都内公立保育園の子どもたちと取り組んだ関根真理さん(パーカッショニスト)とのワークショップをご紹介します。今回5歳児クラスの子どもたちと、60分の音楽ワークショップを行いました。

保育園のホールに子どもたちが入ってくると、たくさんの太鼓を発見!! 大きかったり小さかったり、細長かったり丸っこかったりといろいろな形をしています。子どもたちは興味津々、早く太鼓を触れてみたくて仕方がありません。

するとホールの外から太鼓の音が聴こえてきてきます。関根真理さん(まりちょふ)と西川郷子さん(うっしー)が太鼓を奏でて自己紹介の歌をうたいながら登場してきました!! 突然の登場に子どもたちはびっくりしつつ、太鼓のリズムにあわせて自然が身体を揺れていき、表情もほころんでいきました。

そして、待望の太鼓の演奏にチャレンジ!まりちょふに太鼓の叩き方のコツを伝授してもらった後、声を出しながら力いっぱい太鼓を叩いたり、まりちょふの指揮にあわせて音の強弱やスピードを変えて演奏したり、太鼓を順番に叩きながら音の波をつくってみたりしました。

また、まりちょふの「せーの、ポン!」の掛け声にあわせて、みんなで一緒に太鼓をひとつ叩いて演奏を終えることに挑戦したところ、見事一回で大成功。子どもたちはこの掛け声が気に入って、今度は子どもたちから「せーの、ポン!」の声掛けがスタート。掛け声は子どもたちの大合唱になって、大盛り上がりとなりました。

太鼓の演奏に慣れてきたところで、今度はリズムにあわせて太鼓を叩いてみます。子どもたちから「好きな食べ物」を聞いて、「バ・ナ・ナ」「う~・どん」のように声に出しながら言葉のリズムにあわせて太鼓を叩くと、みんなの音が重なり合って自然とひとつになっていきました。

そして、まりちょふを先頭にみんなでリズムの大行進がスタート!! 子どもたちは思い思いのリズムを奏でながら、カーニバルの如くホールの中をみんなで練り歩きました。すると子どもたちの演奏にあわせて先生方がダンスを披露してくださり、カーニバルに花を添えてくれました。

大盛り上がりの大行進のあとは、絵本の読み聞かせの時間のはじまりはじまり。お話にあわせて、風の音や主人公が穴から転げ落ちる様子など、絵本の中から聞こえてくる音を、まりちょふがいろいろな楽器を使って奏でてくれました。

そして、最後は子どもたちの自由時間。まりちょふが持ってきてくれたたくさんの楽器に触れながら、いろいろな音を思い思いに楽しみました。

気が付けば60分間のワークショップも終了時間に。「楽しかった!」「また明日も遊びに来てね!!」 子どもたちは元気いっぱいに、まりちょふとうっしーにたくさんの感想を伝えてくれました。

朝早くから楽器の搬入出や準備にご協力くださり、子どもたちと一緒になって楽器を奏でてワークショップに参加してくださった先生方、本当にありがとうございました!! この場を借りて改めてお礼申し上げます。

さわやかな五月晴れの5月27日(土)、都内小学校の運動会にて今年度のパフォーマンスキッズ・トーキョー、最初の成果発表が行われました。


白い時計台が印象的な素敵な小学校に、ダンサーで振付家の鈴木春香さんと、アシスタントの遠井公輝さん(ダンサー)、石川朝日さん(俳優)と計9日間通い、59名の子供たちと、担任の先生たちと一緒にダンスパフォーマンスをつくりました。

小学校生活最初の一年間で大きく成長し、2年生になった子供たち。
その一回りたくましくなった姿を、運動会でのダンス発表で披露したいという先生方の思いを受けて、今回のワークショップはスタート。「ちゃんとお話が聴けるかな」「ダンスの振りが覚えられるかな」「友達と相談してダンスを考えることができるかな」と、最初は少し心配そうにされていた先生たちでしたが・・・・・

心配ご無用!!

初日から、鈴木春香さんのリードで思いっきり身体を動かし、
5人1組のグループワークでは、「身体全体を使った、オリジナルのグー・チョキ・パー」を相談して考えることが出来ました。

2日目には、ダンスの振付を覚えて踊ったり、フォーメーションを覚えて全体で動いたり。

校庭という広い空間で、全体のフォーメーションを把握した上で自分の立ち位置をつかんで動くのは、大人でもなかなか難しいことです。
まして、身体の小さい2年生のみんなにとっては、大変なチャレンジだったことでしょう。

そして衣装も自分たちで!!!


先生が切ってくれた色々な色のスズランテープを一本一本ゴムに縛って作りました。
カラフルな「なまはげ」みたいな衣装が、不思議な生き物たちをイメージさせてくれて、とっても可愛かった!!!

