都内の小学校・特別支援教室に通う子どもたちと取り組んだ、音楽ユニット すナマき(高橋牧さん・砂川佳代子さん)とのワークショップをご紹介します。
この教室に通っている子どもたちは、1~6年生まで全部で36人。4つのグループに分かれ、1人につき週に2コマずつ、個別や小グループで学習をしています。今回のワークショップも、普段の時間割通り、2コマ×4グループ(計2日間)で各グループ同じ内容を実施しました。
4グループそれぞれにカラーがあり、素敵な瞬間がありました。ここでは全てのグループの出来事を混ぜこぜに、ワークショップの流れに沿って、2日間のダイジェストとしてお伝えしたいと思います。
さあ、まもなく授業の開始時間。子どもたちが続々と教室に入ってきて、並べられた自分の椅子に座っていきます。リラックスしておしゃべりしている子もいれば、何が始まるんだろうとちょっと緊張した様子の子も。
先生から授業のあいさつと、すナマきさんの紹介をいただいた後、アーティストにバトンタッチ。「すナです」「マきです」「普段は、アコーディオンを弾いたり、クラリネットを吹いたり、曲をつくったりしています。今日は身の回りのものを使って、オリジナル楽器をつくりたいと思います」。
まずは自己紹介も兼ねたオリジナル曲の演奏から。「♪ミュウミュウ」とすナマきさんが歌うハーモニーが耳に心地よく、また「♪ミュウミュウ ミュミュミュ ミュウミュウミュウミュウ」という面白いリズムに銅鑼・太鼓・ハンドベルの音が相まって、可愛らしく不思議な世界観を味わいました。

続いて、どのグループでも盛り上がった「音あてクイズ」。どの素材を使って音を鳴らしているか、子どもたちが想像して答えます。子どもたちの目の前にあるのは、
・空き缶とストロー
・ティッシュ箱と輪ゴム
・スプーンと紙コップ
・空き缶と風船
・トイレットペーパーの芯
・ダンボールとひも
・クリアファイルと薄いフィルム
の7セット。

すナさんが説明している間に、ついたての後ろに隠れるマきさん。
さあ、どんな音が聴こえてくるかな?
「・・・♪~」
ほーのような、ふーのような、温かみのある音。音程の変化もあります。
子どもたちからは、「オカリナ?」「リコーダーとか、船の汽笛みたい」のつぶやきがちらほら。思わず前に飛び出して、素材を近くでみてみる子も。「どの素材だろう?響いてるなぁ」とみんな一生懸命、素材と音色とを結び付けて考えている様子です。
予想を聞くと、「トイレットペーパーの芯!」「缶とストロー」「風船?」など結構意見が割れました。
「正解はなんだろうね、マきちゃん出てきてくださ~い」のすナさんの声で登場したマきさんの手には、缶にストローをくっつけた吹く楽器が。

子どもたちからは、予想が当たって喜びの「ほぉ~!」、驚きの息交じりな「ほぉ~」、色々な「ほぉ~」の声があがりました。
特に子どもたちの反応が大きかったのが、「ダンボールとひも」でつくる楽器。
6パターンが出そろい、もう最後は「ダンボールとひも」だと答えが分かっていたけれど、♪ギュギュギュ~っという面白い大きな音が鳴ると、「思ってたのと違う!」と子どもたちから驚きの声。「あまりにびっくり!」とでも言うように、手と身体をブルブルと揺らす子もいました。
このギュギュギュ~の音、ライオンが吠える時のような音にも聞こえるし、ちょっぴりおならのようにも聞こえるしで、驚きがすぐに笑いに変わって、みんなでくすくす。

