小学6年生の子どもたちと取り組んだ、浅見俊哉さん(写真作家・造形ワークショップデザイナー)とのワークショップをご紹介します。

自分なりの表現方法を見つけて、のびのびと表現できる機会をつくりたい。そして、手を動かしながら何かを発見していく面白さを味わうような体験をしたい、という先生からのリクエスト。アーティストに出会い「こんな表現方法もあるんだ」と知ることができれば、という想いも受けて、フォトグラムという手法を使った作品で各地で活躍されている浅見俊哉さんと『影をつかまえる』ワークショップを行いました。

授業の始まりは、浅見さんの自己紹介から。浅見さんの好きなものの話から、影を見るのが好きだったということや、作品の紹介もしてくださいました。そして、今日は「カメラを使わない写真=フォトグラム」をつくることを説明して、最初はジアゾタイプと言う手法での撮影です。室内の光でも感光する用紙を使い、それぞれが自由に選んだモノを使って1枚目の撮影へ。

 

 

 

 

 

 

子どもたちは、「影を撮影する」ということがなかなか実感できない様子で、少しキョトンとしながらモノを並べている子もいました。しかし、熱=アイロンで現像した瞬間、影が浮かびあがる様子に目の色が変わる子どもたち。仕組みが分かると、次はどうしたいかをどんどん考えて、2枚目の撮影へと進みました。1枚目の時より、モノの配置をじっくり考えて、影を机に写して試してみたり、組み合わせて形をつくったり、一人ひとりの発想が広がっていきました。

 

 

 

 

 

 

そして、まだまだ「やってみたい」という気持ちを抱えて、3枚目の撮影へ。最後は、サイアノタイプという手法で、より大きな紙に、自然光で露光する方法です。外では風という天敵がありますが、用紙やモノが飛んでいかないように工夫もして、中には手や顔の影を撮影しようと奮闘している子どもたちもいました。あいにく曇り空の時間もあったので、露光には10分間ほど時間がかかりましたが、待っている間も校庭で紙の色が次第に変わっていく様子を眺めながら、じっくりゆっくり影を写していきました。

 

 

 

 

 

 

最後は、みんなの作品を展示して観賞会。同じモノでも組み合わせ方や見立てが違っていて、一人ひとりのこだわりも感じられる作品が出来上がりました。海の世界をイメージしたり、上靴を使って不思議な生き物のような形をつくったり、露光の途中でモノを動かして残像を活かしたり、想い想いの影をつかまえることができたように思います。

 

 

 

 

 

 

 

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浅見 俊哉(あさみ しゅんや)/写真作家・造形ワークショップデザイナー
http://www.children-art.net/asami_syunya/

小学6年生2クラス48人の子どもたちと取り組んだ、青山健一さん(美術家)とのワークショップをご紹介します。

身の回りにある世界なら想像できるが、アーティストと出会うことで、「こんな世界もあるんだ!」と気づけるような機会をつくりたい、という先生からのリクエスト。アーティストという存在との出会いを大事にしたいとの想いを受けて、既存のギャラリーのみならず、劇場やライブハウスでも多彩な活動を展開中の美術家・青山健一さんと、絵を描くことに向き合う時間をつくりました。

まず初めは、青山さんの自己紹介から。体育館を暗くして5分ほどの映像作品を観る時間もつくりました。暗闇の中でじっと画面を見つめ、子どもたちの集中力が高まるのが感じられました。そのまま暗い中で「暗い体育館って良くないですか?」という青山さんの投げかけから、今日は「洞窟にいる一匹の長い謎の生き物」を描こうという話につなげていきました。謎の生き物なので、どんな形や色になっても良いけれど、一人一匹描くのではなく、「みんなで一匹」というところがポイントとなりました。

その後は、体育館の端から端まで敷かれた25mの真っ白な養生シートに、一人一色の絵具と一本の刷毛を持って、早速描いていきました。何を描いていいのか躊躇する子もいれば、何のためらいもなくどんどん筆を進めていく子もいます。そして描かれていく線や形にお互いが刺激を向けて、いつの間にかシートに乗って手や足が絵具だらけになる子もどんどん増えていきました。

一旦描き始めてからの子どもたちの勢いはすさまじく、5分、10分もすればあっと言う間に画面が埋まっていました。そこで一旦電気を付け、2階のギャラリーに上がって、全体像がどうなっているのかを見る時間を設けました。青山さんから「生き物に見えるかな?」と投げかけられると、それぞれに感じたところがある様子の子どもたち。勢いで描くことから、少し考えて、色やつなげ方の工夫、全体で一匹の生き物にするにはどうすれば良いか、一歩踏み込んで考えてから続きを描いていきました。


子どもたちは、反対色を重ねることや、輪郭や一本の長い線を使うこと、顔を創ってみることなど、お互いが描いているものを意識しながら描くようになりました。ただ勢いに任せるだけではなく、最初よりも少し落ち着いた雰囲気で、あちらこちらで相談し合う声が増え、綺麗なイメージになっているところは、それ以上手を加えないようにするなどの判断をしているところもありました。途中、青山さんが端から端まで絵の細部を投影して壁に写し、面白いポイントを伝えていく時間も取りながら、次第に全体で一つの絵として感じられるようになっていきました。