大好きな担任の先生たちの動きの真似をするのがとっても嬉しそうで楽しそうな子供たち!!!!!

人と関わる喜び、身体を動かす喜び、表現する喜び、チャレンジする喜び、
沢山の喜びではち切れそうな笑顔とカラダが本当に素敵な子供たちとの9日間でした!!!!

墨田区立の小学校・特別支援学級、1~6年生の子どもたち20人と取り組んだ、井田亜彩実さん(振付家・ダンサー)とのワークショップをご紹介します。アシスタントは荒俣夏実さん(ダンサー)で、2日間の実施でした。

この学級の先生方は、これまでの子どもたちの経験では振付を覚えるなど与えられた動きをすることが多かったので、今回は子どもたちが自分で考えて、自分のオリジナルのダンスを見つけたり、自分の良さに気づいたりして欲しい、という想いを持ってワークショップを申し込んでくださいました。

そして、事前下見の授業見学では、宿泊学習に向けて取り組んでいたダンスを見せてもらったり、国語で数え歌を歌う姿や、集中してカラフルなスウェーデン刺繍に取り組む姿を見せてもらい、身体を動かしたり楽しいことが好きそうな子どもたちの雰囲気に、ワークショップでもいろんなことに挑戦できそう、と感じて臨んだ2日間でした。

1日目は、アーティストの動きを真似したり、言葉のイメージから動きを引き出したり、いろんな動きを体験する回となりました。

最初はみんなで円になってウォーミングアップからスタート。井田さんのテンポの良い明るい声かけに、みんなあっという間に心も身体もほぐれていくようでした。そして、体育館に元からあるラインの上を、いろいろな歩き方で歩くワークや、体育館をジャンルグルに見立てて、ライオンやワニ、ワシなどの動物になって探検するワーク、「寒い」「暑い」など言葉のイメージから動きを考えるワークにも取り組みました。

後半は、『忍者』をテーマに動きを考えてみました。忍者がどんな動きをするのか、子どもたちにアイデアを出してもらい、それを実際にみんなでやってみると、「隠れる」の時にはㇲっと井田さんの後ろに隠れる子がいたり、「寝る」の時には忍者だから寝転ばずに座ったまま寝る子がいたり、一人ひとりがいろんな表現を見せてくれました。最後には、井田さんが考えてくれた振付を、子どもたちにも馴染みのある曲で元気に踊って1日目を終えました。

2日目には、1日目に子どもたちがいろんなアイデアを持っていることが分かったので、動きをつくることを中心に取り組みました。最初は、1日目と同じようにみんなで円になって、ストレッチや、二人組で身体の一部をタッチして挨拶など、楽しみながら身体をほぐしていきました。

一人がつくったポーズをもう一人がくぐるワークでは、ポーズもくぐり方も人それぞれで、面白い動きがたくさん生まれました。そして、1日目より少し細かな動きを多くして難しくした振付のダンスで全身を動かした後、後半には子どもたちに動きをつくってもらうことに挑戦しました。

2つのグループに分かれて、それぞれ『お正月』と『運動会』をテーマに動きを考えました。『お正月』チームは、「お年玉・お餅つき・だるま」など、『運動会』チームは「選手宣誓・リレー・玉入れ」などのアイデアが出てきました。そこから、一つひとつ身体で表現するとどうなるかを考えながら動いてみて、最後にはお互いのつくった動きを見せ合いました。どちらのチームもたくさんのアイデアが詰まった大作になり、お互いに拍手を送り合って2日間のワークショップを終えました。

ワークショップ後の先生との振返りでは、「自分の中にあるものを表現する今までにない貴重な機会だった」「普段は身体を動かすことに抵抗を感じる子も楽しく取り組んでいた」といった感想を伺いました。先生方もワークショップの間ずっと一緒に身体を動かして参加してくださり、普段の授業でも取り入れていきたいと仰っていたので、これからも子どもたちが身体を使って表現することを楽しみ、この学級でいろんなダンスが生まれていくのだろうなあ、と思える、とても楽しい2日間になりました。


このワークショップは、花王ハートポケット倶楽部/花王株式会社の協賛をいただいて実施しました。

今回は、都内公立小学校の特別支援学級、1~6年生の子どもたち35人と取り組んだ、関根真理さん(パーカッショニスト)とのワークショップをご紹介します。

1限目からのワークショップ。教室に次々と運び込まれる見たことのない楽器の数々に、登校した子どもたちは(先生方も)興味津々!早く触りたくてたまらない様子で、朝の支度をしていました。

