新聞紙の気持ちになったのか、新聞紙が折られた時やグチャグチャにされる度に「イテッ」とか、逆に漂うように動かした時に「フワ〜ッ」という声を出しながら動く子たちもいました。正解はないので、それぞれが想う新聞を表現しているうちに、一人ひとりの身体から、いろいろな形や動きが生まれていきました。それと同時に、新聞という一つのイメージをみんなで共有している楽しさも感じられる時間でした。

グループごとの動きを見せ合った後は、最後にユキオさんのリードで、新聞紙の動きから、新聞をなくしてユキオさん自身を新聞だと思ってみんなで一緒に踊り、2日間のワークショップを終えました。

実施後の子どもたちや職員の方のアンケートには、次のような声が寄せられました。


●子どもたちより

・言葉ではなく、身体で自分の気持ちや考えを表すというのがとても楽しかったです。

・エネルギーがそれぞれあることが分かったので、すごく神秘的な気持ちになれました。

・3回目、できるか分かりませんが会えたら、一緒にまた踊りたいです。

・音楽はあるけれど、リズムに合わせるたりすることなく自由に踊れることが印象に残っています。

・音やリズムに合わせるだけではなく、目や手で、感じることで、全身で楽しむことができました。

・一人ひとり“自分らしさ”を身体で表現していて、他の人を見るのも面白いと思いました。

 

●職員の方々より

・ペアになって動く活動では、その子の性格が表れているのを感じ、興味深かった。

・集団生活が苦手な子が、生き生きと参加しているのが印象的でした。

・笑顔で活動をすることで、より身体が動くことが分かったような発言があった。

・帰寮後の会話から、子どもたちがいろいろと刺激を受け、感じた様子が見てとれました。


 

終わった後には、バレーや野球の練習があると言っていた子どもたち。日頃から運動の機会はたくさんあるようですが、スポーツとはまた少し違ったダンスの面白さや心地良さが伝わっていたら良いなと思います。

子どもたちが、芸術、文化活動にふれて様々な表現方法を身に着けることが、生きる力を育むことにつながるという想いに共感してくださり、今回の活動を支えてくださった寄付者の皆様、そしてコープみらいと中央共同募金会の皆様に心より感謝申し上げます。

墨田区立の小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたちと取り組んだ、水越朋さん(振付家・ダンサー)とのワークショップをご紹介します。

「さまざまな想いや想像力を持っていて、秘めたものがある子たちだが、それを表に出す手段をあまり知らないので、いろんな表現する方法を体感してほしい」
そんな想いでワークショップを申し込んでくださった先生。学芸会では『11ぴきのねこ』(作:馬場のぼる)に取り組むことが決まり、みんなの良さを生かした作品づくりに向けて模索しているところでした。

 

アシスタントの内海正考さん(ダンサー)と共に、普段意識したことのない自分の身体について目を向ける、発見とひらめきの2日間となりました。

1日目、少し緊張した表情で体育館にやってきた子どもたち。
まずは水越さんと内海さんの動きを真似してみることからスタートです。
タテとヨコに身体をぐーんと伸ばして、ぎゅっと縮んでみたり、あらゆる動きを見よう見まねでやってみます。

左右の腕を時計の針のように開き
「これは何時?」「3時!」、「じゃあこれは?」「8時!」
と水越さんの声掛けに、みんな元気に答えていきます。
身体を通したコミュニケーションの中で、頬が緩み、どんどん自由になっていく子どもたち。

「手には何がある?指でどんな形ができる?」という問いかけに、各々がじっくりと自分の手を眺めます。

全員の指を繋げて大きな輪をつくり、グネグネ動かしてイソギンチャクのようにしてみたり、ピースにして星形をつくったり、これもできそう!あれもできそう!と、子どもたちから出たアイデアをみんなでやってみました。

2日目は動物の真似から始まり、水の中の生物、太陽や氷といった物質をイメージして動きました。 「赤の踊り!」と、水越さんからの抽象的な注文にも自然と身体が反応し、青、緑、黄とさまざまな色になっていきます。

トンネルづくりでは、大人が作ったあらゆる形のトンネルを、子どもたちがくぐっていきました。 今度は子どもがトンネル役。先生たちが身体を縮こまらせながらクネクネと芋虫のように通る姿は愉快で、子どもたちからも笑みがこぼれます。

ホワイトボードの前に集合すると、2枚の絵が貼ってありました。
実はこれ、『11ぴきのねこ』に出てくる風景画。

「これからどちらかの絵を選んで踊ってみるね」 絵を見て感じたことを内海さんと水越さんが踊りで見せてくれました。

「どうだった?」
「平和に見えた」「意味わからない」「無人島っぽい」「ヒョウがいる」「次の踊りがみたい」
次々と子どもたちから感想が出てきました。
「意味わからなくてもいいんだよ」「見たいって思うことは大切なこと」と、子どもたちの気持ちに丁寧に向き合う水越さん。

「今度はみんなでやってみよう!」
さっきとは違う2枚の絵を見せ、自分が踊ってみたい絵のグループに分かれました。
まずは観察。絵を回して見方を変えると、見えてくるものが変わってくる不思議さ。

想像力が膨らんだところで、グループで踊りを見せ合いました。
堂々と1人で踊る子やペアになって踊る子、急に人に見られると緊張してしまう子もいましたが、ちいさな動きの中にも美しさを感じる瞬間がたくさんありました。
「恥ずかしくて動きたくないってことは大事。心と身体を一緒にさせているからね。」
水越さんが優しく語りかけます。
お互いに拍手を送り、感想を伝え合う姿は生き生きとしていました。

最後はみんなでフリーダンス。
音楽に合わせて体育館をのびのびと動き回って、2日間のワークショップを終えました。

先生との振り返りでは「普段は自信がなくてみんなの前に出ることが難しい児童が、笑顔で身体表現していたり、話すことが難しい児童が大きな声を出して、声に合わせて動いたりする姿が見られた」という感想をいただきました。

子どもたちの内に秘めているものをどうアウトプットさせるか悩んでいた先生。
「やらないという選択肢をあえて言葉にして認めることで安心感を持ち、より児童の自己肯定感が高まった」と、目を輝やかせながらおっしゃっていました。

さぁ、これからどんな『11ぴきのねこ』が誕生するのでしょうか。
たくさんのアイデアが詰まった、ワクワクする香りが漂ってきますね。


このワークショップは、花王ハートポケット倶楽部の協賛をいただいて実施しました。