そして、最後は再びギャラリーに上がって明るい中で絵を眺めました。1回目に見た時とはまた違って、とても迫力のある謎の生き物が浮かび上がっていました。
自由に想いのままに描くことと、少し考えて絵に向き合うことと、その両方を経て生まれた大作に、アーティストもスタッフも清々しいエネルギーをもらい、感心しきりの一日になりました。

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青山 健一(あおやま けんいち)/美術家
http://www.children-art.net/aoyama_kenichi/

小学6年生2クラス62人の子どもたちと取り組んだ、中山晃子さん(美術家)のワークショップをご紹介します。
完成させることや何かに縛られてつくるのではなく、その場で立ち上がってくるモノやコトを楽しみ「アートってすごい」と感じられるような場や、アーティストとの出会いをつくりたい、という先生からのリクエスト。
「なぜ絵は乾いてしまうのだろう」という疑問から、様々な絵具や素材が相互に反応し変容し続ける姿を”Alive Painting”として描く中山晃子さんと、各クラス90分間のワークショップを行いました。まるで生き物のように動き続ける液体、絵と音が呼応していく時間の流れ、変容するモノとコトをつくり出し眺める時間から、子どもたちは何を感じたのでしょうか。
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真っ暗な体育館に入ったら、早速中山さんのパフォーマンスが始まります。挨拶も説明もないのでスクリーンの謎の映像を見て「何これ?」など小声で話す子どもたち。しかし、音が鳴り始め、映し出された絵が動き始めると、あっという間に集中していきました。何がどうなっているのか気になって、中山さんの方を覗き込もうとする子もちらほら。15分ほど経ったところでパフォーマンスを中断し、中山さんが簡単な自己紹介と、作品がどうやって描かれているのかを説明しました。
その後は、再びパフォーマンスを見る時間。でも、今度は「座っていなくても良いから好きな場所でどうぞ」と中山さん。その途端に中山さんの真横に陣取ったり、並べられた絵具の周りに集まったり、それぞれが興味の赴く場所で絵を眺めていました。
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子どもたちの中にもいろいろな想いが湧いてきたところで体育館を明るくして、改めてどんな道具があるのか、子どもたちの質問も受付けながら機材の仕組みや材料の説明をしました。普段見慣れない形の瓶もあり、外側を見るだけでは何が入っているのか分からないものも。「ここにあるのは、何かアクションを起こすと何かを起こすもの」と中山さん。いわゆる絵具だけではなく、粉や墨汁、油なども用意されていて、子どもたちは「これ何だろう?」と気になるものをどんどん手に取ったり、質問をしたりしながら、自分たちで描く時に使いたいものを選んでいきました。
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後半は、選んだ絵具などを使い「一筆入魂」ということで、一人一筆(もしくは一振り)ずつ絵を描いていきました。それぞれの材料の特性によって画面上に様々な反応が生まれ、前の人が描いた跡を意識しながら描く子や、自分の気持ちで思い切って筆を動かす子、それぞれのやり方で描いていきました。事前にスタッフが予想していたよりも、子どもたちは迷いなく、でもそれぞれの想いを乗せて、一筆一筆色を置いていました。子どもたちは、画面で起こる変化や反応に「おお!」「きれ~い」と時折感嘆の声も挙げながら、どんどん絵を描いていきました。
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一通り体験した後は、次に何がしたいか子どもたちに委ねました。絵具に興味がある子は2つめの絵具を選んで続きを描き、それ以外にも好きなやり方で絵に関わっていきます。スクリーンの裏側に回ってただただ眺めている子、スクリーンの前に身体の影を映してみる子、タブレット端末を使って写真を撮る子など。また、途中で音の仕組みの説明もしました。絵を描いている間に流れる音楽は、既存の楽曲だけでなく、その場で加工したり、作業の音を拾ったりしてつくられているのです。普段の声を拾うマイクではなくて、作業をしている手元の音を拾うマイクや、その音にエフェクトをかけて時間を遅らせて再生できる機械の説明なども。音に興味を持った男の子たちは、機会をいろいろさわって試しながら、まるでジャングルのような音風景をつくり出していました。
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思い思いの時を過ごしたワークショップの中で、中山さんは絵具についても丁寧に話をしました。長い年月をかけてつくられる鉱物や宝石からできている絵具は、人間が加工したものでもあるけれど、生き物であり「バサッと出した時に、その絵具の山は人間のたくさんの文化の中で実はできていたものなんです」と。「この(絵具の)山が一体何年かけてつくられているものなのか。一体、いくら分のモノが、ここに、あるのか。でも何で線を描くのか」と子どもたちに問いかけました。
振返りでは、先生から「ここを見なさい」という大人の指示ではなく、子どもたちそれぞれの見方が広がっていたとの感想をいただきました。中山さんとの出会いを通して、一人ひとりの中に、ザワザワとした何かが、少しでも生まれていたら良いなと思います。動き出していないように見えた子たちの中には何が起こっていたのかな、と想像を膨らませつつ、何かを感じて動き始める気持ちをじっくり、ゆっくり待つ楽しさを思い返しています。
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中山 晃子(なかやま あきこ)/美術家
http://www.children-art.net/nakayama_akiko/