教室に子どもたちが集まると、廊下から楽しいリズムが聴こえてきて…太鼓を演奏しながら、まりちょふ(関根真理さん)と、うっしー(西川郷子さん)、うりちゃん(URIさん)の登場です!目の前で繰り広げられるパフォーマンスに、思わず身体が動いてしまう子や声をかけてくれる子、びっくりして固まってしまう子など、色々な反応をしてくれました。

自己紹介と楽器紹介をした後、子どもたちも全員、太鼓の演奏に挑戦!思いっきり叩いてみたり、波のように順番に叩いてみたり、関根さんの手の動きに合わせて強弱を変えてみたり…。

太鼓の演奏に慣れてきたら、今度はリズムに合わせて叩くことにチャレンジ。子どもたちから出てきた「好きなもの」の言葉を使って、関根さんがリズムを作ります。

「京浜東北線・かっこいいな♪」「ラーメン・ラーメン・食べたいな♪」「麻婆豆腐・麻婆豆腐・辛くて美味しいよ♪」などなど…子どもたちも積極的に手をあげて、リズムづくりを楽しんでくれました。リズムに合わせて叩くと、身体も勝手に踊り出し、教室の中はお祭りのような賑わいでした。

最後は体育館に移動して、学習発表会に向けた音楽づくりです。絵本「はらぺこあおむし」の音楽劇を発表する予定の子どもたちは、「星空チーム」と「蝶チーム」に分かれて、それぞれ「星空」や「蝶」をイメージする楽器を探します。

真っ先にお気に入りの楽器を見つけて鳴らしている子、一つ一つの音を確かめながらゆっくりと吟味する子、アーティストや先生に相談しながら考える子など、それぞれのペースで「イメージに合う音」を探していました。

「なんでこの楽器を選んだの?」と尋ねると、「始まりの音だと思ったから!」「夜の風景の音に感じた」など、それぞれがしっかり考え、感じながら楽器を選んでいる様子が伺えました。なかには、大きな鈴を両手に持って、蝶のように羽ばたきながら演奏したり、夜の眠たい様子を身体で表現しながら演奏するなど、情景を演出するための様々な工夫も…!最後は、それぞれのチームが演奏を発表し、学習発表会に向けての気持ちを高めたワークショップでした。

あっという間の3時間。様々な楽器にふれ、力強い音となって響く子どもたちのエネルギーを、全身で感じられたワークショップとなりました。朝早くから、楽器の搬入・搬出・準備にご協力くださった先生方、本当にありがとうございました!この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

今年度のパフォーマンスキッズ・トーキョーの幕開けは『カラフル☆ファンファーレ』

振付家・ダンサーの田畑真希さんと都内小学校の特別支援学級に8日間通い、1年生から6年生までの31名の子どもたちと運動会での発表を目指して、ダンスパフォーマンスの創作を行いました。

ワークショップの初日から子どもたちは圧倒的に元気で自由!
ワークで使おうと田畑さんが持ち込んだカラフルな風船を投げ合ったり、手ではじいて遊んだり、教室内を走り回ったり・・・。経験豊富な田畑さんも「これは大変だぞ・・・」と目眩がするような思いだったそうです(笑)
田畑さんはもちろん、先生方も私(コーディネーター)も運動会で発表することを目標にしているのですから、それはそうなのです。でも考えてみればそれ自体が大人の思惑。子どもたちにとってみれば、今この瞬間に目を奪われるもの、やりたいことがあるのは当たり前です。

そこで田畑さん、2回目から作戦を変更!
出来る限り少人数のグループにわけてワークショップを実施し、膝を突き合わせて話し、様々なワークを彼らにぶつけてみるなかで、子どもたち一人ひとりの興味や彼らがイキイキと動く瞬間を、辛抱強く発見していって下さいました。
そうやって時間をかけて、みんなで創ったパフォーマンスのタイトルは『カラフル☆ファンファーレ』。

運動会当日は、前日の雨が嘘のような五月晴れ!

一列に並んで、パフォーマンス開始の合図のファンファーレを待つ子どもたち(大人たちも)の勇姿。

初めて学級の全員がそろってポーズをとる姿に、感動しました!!(涙)

グループダンスのトップをがざるのは、女の子チームのパフォーマンス。

全部自分たちで考え、相談して振りをつくり、「自主練したいです」と先生にお願いして時間をつくり、「それぞれの色の布を持って踊りたいです」とやっぱり先生にお願いして小道具をつくり・・・・・

「私たちの輪の中で、踊ってください」とお願いされた田畑さんは、「このタイミングで出てきて、ここでいなくなってください」と、しっかり演出されていました(笑)

でも、色々お願いされた先生も、田畑さんも、とっても嬉しそうでした!!

