積水ハウスマッチングプログラムからのご支援を受けて実施した、2つの児童養護施設で暮らす子どもたちが交流するワークショップ。2年目となる活動と最終日に実施した成果発表会の様子をお届けします。

昨年度に引き続き、アーティストの棚川寛子さん(舞台音楽家)、アシスタントの井上貴子さん(俳優)、加藤幸夫さん(俳優)、黒木佳奈さん(俳優)、佐藤円さん(俳優)の5名と共に、5日間のワークショップを実施しました。

2025 年度のテーマは『未来の水中都市』。ワークショップの初日は、アーティストと子どもたちが輪になって「ワークショップを通してどんなことをしてみたいか」話し合うところからスタートしました。
「劇づくりがしたい」「工作がしたい」「楽器をつくってみたい」等々、色々な意見があがる中、『水中都市』というキーワードが子どもたちから出てきました。
「水中に住めるなら何がしたい?」「都市には、どんな生き物が住んでいるかな?」「水中都市のお祭りの音楽ってどんなだろう?」問いかけを重ねるたびに、イメージはどんどん膨らんでいき、「水中都市」、「楽器」、「生き物」の3つのチームに分かれて、創作を進めていくことになりました。

今回のワークショップでは、「廃材のペットボトルキャップを材料として使おう」という棚川さんの提案から、アーティストと子どもたち、施設職員のみんなでペットボトルキャップ集め大作戦がスタート。子どもたちは、ワークショップに来るたびに「もってきたよ!」とポケットいっぱいのペットボトルキャップを手渡してくれました。施設職員の方々が色々な人や場所に声をかけてくださり、施設の内外を問わず多くのご協力をいただいた結果、1000個を遥かに超えるたくさんのペットボトルキャップが集まりました。
(集まったキャップは、発表会終了後、子どもたちが通う学校等でリサイクル回収されて「ペットボトルキャップワクチン」活動に活用されています)

2 日目からは、ペットボトルキャップを使って、「水中都市」「楽器」「生き物」の各チームが制作を開始。ボンドやグルーガンで貼り付けて家やビルをつくったり、2つのキャップを合わせて空気穴を開けて虫笛をつくったり…

細かく刻んだキャップ片を集めて、形を整えてからアイロンを押し当てると…イルカや魚など、海の生き物が誕生!子どもたちの工夫で、廃材のペットボトルキャップがどんどん新しい姿に生まれ変わっていきました。そして、かわいい生き物をたくさんつくった生き物チームから「イルカや魚たちが泳ぐ、動く水族館をつくりたい」と声があがると、みんなでアイデアを出し合いながら、磁石を使って生き物を動かす仕組みを考え出し、「動く水族館」を完成させました。

チーム毎の作品ができたら、それぞれの作品を並べて『未来の水中都市』の街並みづくり。
「都市だからお城や大きなタワーがあってもいいかも」「水中都市のまわりは、どうなっているんだろう?」想像を膨らませて、アイデアを出し合いながら、お城や建物などをみんなで一緒につくっていきます。そして、遂に『未来の水中都市』が完成!
一緒になってひとつのモノをつくり上げていくワークショップの過程で、普段はあまり話さない子ども同士の会話が生まれたり、自分の意見を伝えるのが苦手な子が、相手に思いを伝えるために、一歩、そしてまた一歩、勇気をもって踏み出そうとする姿が印象的でした。

ワークショップ最終日は、成果発表会。
「○○君の家はどこですか?」と、明るい声で司会進行するA君。
一人ずつ順番に、自分のつくった家や楽器、生き物たちを紹介していきます。
「工夫したところはどこですか?」
それぞれがつくった作品を、小型カメラで撮影してスクリーンに投影しながら、司会者のインタビューに答えるかたちで、作品の紹介を行いました。
「水の中に入っているように、青いビニールをかぶせたところです」「2階へつながる階段がある海のお家です」自分たちのこだわりポイントを少し恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに話してくれました。
そして、手持ちカメラで作品の中をのぞいてみると…

細部へのこだわりが、スクリーンに大きく映し出されました。
子どもたちの中には、人前に出るのが苦手で、客席側から自分がつくった作品の様子をじっと見守る子や、工夫した点なんてないと言いながら、細部までこだわって描き上げた壁の描きこみについて、司会者が代わりに丁寧に説明してくれる様子を、照れくさそうに眺める子など、発表の仕方はさまざまでしたが、子どもたちが描く水中都市ストーリーの一端に触れることができる素敵な時間となりました。
そして、発表会の最後は、アーティスト、子どもたち全員による音楽演奏!アーティストたちが奏でる、明るく軽快なリズム・メロディーに乗せて、子どもたちが思い思いの楽器を手に取り、即興で色々な音色を重ねていきます。観客の皆さんも手拍子で参加してくださり、会場全体が一つになってフィナーレを迎えました。


成果発表会終了後に、アーティストとアシスタント、施設職員、スタッフで行った総括の振り返りでは、「昨年よりも積極的にアイデアを出して制作する姿が見られた」「継続して参加している子どもたちのオープンな雰囲気があって、初めて参加した子どもも馴染みが早かった」「発表時のアドリブの利いた司会進行や子どもたちの表現力や即興力など、脈々と受け継がれている力を感じる」と、継続してきたことによる変容や成果が多く語られていました。実際に、施設退所者でサポートスタッフや観客として来てくれる方など、ワークショップを通じてつながり続ける人たちがいることに感動しました。

さまざまな人と「場」をフラットに共有し、関係を築く経験を重ねた全5回のワークショップ。「好きなこと」「楽しいこと」を通して気持ちを伝え合い、同じ時間を過ごしたこと。その一つひとつの体験が、これから先の人生で、誰かとつながることのあたたかさや、自分の幸福感を育てていく力につながっていくことを願っています。

最後になりましたが、ワークショップ実施にあたり、ご尽力いただいたアーティストの棚川さん、アシスタントの皆様、サポートしてくださった施設の職員と参加者の皆様、そして、積水ハウスマッチングプログラムを通じてご支援いただきました積水ハウス株式会社とその従業員の皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。


【助成】積水ハウス株式会社