5歳児クラス12人の子どもたちと、東山佳永さん(踊り手・美術家)のワークショップをご紹介します。みんなで一つのイメージを共有して、豊かな表現に出会う機会にしたい、という先生からのリクエスト。この園では、5歳児クラスだけがお昼寝をしない「ひみつの時間」という設定があり、その時間の中でアーティストと出会い、普段できないような体験をしてみたい、とのこと。普段の生活の様子でサーカス小屋をつくった子の話や、みんなおばけが好きということも伺ったので、『おばけサーカス』(作・絵:佐野洋子)という絵本をモチーフにワークショップの内容を組み立てました。アシスタントに音響デザイナーの白石和也さんもお迎えして、世界にたった一つのサーカス団をつくりました。

1日目は、アーティストによる『おばけサーカス』の朗読からスタート。物語に登場するおばけのサーカス団が披露する芸は「虹の橋を渡る」「森の中でヴァイオリンを弾く」など、想像を掻き立てる描写がたくさん詰まった絵本です。
朗読の後「うたと、おどりと、おえかきと、いろんなものを使って物語の中に入っていきます」と子どもたちに伝え、アーティストによるサーカスの芸を披露しました。アーティスト自身が描いた絵を背景に、踊りと音楽で芸を表現してみると、子どもたちは静かに見入っていました。
そしていよいよ、みんなでおばけのサーカスになる時間です。まず初めに「ひ・ひ・ひみつのサーカス団♪」というオリジナルの歌を練習してから、おばけになるためのストレッチ。身体のいろんな部分を伸ばしてほぐしてやわらかくして、身体の準備も整え、歌に合わせた振付も練習しました。
その後は、サーカス団の秘密の作戦会議。一人ひとりがどんな芸を披露したいか、得意なことや、どんな風景が思い浮かぶかということをヒントにアーティストと一緒に考えました。顔を後ろにするのが得意だから「さかさまの国」、「全部がへんてこな国」、「片足が得意」など子どもたちのアイデアを一つずつ拾いながら12人それぞれの芸を相談しました。

何を披露するか決まった後は、一人一枚ずつの布に芸のイメージを描いていきました。クレヨンや絵具、布を貼るなど、どんな風に描いても良く、いろんなものを使って好きなように描いていきました。最初は、自分より大きな真っ白の布を前にして、何から始めて良いか戸惑っている様子でした。でも、一人、また一人と描き始めると、あっという間にみんなどんどん手が動き出します。そのうち、手や足で描く面白さに気付く子も現れ、周りの子がどんな風に描いているかも参考にしながら、夜空の情景や、コウモリのいる洞窟、リンゴの木のある山の風景など、12枚の素敵な風景が完成しました。

最後に「上から見るときれいだよ!」と言ってくれた子がいて、みんなの描いた絵を眺めつつ、アーティストがその絵の中でみんなが考えた芸をヒントに少し踊ってみました。次回はみんなに芸を見せてもらうよ、と予告をして1日目の活動を終えました。
一週間後に迎えた2日目、この日はいよいよサーカスの始まりです。まずは準備運動で体をほぐし、前回覚えた「ひみつのサーカス団」の歌と踊りを思い出したら、早速サーカスの芸の練習です。描いた絵を被っておばけになって踊った後に、一人ひとりの芸を披露しました。芸のイメージを元にアーティストがつくった12人それぞれのテーマ曲に合わせて、山々をジャンプして飛び越えていく芸、ひっくり返ってさかさまの国を表現する芸、一番怖いおばけになって見ている友だちを驚かせる芸、星空を綱渡りする芸、ウサギやライオンに変身する芸など、色とりどりの芸が出そろいました。

さて、サーカス芸の練習が終わったら、次はサーカス小屋が必要です。子どもも大人もみんなで協力して、描いた絵を一つにつなげてサーカス小屋を組み立てました。平らな布が立体的に立ち上がっていく様子も楽しんで見守り、出来上がった時には中に入りたい気持ちが抑えきれない様子の子どもたち。「ひみつのサーカス団」を歌いながら入ったら、しばらくは好きにテントを眺めたり、いつの間にか走り回ったり、テントそのものとふれ合う時間を過ごしました。

そのうち、本を読みたいという子が出てきて、ここでもう一度『おばけサーカス』を朗読しました。でも、今度はお話の中に、12人それぞれの芸の話も織り交ぜてオリジナルの物語になっていました。
そしていよいよ、サーカスのはじまりはじまり。部屋の電気を消して懐中電灯の光だけにし、テントの中という特別な空間で、最初の練習よりも思い切って披露できたように思います。サーカスの最後は、12人みんなでリーダーの真似をするダンス。友だちが考えた動きをみんなで一緒に踊って、サーカスはおしまい。

アーティストから「うたでも、おどりでも、絵でも、何でもいいんだ。何か自分の得意なことを見つけて磨いてみてください。きっときれいになると思います」という挨拶と、みんなの音楽をCDでプレゼントして2日間のワークショップを終えました。
先生との振り返りでは、イメージがあることで動きも広がり、思ったより自己表現ができていた、絵からもイメージをつなげて表現していた、という感想や、「ひみつの時間」に自分たちでつくった特別な「ひみつのサーカス」のことを、人に話したい気持ちと秘密にしたいという気持ちの間で葛藤するのでは、というお話を伺いました。『おばけサーカス』の世界観を共有しながら、その中で一人ずついろんな表現を見せてくれた子どもたち。これから何でもできる可能性を秘めた子どもたちの中に、みんなでつくった「ひみつ」がいつまでも潜んでいられると良いなと思います。
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東山 佳永(とうやま かえ)/踊り手・美術家
http://www.children-art.net/touyamakae/