そして、男の子たちのグループのダンス

担任の先生や田畑さん、アシスタントで入って下さったダンサーの鈴木さん、澁谷さんと一緒に踊りました。

闘いのダンスを披露する子、得意の側転を披露する子、なかには日本人離れしたリズム感で踊る子もいて、観客の喝采を浴びていました!

最後はみんなで「どんな色が好き?」のダンス。

これが唯一、みんなで一緒の振りを踊るダンスです。
全員揃って踊っている姿に感動・・・・本番に強いと聞いてはいたけど・・・大人はハラハラしたよ。
ちなみに、田畑さんが着ているTシャツと同じものを、みんなも着ています。色んな形のスタンプを押して作りました。

フィナーレはみんなでポーズ。カラフルな紙テープが花を添えてくれます。

紙テープを担当してくれたのは、女の子たち。

「私がこっちに走るから、あっちに走ってね!」などと、入念に打合せしてました。
先生は、「相手の気持ちを汲み、協力して取り組む彼女たちの姿に、大きな成長を感じた」と目頭を熱くされていました。

こうして、今年度のパフォーマンスキッズ・トーキョーは賑やかに、カラフルなファンファーレとともに幕をあけたのでした!

最後になりますが、田畑さんが当日パンフレットに寄せて下さったメッセージをお届けします。

「はじめて子どもたちと出会った日、それはそれは賑やかでした。

元気いっぱい走り、風船で遊び、机の上からジャンプ!

じっと様子を見ている子、溌剌とした身体で楽しそうに真似っこダンスをしてくれる子、

即興的に美しいダンスを踊る子・・・・目眩がしそうなほどカオスな時間でした。

「これは大変だぞ・・・」が、初日の正直な感想でした。とにかく、本番である運動会まで時間がない!!

作品の大まかな構成を用意していましたが、どうやら全員で決まった踊りは出来そうにないぞ・・・と、頭を抱えた初日でした。

2回目から作戦変更。子どもたちも少し馴れてきて、どんなダンスにしようか?とお話することが出来ました。すると、子どもたちから色々なアイデアや、面白いダンスが浮かんできました。

「そうか!!子どもたち一人一人が素敵なダンスを創り、踊ることができるじゃないか!!」

知らぬ間に、型に嵌めたダンスを押し付けようとしていたのかもしれないなぁ、と反省しました。子どもたちの鮮やかな身体に感動しました。

カオスだと思っていた時間は、カラフルに彩られた尊い時間になりました。

子どもたちとの出会いは、私にとって今後の活動に変化をもたらす出会いになったような気がします。

みんな、ありがとう!!また一緒に踊ろうね♪

                           まきまっちょ 田畑真希

小学6年生の子どもたちと取り組んだ、浅見俊哉さん(写真作家・造形ワークショップデザイナー)とのワークショップをご紹介します。

自分なりの表現方法を見つけて、のびのびと表現できる機会をつくりたい。そして、手を動かしながら何かを発見していく面白さを味わうような体験をしたい、という先生からのリクエスト。アーティストに出会い「こんな表現方法もあるんだ」と知ることができれば、という想いも受けて、フォトグラムという手法を使った作品で各地で活躍されている浅見俊哉さんと『影をつかまえる』ワークショップを行いました。

授業の始まりは、浅見さんの自己紹介から。浅見さんの好きなものの話から、影を見るのが好きだったということや、作品の紹介もしてくださいました。そして、今日は「カメラを使わない写真=フォトグラム」をつくることを説明して、最初はジアゾタイプと言う手法での撮影です。室内の光でも感光する用紙を使い、それぞれが自由に選んだモノを使って1枚目の撮影へ。

 

 

 

 

 

 

子どもたちは、「影を撮影する」ということがなかなか実感できない様子で、少しキョトンとしながらモノを並べている子もいました。しかし、熱=アイロンで現像した瞬間、影が浮かびあがる様子に目の色が変わる子どもたち。仕組みが分かると、次はどうしたいかをどんどん考えて、2枚目の撮影へと進みました。1枚目の時より、モノの配置をじっくり考えて、影を机に写して試してみたり、組み合わせて形をつくったり、一人ひとりの発想が広がっていきました。

 

 

 

 

 

 

そして、まだまだ「やってみたい」という気持ちを抱えて、3枚目の撮影へ。最後は、サイアノタイプという手法で、より大きな紙に、自然光で露光する方法です。外では風という天敵がありますが、用紙やモノが飛んでいかないように工夫もして、中には手や顔の影を撮影しようと奮闘している子どもたちもいました。あいにく曇り空の時間もあったので、露光には10分間ほど時間がかかりましたが、待っている間も校庭で紙の色が次第に変わっていく様子を眺めながら、じっくりゆっくり影を写していきました。

 

 

 

 

 