そんな和やかな雰囲気の中、クイズに出題されたオリジナル楽器を使って、すナマきさんの演奏タイム。
身の回りのもので出来た楽器で奏でられる演奏に、耳と目を集中させて聴く子どもたち。
子どもたちが普段耳にするようなPOPな音楽やリズミカルな音楽とはまた違う、不思議だけれど素朴で味わい深い音に聞き入ります。
最後の一音のあと、一呼吸してから「オーマイガッ」「エクセレント」の子どもたちの声に、思わずアーティストも先生もにこにこ。
「楽器づくりの前にもう一つ、クイズにも出てきたスプーン&紙コップを試してみよう」。
紙コップとスプーンを糸でつないだ楽器を一人ひとつ手に取り、スプーンを棒で叩くとトライアングルのようなきれいな音が響きます。子どもたちはアーティストが何も言わなくても、ひもを短くしてみたり叩く場所を変えてみたり…音色の探求が始まっていました。
変わり種で、魚焼き網のようなものも登場。叩くと、時計台のような音が。この面白さをシェアしたい!という気もちが伝わってくるようなキラキラした目で、先生の耳に紙コップを近づけたりしながら、夢中になって音を鳴らしていました。

音への好奇心がいっぱいになったところで、楽器づくりスタート!
実は2か月も前から学校で空き箱や空き缶を準備してくださっていて、充実したラインナップです。
クイズの中にも出てきた、
・箱ギター(ティッシュ箱と輪ゴム)
・ダンボールの楽器(ダンボールとひも)
・風船太鼓(空き缶と風船)
・カズー(クリアファイルと薄いフィルム)
から一人ひとり好きなものを選んでつくります。
箱ギターは、輪ゴムを弦のように貼ってつくります。音がよく鳴るように、タピオカストローをかませるのがミソ。
ダンボールの楽器は、ダンボールに穴をあけてひもを通し、濡れた布で引っ張ります。

カズーはクリアファイルを筒状にして薄いフィルムを張ります。声がフィルムに振動して、面白い音に変わります。
風船太鼓は、缶の切り口に風船を張ってテープでとめます。
この風船を張るのに一苦労。まず、風船をふぅっと膨らませてゴムを柔らかくした後で、吹き口をハサミで切って、一生懸命引っ張りながら缶に張っていきます。少しでも爪を立てると割れてしまうので、引っ張る塩梅がとても難しいのです。中には、何回か割れてしまった子もいたけれど、その度に肩を落としながら、もう一度挑戦。根気強く取り組んで完成したときの表情には達成感が伺えました。
1つつくったら、もう1つ。装飾にもこだわり、どんどん子どもたちの自由な発想で、楽器がカスタマイズされていきます。
ギターの弦にそれぞれ違う色を塗ってみる子。
弦を10本も張る子。
ピックもつくってみる子。
太鼓を組み合わせてドラムセットにする子。
丁寧に丁寧に装飾のテープを貼る子。
出来上がったものを持ち歩いて見せ合って、自然とセッションが生まれる瞬間もありました。

まだまだこだわりたいところだけれど、終わりの時間も迫ってきています。
みんなの顔や楽器を見やすいように椅子を並び直して、出来上がった一人ひとりのオリジナル楽器の音色を聞きました。こだわりポイントも紹介して、満足気な子どもたち。
最後に、アーティストのクラリネット&ウクレレによる「♪ゲゲゲの鬼太郎」に合わせて、つくった楽器を演奏。みんなで自由に演奏を楽しみました。

子どもたちに感想を聞くと、
「最初は難しかったけれど、聞いたり演奏したり楽しかった」「クイズがとっても楽しかった」「すごくきれいな音でうれしかった」「身近なものでも楽器がつくれるってすごい」「みんなでタイミングを合わせたり、楽器をつくったり、楽しいことがいっぱいあった」など一人ひとりの言葉で伝えてくれました。
終わりのあいさつをしてから、休み時間に残って装飾の続きをしていく子も。
先生方からは、「わっと驚いたり知的好奇心を刺激するような内容で、情緒面でも豊かな広がりがあったと思う」「思いもしない子が几帳面に楽器を装飾していたり、自由なことが苦手なタイプな子がいきいきしていたり、子どもたちの意外な姿があった」などの感想をいただきました。
今回、色々な音に触れ、身近な素材から楽器をつくって、フリーセッションを味わった子どもたち。「こんなものも楽器になる!」という新たな発見をこれからも楽しんでいってくれたらいいなと思います。
このワークショップは、花王ハートポケット倶楽部の協賛をいただいて実施しました。