芸術家と子どもたちでは、小学校や保育園だけではなく、児童養護施設でのワークショップも実施しています。今回は、平成26年度に公益財団法人JKA「RING! RING! プロジェクト」の補助を受けて実施した取り組みをご紹介します。
児童養護施設のワークショップでは、施設の担当職員の方との打合せを密に行い、参加対象となる子どもたちの要望や実態を丁寧にヒアリングして実施を迎えます。ある施設では、自己表現や他者との関わりが苦手な小学生を中心に、身体を動かしながら自信を持って自分を表現することを楽しめるような活動を、という希望を受けて身体表現のワークショップを実施しました。実施期間は11月~3月に全10回、最終日には施設の職員の方などに向けて発表の機会を設けました。
最初は、アーティストの動きの真似などから始まったワークショップですが、それぞれの興味関心の違いや、参加することになった子どもたち同士の関係性を築くことにも時間がかかり、時にはワークが思うように進まないこともありました。
しかし、回数を重ねていくうちに、アーティストに対する子どもたちの信頼も深まり、子どもたち同士のコミュニケーションも豊かになっていきました。互いに身体の一部をくっつけたまま動物の形をみんなでつくってみたり、一人ひとりのアイデアを拾いながらリズムに合わせた振付を考えたりするなど、身体を介した他者とのふれあいや関わりを促すことで、参加している子どもたち同士の関係性が豊かになっていきました。
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また、側転や三点倒立など、子どもたちが得意なことや挑戦してみたいこともワークショップの中に取り入れ、それぞれの個性を発揮する場も設けました。中には、ワークショップ以外に普段の生活でも自主的に練習をするなどの意欲を見せる子もいて、その気持ちを受け止めながら、発表会を設けることにもしました。
発表会では、ワークショップで取り組んできた、視線を合わせたまま相手の動きを感じて即興的に踊ることや、それぞれが考えた振付のシーン、一人ひとりが得意技も織り交ぜてソロで踊るシーンなどで作品を構成しました。
大勢の人の前での発表に緊張や戸惑いもありましたが、終わった後に、大きな拍手と職員の方々からの感想など、たくさんの温かい反応を得て、子どもたちの満足そうな笑顔が見られました。また、発表を終えた後にも、普段の生活の中で職員の方と子どもたちがワークショップや発表のことを話題にするなど、施設内での職員と子どもたちとの関わりの面でも、子どもたちを褒める機会が広がったという声もありました。
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近年、児童養護施設における自立支援の拡充に向け、外部支援団体の支援活動なども多様化していますが、半年近い期間に継続して実施する芸術の分野からのアプローチはまだまだ未開拓の分野と言えます。しかし、ワークショップを実施した施設の方からは、継続実施を希望される声も多くいただきました。ダンスや音楽などの表現活動という新しい手法、今までとは違った視点で子どもの自尊感情や自己肯定感の育成に寄与できるよう、これからも事業の拡充につとめていきたいと思います。
※児童養護施設とは、保護者がいない、虐待を受けているなど、様々な家庭の事情により、家族と暮らせない子どもたちが生活する施設です。厚生労働省による2013年の調査では、入所児童の内、虐待を受けた経験のある子どもの割合は59.3%、何らかの障害のある児童は28.5%に上り、一人ひとりの特性に合った支援の充実が求められています。また、大学などへの進学率は22.9%と一般に比べて低く、自己肯定感をもって自分らしく生きる力を育むなど、自立支援の拡充も大きな課題となっています。
※公益財団法人JKA「RING!RING!プロジェクト」
http://www.ringring-keirin.jp/ 

当NPOでは、10日間前後のワークショプを行い、最終的に作品を発表するという取り組みも行っています。例年学芸会などに向けて実施することが多いのですが、今回は、6月の学校公開日に発表した4年生70人との取り組みをご紹介します。「自分で何かをつくり上げる経験がまだ少ない子どもたちに、苦労して考えてこそ、という作品をつくる難しさや楽しさを経験させたい」という先生からのリクエスト。アーティストは、セレノグラフィカ(ダンスカンパニー)の隅地茉歩さんと阿比留修一さんをお迎えして、9日間のワークショップを実施しました。
初めての出会いの日。子どもたちが体育館にやってくると、既に踊っているアーティストの姿が。二人は一言も話さず、そのままアーティストを囲んで鑑賞タイム。いつもとちょっと違う動きに思わず後ずさりする子もいますが、子どもたちに近づいたりふれ合ったり、何人かを誘い出して踊ったりするうちに、アーティストの世界に引き込まれていきました。その後の自己紹介では「たくさんびっくりして、笑って、初めての景色をみましょう」とアーティスト。まずは身近な歩くことから、ダンスが始まりました。狭い範囲でもぶつからないように歩いたり、「ストップ」の合図で片手や片足を挙げて止まったり、少しのルールを加えると色々な身体の動きが広がり始めました。
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2日目以降は、毎回ヨガのポーズでワークショップを開始。三日月のポーズ、立木のポーズ、ウサギのポーズなど、丁寧に呼吸を整えながら集中力を高めました。また、前半4日間はクラス毎に実施して、一人ひとりに向き合い様々な種類のワークを体験しながら、身体の可能性を探りました。「なぞなぞダンス」というワークでは、「カマキリの綱引き」「掃除するロボット」などのお題を身体で表してチームで当てっこ。相手の動きを鏡のように真似する「鏡の中のあなた」や、二人組で身体の一部に触れられたところからスルッと抜ける「さわってぬけて」などに取り組みました。