 

最後は、みんなの作品を展示して観賞会。同じモノでも組み合わせ方や見立てが違っていて、一人ひとりのこだわりも感じられる作品が出来上がりました。海の世界をイメージしたり、上靴を使って不思議な生き物のような形をつくったり、露光の途中でモノを動かして残像を活かしたり、想い想いの影をつかまえることができたように思います。

 

 

 

 

 

 

 

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浅見 俊哉(あさみ しゅんや)/写真作家・造形ワークショップデザイナー
https://www.children-art.net/asami_syunya/

小学6年生2クラス48人の子どもたちと取り組んだ、青山健一さん(美術家)とのワークショップをご紹介します。

身の回りにある世界なら想像できるが、アーティストと出会うことで、「こんな世界もあるんだ!」と気づけるような機会をつくりたい、という先生からのリクエスト。アーティストという存在との出会いを大事にしたいとの想いを受けて、既存のギャラリーのみならず、劇場やライブハウスでも多彩な活動を展開中の美術家・青山健一さんと、絵を描くことに向き合う時間をつくりました。

まず初めは、青山さんの自己紹介から。体育館を暗くして5分ほどの映像作品を観る時間もつくりました。暗闇の中でじっと画面を見つめ、子どもたちの集中力が高まるのが感じられました。そのまま暗い中で「暗い体育館って良くないですか?」という青山さんの投げかけから、今日は「洞窟にいる一匹の長い謎の生き物」を描こうという話につなげていきました。謎の生き物なので、どんな形や色になっても良いけれど、一人一匹描くのではなく、「みんなで一匹」というところがポイントとなりました。

その後は、体育館の端から端まで敷かれた25mの真っ白な養生シートに、一人一色の絵具と一本の刷毛を持って、早速描いていきました。何を描いていいのか躊躇する子もいれば、何のためらいもなくどんどん筆を進めていく子もいます。そして描かれていく線や形にお互いが刺激を向けて、いつの間にかシートに乗って手や足が絵具だらけになる子もどんどん増えていきました。

一旦描き始めてからの子どもたちの勢いはすさまじく、5分、10分もすればあっと言う間に画面が埋まっていました。そこで一旦電気を付け、2階のギャラリーに上がって、全体像がどうなっているのかを見る時間を設けました。青山さんから「生き物に見えるかな?」と投げかけられると、それぞれに感じたところがある様子の子どもたち。勢いで描くことから、少し考えて、色やつなげ方の工夫、全体で一匹の生き物にするにはどうすれば良いか、一歩踏み込んで考えてから続きを描いていきました。


子どもたちは、反対色を重ねることや、輪郭や一本の長い線を使うこと、顔を創ってみることなど、お互いが描いているものを意識しながら描くようになりました。ただ勢いに任せるだけではなく、最初よりも少し落ち着いた雰囲気で、あちらこちらで相談し合う声が増え、綺麗なイメージになっているところは、それ以上手を加えないようにするなどの判断をしているところもありました。途中、青山さんが端から端まで絵の細部を投影して壁に写し、面白いポイントを伝えていく時間も取りながら、次第に全体で一つの絵として感じられるようになっていきました。

そして、最後は再びギャラリーに上がって明るい中で絵を眺めました。1回目に見た時とはまた違って、とても迫力のある謎の生き物が浮かび上がっていました。
自由に想いのままに描くことと、少し考えて絵に向き合うことと、その両方を経て生まれた大作に、アーティストもスタッフも清々しいエネルギーをもらい、感心しきりの一日になりました。

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青山 健一(あおやま けんいち)/美術家
https://www.children-art.net/aoyama_kenichi/

