5歳児クラス12人の子どもたちと、東山佳永さん(踊り手・美術家)のワークショップをご紹介します。みんなで一つのイメージを共有して、豊かな表現に出会う機会にしたい、という先生からのリクエスト。この園では、5歳児クラスだけがお昼寝をしない「ひみつの時間」という設定があり、その時間の中でアーティストと出会い、普段できないような体験をしてみたい、とのこと。普段の生活の様子でサーカス小屋をつくった子の話や、みんなおばけが好きということも伺ったので、『おばけサーカス』(作・絵:佐野洋子)という絵本をモチーフにワークショップの内容を組み立てました。アシスタントに音響デザイナーの白石和也さんもお迎えして、世界にたった一つのサーカス団をつくりました。

1日目は、アーティストによる『おばけサーカス』の朗読からスタート。物語に登場するおばけのサーカス団が披露する芸は「虹の橋を渡る」「森の中でヴァイオリンを弾く」など、想像を掻き立てる描写がたくさん詰まった絵本です。
朗読の後「うたと、おどりと、おえかきと、いろんなものを使って物語の中に入っていきます」と子どもたちに伝え、アーティストによるサーカスの芸を披露しました。アーティスト自身が描いた絵を背景に、踊りと音楽で芸を表現してみると、子どもたちは静かに見入っていました。
そしていよいよ、みんなでおばけのサーカスになる時間です。まず初めに「ひ・ひ・ひみつのサーカス団♪」というオリジナルの歌を練習してから、おばけになるためのストレッチ。身体のいろんな部分を伸ばしてほぐしてやわらかくして、身体の準備も整え、歌に合わせた振付も練習しました。
その後は、サーカス団の秘密の作戦会議。一人ひとりがどんな芸を披露したいか、得意なことや、どんな風景が思い浮かぶかということをヒントにアーティストと一緒に考えました。顔を後ろにするのが得意だから「さかさまの国」、「全部がへんてこな国」、「片足が得意」など子どもたちのアイデアを一つずつ拾いながら12人それぞれの芸を相談しました。

何を披露するか決まった後は、一人一枚ずつの布に芸のイメージを描いていきました。クレヨンや絵具、布を貼るなど、どんな風に描いても良く、いろんなものを使って好きなように描いていきました。最初は、自分より大きな真っ白の布を前にして、何から始めて良いか戸惑っている様子でした。でも、一人、また一人と描き始めると、あっという間にみんなどんどん手が動き出します。そのうち、手や足で描く面白さに気付く子も現れ、周りの子がどんな風に描いているかも参考にしながら、夜空の情景や、コウモリのいる洞窟、リンゴの木のある山の風景など、12枚の素敵な風景が完成しました。

最後に「上から見るときれいだよ!」と言ってくれた子がいて、みんなの描いた絵を眺めつつ、アーティストがその絵の中でみんなが考えた芸をヒントに少し踊ってみました。次回はみんなに芸を見せてもらうよ、と予告をして1日目の活動を終えました。
一週間後に迎えた2日目、この日はいよいよサーカスの始まりです。まずは準備運動で体をほぐし、前回覚えた「ひみつのサーカス団」の歌と踊りを思い出したら、早速サーカスの芸の練習です。描いた絵を被っておばけになって踊った後に、一人ひとりの芸を披露しました。芸のイメージを元にアーティストがつくった12人それぞれのテーマ曲に合わせて、山々をジャンプして飛び越えていく芸、ひっくり返ってさかさまの国を表現する芸、一番怖いおばけになって見ている友だちを驚かせる芸、星空を綱渡りする芸、ウサギやライオンに変身する芸など、色とりどりの芸が出そろいました。

さて、サーカス芸の練習が終わったら、次はサーカス小屋が必要です。子どもも大人もみんなで協力して、描いた絵を一つにつなげてサーカス小屋を組み立てました。平らな布が立体的に立ち上がっていく様子も楽しんで見守り、出来上がった時には中に入りたい気持ちが抑えきれない様子の子どもたち。「ひみつのサーカス団」を歌いながら入ったら、しばらくは好きにテントを眺めたり、いつの間にか走り回ったり、テントそのものとふれ合う時間を過ごしました。

そのうち、本を読みたいという子が出てきて、ここでもう一度『おばけサーカス』を朗読しました。でも、今度はお話の中に、12人それぞれの芸の話も織り交ぜてオリジナルの物語になっていました。
そしていよいよ、サーカスのはじまりはじまり。部屋の電気を消して懐中電灯の光だけにし、テントの中という特別な空間で、最初の練習よりも思い切って披露できたように思います。サーカスの最後は、12人みんなでリーダーの真似をするダンス。友だちが考えた動きをみんなで一緒に踊って、サーカスはおしまい。

アーティストから「うたでも、おどりでも、絵でも、何でもいいんだ。何か自分の得意なことを見つけて磨いてみてください。きっときれいになると思います」という挨拶と、みんなの音楽をCDでプレゼントして2日間のワークショップを終えました。
先生との振り返りでは、イメージがあることで動きも広がり、思ったより自己表現ができていた、絵からもイメージをつなげて表現していた、という感想や、「ひみつの時間」に自分たちでつくった特別な「ひみつのサーカス」のことを、人に話したい気持ちと秘密にしたいという気持ちの間で葛藤するのでは、というお話を伺いました。『おばけサーカス』の世界観を共有しながら、その中で一人ずついろんな表現を見せてくれた子どもたち。これから何でもできる可能性を秘めた子どもたちの中に、みんなでつくった「ひみつ」がいつまでも潜んでいられると良いなと思います。
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東山 佳永(とうやま かえ)/踊り手・美術家
http://www.children-art.net/touyamakae/

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