また、各ワークでクラスを半分に分けて互いに鑑賞する時間も設け、友だちのダンスを見合う時間も大切にしました。自分の名前に振り付けする「ネームダンス」では、一人ひとりが世界にたった一つのダンスをつくりました。一人だけで黙々と考える子、友だちと相談しながら考える子、先生の分まで考える子など、取り組み方は様々。出来上がったら全員で輪になって一斉に、また一人ひとりみんなの前で「ネームダンス」を披露。一人だと大きな声が出ず動きが小さくなる子もいますが、その緊張や恥ずかしさも含め見られることが貴重な体験になっているように感じました。

さて、後半5日目からは2クラス合同70人でのワークショップ。衣装(子どもたちが選んだ6色のTシャツ)を着ると子どもたちの気持ちも更に高まる様子。一方で、ワークショップも後半になると段々慣れてきて新鮮な気持ちが途切れる事も。そんなある日の始まりは、アーティストと体育館を縦横無尽に動き回ってとにかくいろんな動きを真似すること。賑やかな音楽にのって、なんだかセクシーな動きや顔の表情も豊かでどこか笑いを誘う面白い動きに、見ている子どもたちからも笑い声が。気持ちも新たに、いよいよ構成に入っていきました。

作品は、「花」「ロボットダンス①」「STOP&GO」「ネームダンス」「ロボットダンス②」「オクラホマミキサー」の6つのシーンから構成されました。どれも全員がワークショップの中で経験したものですが「花」「ロボットダンス」「ネームダンス」の3つは、子どもたち自身がどのシーンに出たいかを選び、「STOP&GO」とフォークダンスをアレンジした「オクラホマミキサー」は全員で踊りました。また、3つのシーンには出演せず全員のシーンだけに出演する選択肢もつくりました。全員が同じ時間同じように登場するより、一人ひとりの選択と責任に任せることで、一人ひとりのありのままが活かされたように思います。

そして迎えた9日目の本番。直前には目を閉じて隣の人と手をつなぎ、静かに理想の本番をイメージ。全校児童と保護者が見守る中、いよいよ開演です。「花」のシーンを選んだのは5人。両手を合わせて宙に好きな人の名前を丁寧に、ゆっくりと描きました。「ロボットダンス」は大人気だったので曲を2種類用意して2シーンに。曲を感じフロアを行き来しながらロボットになりきります。「STOP&GO」では、曲がストップする度に片手を挙げる、片足を挙げる、両足を挙げるなどのポーズでストップ。一人ひとりの身体から多様な形が生まれます。

「ネームダンス」は12名が登場。一人で自分のネームダンスを披露したら、全員でもう一度繰り返します。スポットライトを浴びて、飛んだり跳ねたり、面白い動きには会場から笑い声も。そして最後は全員で「オクラホマミキサー」。

2人組、4人組、8人組、同じTシャツの色、全員で、などなどアーティストの音頭に合わせて腕を組みながら軽快にステップ。後半は、歌詞を学校オリジナルにアレンジ。子どもたちに聞いた学校自慢を歌詞に織り込んで、「プールの床も動きます!」など元気よく歌いながら踊りました。最後はTシャツの色ごとにお客さんにご挨拶。9日間のいろいろな想いや経験を詰め込んだ本番を、無事終えることができました。

本番の後には、別の部屋で一人ひとり「ネームダンス」を披露してもらい、その後一言ずつ感想を聞きました。「緊張して手がつめたくなった」という子や「思ったより緊張せず楽しめた」などそれぞれの感じ方があった様子。9日間はあっという間に過ぎ去り別れはいつも名残惜しいですが、アーティストと出会い、ダンスに出会ったみんなが、それまで知らなかった気持ちや新たに見たかもしれない景色を抱えて、それぞれの毎日をまた元気に楽しく過ごしていると良いなと思います。
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セレノグラフィカ/ダンスカンパニー
http://www.children-art.net/selenographica/

保育園の5歳児クラスで行われた、東山佳永さん(踊り手・美術家)のワークショップをご紹介します。身体を動かすことが大好きな子どもたちと、身近にあるものも使いながら動と静の動きを楽しめるような活動を、というリクエスト。5歳児ということもあり、少し静かに考えたりイメージを膨らませたりする時間があっても良さそう、と先生。『しずくのぼうけん』(作:マリア・テルリコフスカ、絵:ボフダン・ブテンコ)という絵本をモチーフに、身体と音で物語の続きを表現するという内容が組み立てられました。アシスタントに音響デザイナーの白石和也さんをお迎えして、雨の季節にぴったりな、子どもたちとの2日間の冒険が始まったのです。