小学6年生2クラス62人の子どもたちと取り組んだ、中山晃子さん(美術家)のワークショップをご紹介します。
完成させることや何かに縛られてつくるのではなく、その場で立ち上がってくるモノやコトを楽しみ「アートってすごい」と感じられるような場や、アーティストとの出会いをつくりたい、という先生からのリクエスト。
「なぜ絵は乾いてしまうのだろう」という疑問から、様々な絵具や素材が相互に反応し変容し続ける姿を”Alive Painting”として描く中山晃子さんと、各クラス90分間のワークショップを行いました。まるで生き物のように動き続ける液体、絵と音が呼応していく時間の流れ、変容するモノとコトをつくり出し眺める時間から、子どもたちは何を感じたのでしょうか。
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真っ暗な体育館に入ったら、早速中山さんのパフォーマンスが始まります。挨拶も説明もないのでスクリーンの謎の映像を見て「何これ?」など小声で話す子どもたち。しかし、音が鳴り始め、映し出された絵が動き始めると、あっという間に集中していきました。何がどうなっているのか気になって、中山さんの方を覗き込もうとする子もちらほら。15分ほど経ったところでパフォーマンスを中断し、中山さんが簡単な自己紹介と、作品がどうやって描かれているのかを説明しました。
その後は、再びパフォーマンスを見る時間。でも、今度は「座っていなくても良いから好きな場所でどうぞ」と中山さん。その途端に中山さんの真横に陣取ったり、並べられた絵具の周りに集まったり、それぞれが興味の赴く場所で絵を眺めていました。
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子どもたちの中にもいろいろな想いが湧いてきたところで体育館を明るくして、改めてどんな道具があるのか、子どもたちの質問も受付けながら機材の仕組みや材料の説明をしました。普段見慣れない形の瓶もあり、外側を見るだけでは何が入っているのか分からないものも。「ここにあるのは、何かアクションを起こすと何かを起こすもの」と中山さん。いわゆる絵具だけではなく、粉や墨汁、油なども用意されていて、子どもたちは「これ何だろう?」と気になるものをどんどん手に取ったり、質問をしたりしながら、自分たちで描く時に使いたいものを選んでいきました。
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後半は、選んだ絵具などを使い「一筆入魂」ということで、一人一筆(もしくは一振り)ずつ絵を描いていきました。それぞれの材料の特性によって画面上に様々な反応が生まれ、前の人が描いた跡を意識しながら描く子や、自分の気持ちで思い切って筆を動かす子、それぞれのやり方で描いていきました。事前にスタッフが予想していたよりも、子どもたちは迷いなく、でもそれぞれの想いを乗せて、一筆一筆色を置いていました。子どもたちは、画面で起こる変化や反応に「おお!」「きれ~い」と時折感嘆の声も挙げながら、どんどん絵を描いていきました。
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一通り体験した後は、次に何がしたいか子どもたちに委ねました。絵具に興味がある子は2つめの絵具を選んで続きを描き、それ以外にも好きなやり方で絵に関わっていきます。スクリーンの裏側に回ってただただ眺めている子、スクリーンの前に身体の影を映してみる子、タブレット端末を使って写真を撮る子など。また、途中で音の仕組みの説明もしました。絵を描いている間に流れる音楽は、既存の楽曲だけでなく、その場で加工したり、作業の音を拾ったりしてつくられているのです。普段の声を拾うマイクではなくて、作業をしている手元の音を拾うマイクや、その音にエフェクトをかけて時間を遅らせて再生できる機械の説明なども。音に興味を持った男の子たちは、機会をいろいろさわって試しながら、まるでジャングルのような音風景をつくり出していました。
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思い思いの時を過ごしたワークショップの中で、中山さんは絵具についても丁寧に話をしました。長い年月をかけてつくられる鉱物や宝石からできている絵具は、人間が加工したものでもあるけれど、生き物であり「バサッと出した時に、その絵具の山は人間のたくさんの文化の中で実はできていたものなんです」と。「この(絵具の)山が一体何年かけてつくられているものなのか。一体、いくら分のモノが、ここに、あるのか。でも何で線を描くのか」と子どもたちに問いかけました。
振返りでは、先生から「ここを見なさい」という大人の指示ではなく、子どもたちそれぞれの見方が広がっていたとの感想をいただきました。中山さんとの出会いを通して、一人ひとりの中に、ザワザワとした何かが、少しでも生まれていたら良いなと思います。動き出していないように見えた子たちの中には何が起こっていたのかな、と想像を膨らませつつ、何かを感じて動き始める気持ちをじっくり、ゆっくり待つ楽しさを思い返しています。
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中山 晃子(なかやま あきこ)/美術家
https://www.children-art.net/nakayama_akiko/

当NPOでは、10日間前後のワークショプを行い、最終的に作品を発表するという取り組みも行っています。例年学芸会などに向けて実施することが多いのですが、今回は、6月の学校公開日に発表した4年生70人との取り組みをご紹介します。「自分で何かをつくり上げる経験がまだ少ない子どもたちに、苦労して考えてこそ、という作品をつくる難しさや楽しさを経験させたい」という先生からのリクエスト。アーティストは、セレノグラフィカ(ダンスカンパニー)の隅地茉歩さんと阿比留修一さんをお迎えして、9日間のワークショップを実施しました。
初めての出会いの日。子どもたちが体育館にやってくると、既に踊っているアーティストの姿が。二人は一言も話さず、そのままアーティストを囲んで鑑賞タイム。いつもとちょっと違う動きに思わず後ずさりする子もいますが、子どもたちに近づいたりふれ合ったり、何人かを誘い出して踊ったりするうちに、アーティストの世界に引き込まれていきました。その後の自己紹介では「たくさんびっくりして、笑って、初めての景色をみましょう」とアーティスト。まずは身近な歩くことから、ダンスが始まりました。狭い範囲でもぶつからないように歩いたり、「ストップ」の合図で片手や片足を挙げて止まったり、少しのルールを加えると色々な身体の動きが広がり始めました。
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2日目以降は、毎回ヨガのポーズでワークショップを開始。三日月のポーズ、立木のポーズ、ウサギのポーズなど、丁寧に呼吸を整えながら集中力を高めました。また、前半4日間はクラス毎に実施して、一人ひとりに向き合い様々な種類のワークを体験しながら、身体の可能性を探りました。「なぞなぞダンス」というワークでは、「カマキリの綱引き」「掃除するロボット」などのお題を身体で表してチームで当てっこ。相手の動きを鏡のように真似する「鏡の中のあなた」や、二人組で身体の一部に触れられたところからスルッと抜ける「さわってぬけて」などに取り組みました。

また、各ワークでクラスを半分に分けて互いに鑑賞する時間も設け、友だちのダンスを見合う時間も大切にしました。自分の名前に振り付けする「ネームダンス」では、一人ひとりが世界にたった一つのダンスをつくりました。一人だけで黙々と考える子、友だちと相談しながら考える子、先生の分まで考える子など、取り組み方は様々。出来上がったら全員で輪になって一斉に、また一人ひとりみんなの前で「ネームダンス」を披露。一人だと大きな声が出ず動きが小さくなる子もいますが、その緊張や恥ずかしさも含め見られることが貴重な体験になっているように感じました。

さて、後半5日目からは2クラス合同70人でのワークショップ。衣装(子どもたちが選んだ6色のTシャツ)を着ると子どもたちの気持ちも更に高まる様子。一方で、ワークショップも後半になると段々慣れてきて新鮮な気持ちが途切れる事も。そんなある日の始まりは、アーティストと体育館を縦横無尽に動き回ってとにかくいろんな動きを真似すること。賑やかな音楽にのって、なんだかセクシーな動きや顔の表情も豊かでどこか笑いを誘う面白い動きに、見ている子どもたちからも笑い声が。気持ちも新たに、いよいよ構成に入っていきました。

作品は、「花」「ロボットダンス①」「STOP&GO」「ネームダンス」「ロボットダンス②」「オクラホマミキサー」の6つのシーンから構成されました。どれも全員がワークショップの中で経験したものですが「花」「ロボットダンス」「ネームダンス」の3つは、子どもたち自身がどのシーンに出たいかを選び、「STOP&GO」とフォークダンスをアレンジした「オクラホマミキサー」は全員で踊りました。また、3つのシーンには出演せず全員のシーンだけに出演する選択肢もつくりました。全員が同じ時間同じように登場するより、一人ひとりの選択と責任に任せることで、一人ひとりのありのままが活かされたように思います。

そして迎えた9日目の本番。直前には目を閉じて隣の人と手をつなぎ、静かに理想の本番をイメージ。全校児童と保護者が見守る中、いよいよ開演です。「花」のシーンを選んだのは5人。両手を合わせて宙に好きな人の名前を丁寧に、ゆっくりと描きました。「ロボットダンス」は大人気だったので曲を2種類用意して2シーンに。曲を感じフロアを行き来しながらロボットになりきります。「STOP&GO」では、曲がストップする度に片手を挙げる、片足を挙げる、両足を挙げるなどのポーズでストップ。一人ひとりの身体から多様な形が生まれます。

「ネームダンス」は12名が登場。一人で自分のネームダンスを披露したら、全員でもう一度繰り返します。スポットライトを浴びて、飛んだり跳ねたり、面白い動きには会場から笑い声も。そして最後は全員で「オクラホマミキサー」。

2人組、4人組、8人組、同じTシャツの色、全員で、などなどアーティストの音頭に合わせて腕を組みながら軽快にステップ。後半は、歌詞を学校オリジナルにアレンジ。子どもたちに聞いた学校自慢を歌詞に織り込んで、「プールの床も動きます!」など元気よく歌いながら踊りました。最後はTシャツの色ごとにお客さんにご挨拶。9日間のいろいろな想いや経験を詰め込んだ本番を、無事終えることができました。

本番の後には、別の部屋で一人ひとり「ネームダンス」を披露してもらい、その後一言ずつ感想を聞きました。「緊張して手がつめたくなった」という子や「思ったより緊張せず楽しめた」などそれぞれの感じ方があった様子。9日間はあっという間に過ぎ去り別れはいつも名残惜しいですが、アーティストと出会い、ダンスに出会ったみんなが、それまで知らなかった気持ちや新たに見たかもしれない景色を抱えて、それぞれの毎日をまた元気に楽しく過ごしていると良いなと思います。
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セレノグラフィカ/ダンスカンパニー
https://www.children-art.net/selenographica/