まずは、陶器でできた「しずく」のネックレスを纏ったアーティストによるパフォーマンスと、『しずくのぼうけん』の読み聞かせからワークショップがスタート。絵本は、バケツから飛び出した「しずく」が、クリーニング屋さんやお医者さんを訪ねたり、空へ行ったり雨や氷になって旅をする、水の循環がテーマの物語。
しかし、絵本は終わってしまっても「しずく」がどうなったのかが気になるところ。そこで「絵本の続きを考えてみよう」とアーティスト。みんなで輪になって「しずくしずく どこに消えた~♪」というワルツに乗せた歌に、簡単な振りをつけハンカチ落としゲームのようにしながら、しずくの行き先を考えました。「ほし」「やま」「うみ」など子どもが答えると、アーティストが言葉と絵で紙に残していきます。そして最後は「雨になって、水道を通って、家に帰ろう」という物語が出来上がりました。

物語の続きができたら、今度は「しずくの足音」をみんなでつくります。ペットボトルやジョウロ、霧吹き、ストロー、空き缶やアルミホイルなどアーティストが用意した道具も自由に使って、いろんな音を探します。コップの中に水を入れ、そこに物を落として音を出していた子は、落とす高さによる音の違いに気づいたり、「ポトポトって音がする~」「こんな音どうかな?」とアーティストに見つけた音を知らせたり、友だちと相談したり、賑やかに活動しながらささやかな音にも耳を傾けていました。みんなが作った足音はその場で録音し、たくさんの「しずくの足音」をたっぷり捕まえて1日目の活動を終えました。

2日目、この日は子どもたちみんなが「しずく」になって冒険をする日。まず、しずくになる準備のストレッチ。手足をぶらぶら、寝転がって三日月の形になったり、身体を小さく丸めてコロコロ床を転がったり、静かに身体をほぐしていきます。身体の準備ができたところで「しずくの形ってどんなの?」とアーティストが聞くと、先の尖った形や丸い形をつくり始める子どもたち。そのまま「水の中へ」「冷たくなって氷になるよ」「お日様で溶けるよ」「葉っぱの上をコロコロ~」という言葉からイメージを広げて、身体を動かしました。

その後、一度みんなで集まって、前回のみんなで考えた物語からアーティストがつくった歌を聞きました。しずくの行き先を考える時に歌った「しずくしずく どこへ消えた~♪」というフレーズに呼応する形で「すいどうとおるよ せんたくぐるぐる おひさまかわいた くもにあつまり あめになったら にじをわたって やまについた もりをたんけん はっぱころころ うみへきたよ ほしをゆめみる」(作:みんな と かえ と かずや)というとても素敵な一つの歌になっていたのです。

そして、いよいよしずくの冒険の始まりです。「すいどうとおるよ」では、3人組になり、2人で輪をつくってもう1人が輪をくぐり抜けます。「せんたくぐるぐる」では、1人でグルグル回ってもいいし、誰かに出会ったら腕を組んで一緒にぐるぐる。「キャーキャー」大興奮で洗濯されていました。「くもにあつまり」では、床にテープで描いた雲に全員で入って身体をくっつけます。ギューッと抱き合う子もいれば、そっと頭に指先をつけるなど、くっつき方も様々。雨になって雲をピョンピョン飛び出したら、リボンでつくった虹を一人ずつ渡ります。

虹を通って山に着いたら、5人組で山の形をつくり、海の中では一人ひとりが自分の思う海の動きを考えて部屋中を動き回りました。魚になっている子、手を広げて早くスイスイ進む子もいれば、「ハートの貝を見つけたよ」とアーティストに差し出す子も。そして、たくさん身体を動かした長い長い旅路は、星に辿りついてお休みの時間を迎えます。「流れ星流れた!」「地球が見えた」など、子どもたちには保育室からでも宇宙が見えている様子。それぞれの見ている景色の大きさと広がり、豊かさには本当に驚かされました。

再び朝が来て、しずくの家に戻ったら早速「もう一回やりたい!」という声が。歌や音をつけながら、もう一度みんなで旅をしてワークショップを終えました。最後にみんなでつくった「しずくのぼうけん」を小さな本にしてプレゼントすると、ポケットに大事そうにしまってくれました。
振り返りでは、子どもたちがワークショップを楽しみに待っていてくれたことや、保育園でも最近冒険をテーマに日々の活動に取り組んでいたので、自然なつながりの中でワークショップも楽しめたのでは、というお話を先生から伺いました。アーティストが決めた設定もありつつ、その中で一人ずつの世界を広げていった子どもたちの姿に「みんなの中に‘自分でつくれる’という感覚が残っていけば」とアーティスト。アーティストから生まれる動きや音に軽やかに反応しながら全身でそれらを吸収して、自分たちだけの物語を紡ぐことができる子どもたち。そんな彼らがつくる未来を楽しみにしたいです。
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東山 佳永(とうやま かえ)/踊り手・美術家
http://www.children-art.net/touyamakae/

保育園の4・5歳児クラスで行われた、城俊彦さん・伊藤知奈美さん(「Co.山田うん」ダンサー)のワークショップをご紹介します。体操や外遊び、鬼ごっこなど、身体を動かすことが大好きな子どもたちなので賑やかな身体表現活動をやってみたい、との先生からのリクエスト。どんどん新しい動きを経験したり、友だちとふれあったり、みんなの前で踊ってみたり、汗だくになりながら一人ひとりのダンスを探す2日間となりました。