保育園の4・5歳児クラスで行われた、城俊彦さん・伊藤知奈美さん(「Co.山田うん」ダンサー)のワークショップをご紹介します。体操や外遊び、鬼ごっこなど、身体を動かすことが大好きな子どもたちなので賑やかな身体表現活動をやってみたい、との先生からのリクエスト。どんどん新しい動きを経験したり、友だちとふれあったり、みんなの前で踊ってみたり、汗だくになりながら一人ひとりのダンスを探す2日間となりました。

1日目、最初は「おはようございます!」の挨拶から。少し緊張した面持ちの子どもたちでしたが、手を上へ伸ばすなど動作もつけながら「おはようございます」を繰り返し、身体をほぐして自然と大きな声が出るようになっていきました。そして、元気よく挨拶をした後は自己紹介。事前に先生には「ガムテープに好きな名前を考えて貼って下さい」とお願いしていたので、ワークショップの間はみんな一人ひとりの「ダンサー名」で呼ばれます。「ひゃくじゅうのおう」「はっぴー」「ぱいなっぷる」「ひこうき」「ぶるーきのこ」など、バラエティ豊かな名前を、一人ひとりアーティストが呼びながらハイタッチ。その度に繰り出されるアーティストの動きにも、子どもたちの活動への期待が高まっていき、動きもどんどん増えていきます。
みんなの名前を呼び終えたら「おはようございます」から「こんにちは」、「よ」、「は」と言葉遊びのように言葉をつなげて、それに合わせた様々な動きを真似します。ほっぺを叩いたり、お尻を叩いたり、「おにぎりの具はなあに?」という質問に「お肉!」「お魚!」と子どもたちが答えれば、それをその場で取り入れて動きにしてしまうアーティスト。いつもとちょっと違う不思議な動きを次々に真似して動いていたら、いつの間にかアーティストとの距離もぐっと縮まっていきました。

たくさんの動きを経験した後は、その場で好きなポーズをいくつか考えて「ピタッ」と静止。ポーズが決まったら音楽スタート!「ドレミの歌」や「幸せなら手をたたこう」など子どもたちにも馴染みのある曲がジャズ風にアレンジされた曲を使い、振付を真似しながら一緒に踊ります。子どもたちは時には歌を口ずさみながら、右へ左へ部屋中をアーティストと一緒にめいっぱい動き回ります。

たくさん身体を踊った後は静かな曲を聞きながら寝転がり、深呼吸や伸びをした後、自分の身体や一緒に踊ってくれた友だち、お部屋にも「ありがとうございました」の挨拶をして1日目を終えました。
2日目は、1日目とは違うダンサー名を考えた子もいたり、「今日は何する?」と聞けば「ダンスの日!」と元気よく答えてくれたり、子どもたちが活動にもアーティストにも慣れている様子が伺えました。早速動きを真似しながら身体を動かし、自由なポーズで止まったら、音楽が始まります。1日目に踊った曲も、2日目に初めて踊る曲も、みんなノリノリで、決まった振りだけでなく自由な部分も混ぜながら踊ってみました。

そして、一通り身体を動かした後は、一人ひとりのダンスの時間です。まずは、アーティストがみんなの前で一人のダンスを披露。「すごい!」「いろんな踊りが踊れるんだ!」「じょこす(アーティストのこの日の名前)頑張って!」など口々に感想や応援を始める子どもたち。アーティストのダンスに目は釘付けです。

そして、アーティストが子どもたちの側に近づいていくと、踊りたい気持ちでいっぱいになった子が一人、また一人と踊り始めます。いきなり一人で踊ることを躊躇う子も、アーティストや友だちの手をとって、自分なりのダンスを小さい身体でしっかりと踊ります。

全員が一通り踊り終わった後「もう一回踊りたい!」という子どもたちの声が。「踊りたい人は踊ります」とアーティストが言えば、あっという間に全員が世界にたった一人のダンサーになり、自分だけのダンスをあちらこちらで踊り始めました。1日目にはあまり活動に参加できなかった子がフッとみんなの中に入って踊っていたり、友だちと手を取り合い二人でダンスを考えていたり、のびやかに花開いた子どもたちの身体から生まれるダンスに心奪われました。
終了後の振り返りでは、5歳児クラスの子どもたちが、4歳児クラスのワークショップ中も「楽しみがなくなっちゃうから覗かない」と子どもたち同士で決めていたというエピソードや、「自由に表現する(動いていみる)面白さを味わえる良い経験になった」という感想をいただきました。
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Co.山田うん/ダンスカンパニー
https://www.children-art.net/co-yamadaun/