1日目、最初は「おはようございます!」の挨拶から。少し緊張した面持ちの子どもたちでしたが、手を上へ伸ばすなど動作もつけながら「おはようございます」を繰り返し、身体をほぐして自然と大きな声が出るようになっていきました。そして、元気よく挨拶をした後は自己紹介。事前に先生には「ガムテープに好きな名前を考えて貼って下さい」とお願いしていたので、ワークショップの間はみんな一人ひとりの「ダンサー名」で呼ばれます。「ひゃくじゅうのおう」「はっぴー」「ぱいなっぷる」「ひこうき」「ぶるーきのこ」など、バラエティ豊かな名前を、一人ひとりアーティストが呼びながらハイタッチ。その度に繰り出されるアーティストの動きにも、子どもたちの活動への期待が高まっていき、動きもどんどん増えていきます。
みんなの名前を呼び終えたら「おはようございます」から「こんにちは」、「よ」、「は」と言葉遊びのように言葉をつなげて、それに合わせた様々な動きを真似します。ほっぺを叩いたり、お尻を叩いたり、「おにぎりの具はなあに?」という質問に「お肉!」「お魚!」と子どもたちが答えれば、それをその場で取り入れて動きにしてしまうアーティスト。いつもとちょっと違う不思議な動きを次々に真似して動いていたら、いつの間にかアーティストとの距離もぐっと縮まっていきました。

たくさんの動きを経験した後は、その場で好きなポーズをいくつか考えて「ピタッ」と静止。ポーズが決まったら音楽スタート!「ドレミの歌」や「幸せなら手をたたこう」など子どもたちにも馴染みのある曲がジャズ風にアレンジされた曲を使い、振付を真似しながら一緒に踊ります。子どもたちは時には歌を口ずさみながら、右へ左へ部屋中をアーティストと一緒にめいっぱい動き回ります。

たくさん身体を踊った後は静かな曲を聞きながら寝転がり、深呼吸や伸びをした後、自分の身体や一緒に踊ってくれた友だち、お部屋にも「ありがとうございました」の挨拶をして1日目を終えました。
2日目は、1日目とは違うダンサー名を考えた子もいたり、「今日は何する?」と聞けば「ダンスの日!」と元気よく答えてくれたり、子どもたちが活動にもアーティストにも慣れている様子が伺えました。早速動きを真似しながら身体を動かし、自由なポーズで止まったら、音楽が始まります。1日目に踊った曲も、2日目に初めて踊る曲も、みんなノリノリで、決まった振りだけでなく自由な部分も混ぜながら踊ってみました。

そして、一通り身体を動かした後は、一人ひとりのダンスの時間です。まずは、アーティストがみんなの前で一人のダンスを披露。「すごい!」「いろんな踊りが踊れるんだ!」「じょこす(アーティストのこの日の名前)頑張って!」など口々に感想や応援を始める子どもたち。アーティストのダンスに目は釘付けです。

そして、アーティストが子どもたちの側に近づいていくと、踊りたい気持ちでいっぱいになった子が一人、また一人と踊り始めます。いきなり一人で踊ることを躊躇う子も、アーティストや友だちの手をとって、自分なりのダンスを小さい身体でしっかりと踊ります。

全員が一通り踊り終わった後「もう一回踊りたい!」という子どもたちの声が。「踊りたい人は踊ります」とアーティストが言えば、あっという間に全員が世界にたった一人のダンサーになり、自分だけのダンスをあちらこちらで踊り始めました。1日目にはあまり活動に参加できなかった子がフッとみんなの中に入って踊っていたり、友だちと手を取り合い二人でダンスを考えていたり、のびやかに花開いた子どもたちの身体から生まれるダンスに心奪われました。
終了後の振り返りでは、5歳児クラスの子どもたちが、4歳児クラスのワークショップ中も「楽しみがなくなっちゃうから覗かない」と子どもたち同士で決めていたというエピソードや、「自由に表現する(動いていみる)面白さを味わえる良い経験になった」という感想をいただきました。
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Co.山田うん/ダンスカンパニー
http://www.children-art.net/co-yamadaun/

先日、日頃お世話になっているボランティアスタッフの方々への感謝のしるしとして、そしてまた、今後ボランティアをしたいと考えている方たちに、当NPOの活動とボランティア業務について、よりよく知っていただくための機会として、交流会とささやかなパーティを開催いたしました。学生の方や、お仕事終わりに駆けつけて下さった方など、年齢も職業も様々な方々が参加して下さいました。
第一部では、当NPOの全体の事業概要や、ボランティアさんにお願いする仕事内容、私たちが大切にしている想いなどを、映像やスライドを交えながら説明しました。実際のワークショップはどんな様子なのかを、実際にボランティアを経験されている方にも、エピソードを交えながらお話ししていただくなど、現場の雰囲気がなるべく伝わるようにしました。また、参加者の方にも自己紹介や、興味のある分野についてお話していただきました。

第二部では、隣の教室に移動してドリンクや軽食を用意して、スタッフに聞きたい事や参加者同士での情報交換など、ざっくばらんにお話して頂けるよう、グリグリという畑活動やえほんの会の写真をスライドショーで流しながら、リラックスした雰囲気で行いました。
ボランティア経験者の方が、現場の雰囲気や子どもたちの様子をより詳しくお話をして下さったり、参加された方が勉強、研究されている事など、いろいろなお話をお伺いすることができ、スタッフにとっても有意義な時間となりました。

事務局スタッフが少人数な事もあり、ボランティアの皆様のご協力があってこそ、活動が継続できることを改めて実感し感謝する一日となりました。
また、パーティーに参加された方で、早速6月から始まる保育園や幼稚園でのワークショップに申し込んで下さった方もいます。この日だけでは分からなかった事、伝わらなかった事など、また現場で皆様にお会いして交流を深めていけることを楽しみにしています!
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※この日も何回かご質問がありましたが、6~7月は幼稚園・保育園が主になり、8月(夏休み)は公共ホールでの舞台作品をつくる公募型ワークショップ、そして9月以降3月まで小学校・中学校(特別支援学級含む)でのワークショップが続く、というのが当NPOでの大まかな一年の流れとなっております。その都度メールマガジンでボランティア募集を行っておりますので、ご興味のある方は下記リンクより是非ご登録ください!
ボランティア募集→http://www.children-art.net/volunteer/

小学4年生61人と取り組んだ、水内貴英さん(美術家)のワークショップをご紹介します。「空間で遊び、楽しくコミュニケーションとりながら形ができていき、クラス全体で空間を大きく使った作品をつくりたい」という先生からのリクエスト。各クラス2日間、実際に作業できる時間は3時間弱という短い時間が課題でしたが、『フォールダウン・オブジェクト~一瞬の作品~』と題して、作品を落下させる事で一瞬だけ成立する作品を制作することになりました。
ワークショップの導入は、アーティストの自己紹介。「変な事を仕事にしています。」と挨拶した後、実際にどんな作品を作っているか作品を見せながら説明します。興味をもった子どもたちから「それ今日作るの?」「すごい!」などあちらこちらで声が聞こえます。アーティストは「つくるのも仕事だけど、思いつかないと作れない。思いつくのが大変。みんなも自分の創造力をいっぱい使って、面白いことを思いついてください。」とメッセージを送り、この日のワークショップの説明へとつなげました。

落下させる作品ということで、空中にくす玉のような装置を設置し、その中に、子どもたちが自由に制作した作品を仕込んで、最終的にはみんなで一斉に落下する瞬間を眺めるという内容です。装置の使い方や、材料の説明をした後は、一斉に作業に取り掛かりました。
子どもたちは、見本で見せたパラシュートや紙飛行機のつくり方をアーティストやスタッフに教わりながら発展させたり、材料からインスピレーションを得てどんどん新たな形を生み出していったり、迷うことなく手を動かし始めます。作ったものは各自自由に装置に仕込んで、実際にどんな風に落下するか試していきます。装置の扱いがなかなか難しいので、自然と何人かのグループになって作業を分担する子もいれば、自分の作りたいものを大切にして、落下させる時だけ手伝ってくれる人を交渉して見つけるなど、様々なやり方で制作を進めます。

スタッフが見ていると、「それは絶対失敗するなあ。」と思うような特大のパラシュートを作り始めた子が。実際に落下させてみると、やはり紐が長くて重すぎるため上手くパラシュートが開きませんでした。しかし、彼はそこで諦めることなく、工夫すべきて点をアーティストと相談しながら再チャレンジ。子どもたちは失敗を重ねる中でどうすれば成功するのか、装置はどのように使えば良いのか、次々に学んでいっている様子でした。そうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、納得できる結果が得られたグループもそうでないグループも一旦作業を終了。次回への期待を胸に挨拶をして学校を後にしました。

そして一週間後、2回目のワークショップは、装置の数を全員分に増やし、最後には一斉に落下させる時間を設けることを説明して作業に取り掛かりました。体育館に入って来た時からヒソヒソと何やら作戦を立てて話を聞くより作業をしたい気持ちが溢れていた子どもたち。この日も迷うことなく作業に取り掛かり、1回目とは違う事に挑戦したり、前回の内容をさらに工夫して発展させたりしがら、黙々と作業に入っていきました。

どんな風に見えるか何回も試してみたり、扱う素材を増やしてみたり、途中で糸が絡まったり装置が引っかかったりするなどのトラブルもちらほら見かけますが、大人も協力しながら、限られた時間の中でも力を尽くします。装置自体にも飾りを付け始める子や、垂れ幕のようなものを作ってメッセージを描いているグループ、プレゼントのようにラッピングする子など、様々な工夫が増えていきました。

そして最後は、いよいよ列毎に同時に落下させます。装置の準備を揃えるだけでも時間がかかりましたが、「私が持っていようか?」「ひっぱるのやっていいよ。」などお互いに協力し合いながら何とか設置完了。「5、4、3、2、1!」のカウントダウンで一斉に落下です!本当にほんの一瞬でしたが、キラキラした陽射しの中をフワフワと舞い散る作品に子どもたちからも歓声が。終わりの挨拶では「自分にしかできないことを考える。誰の真似もできなくなった時に、何もないところから考える。そういう事を思い出してくれたら嬉しいです。」とアーティスト。たくさんの創造力を秘めた子どもたちだったので、これからも面白くて楽しいことでいっぱいの毎日をつくってくれるといいなと思いました。
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水内貴英/美術家
http://www.children-art.net/mizuuchi_takahide/