保育園の5歳児クラスで行われた、東山佳永さん(踊り手・美術家)のワークショップをご紹介します。身体を動かすことが大好きな子どもたちと、身近にあるものも使いながら動と静の動きを楽しめるような活動を、というリクエスト。5歳児ということもあり、少し静かに考えたりイメージを膨らませたりする時間があっても良さそう、と先生。『しずくのぼうけん』(作:マリア・テルリコフスカ、絵:ボフダン・ブテンコ)という絵本をモチーフに、身体と音で物語の続きを表現するという内容が組み立てられました。アシスタントに音響デザイナーの白石和也さんをお迎えして、雨の季節にぴったりな、子どもたちとの2日間の冒険が始まったのです。

まずは、陶器でできた「しずく」のネックレスを纏ったアーティストによるパフォーマンスと、『しずくのぼうけん』の読み聞かせからワークショップがスタート。絵本は、バケツから飛び出した「しずく」が、クリーニング屋さんやお医者さんを訪ねたり、空へ行ったり雨や氷になって旅をする、水の循環がテーマの物語。
しかし、絵本は終わってしまっても「しずく」がどうなったのかが気になるところ。そこで「絵本の続きを考えてみよう」とアーティスト。みんなで輪になって「しずくしずく どこに消えた~♪」というワルツに乗せた歌に、簡単な振りをつけハンカチ落としゲームのようにしながら、しずくの行き先を考えました。「ほし」「やま」「うみ」など子どもが答えると、アーティストが言葉と絵で紙に残していきます。そして最後は「雨になって、水道を通って、家に帰ろう」という物語が出来上がりました。

物語の続きができたら、今度は「しずくの足音」をみんなでつくります。ペットボトルやジョウロ、霧吹き、ストロー、空き缶やアルミホイルなどアーティストが用意した道具も自由に使って、いろんな音を探します。コップの中に水を入れ、そこに物を落として音を出していた子は、落とす高さによる音の違いに気づいたり、「ポトポトって音がする~」「こんな音どうかな?」とアーティストに見つけた音を知らせたり、友だちと相談したり、賑やかに活動しながらささやかな音にも耳を傾けていました。みんなが作った足音はその場で録音し、たくさんの「しずくの足音」をたっぷり捕まえて1日目の活動を終えました。

2日目、この日は子どもたちみんなが「しずく」になって冒険をする日。まず、しずくになる準備のストレッチ。手足をぶらぶら、寝転がって三日月の形になったり、身体を小さく丸めてコロコロ床を転がったり、静かに身体をほぐしていきます。身体の準備ができたところで「しずくの形ってどんなの?」とアーティストが聞くと、先の尖った形や丸い形をつくり始める子どもたち。そのまま「水の中へ」「冷たくなって氷になるよ」「お日様で溶けるよ」「葉っぱの上をコロコロ~」という言葉からイメージを広げて、身体を動かしました。

その後、一度みんなで集まって、前回のみんなで考えた物語からアーティストがつくった歌を聞きました。しずくの行き先を考える時に歌った「しずくしずく どこへ消えた~♪」というフレーズに呼応する形で「すいどうとおるよ せんたくぐるぐる おひさまかわいた くもにあつまり あめになったら にじをわたって やまについた もりをたんけん はっぱころころ うみへきたよ ほしをゆめみる」(作:みんな と かえ と かずや)というとても素敵な一つの歌になっていたのです。

そして、いよいよしずくの冒険の始まりです。「すいどうとおるよ」では、3人組になり、2人で輪をつくってもう1人が輪をくぐり抜けます。「せんたくぐるぐる」では、1人でグルグル回ってもいいし、誰かに出会ったら腕を組んで一緒にぐるぐる。「キャーキャー」大興奮で洗濯されていました。「くもにあつまり」では、床にテープで描いた雲に全員で入って身体をくっつけます。ギューッと抱き合う子もいれば、そっと頭に指先をつけるなど、くっつき方も様々。雨になって雲をピョンピョン飛び出したら、リボンでつくった虹を一人ずつ渡ります。

虹を通って山に着いたら、5人組で山の形をつくり、海の中では一人ひとりが自分の思う海の動きを考えて部屋中を動き回りました。魚になっている子、手を広げて早くスイスイ進む子もいれば、「ハートの貝を見つけたよ」とアーティストに差し出す子も。そして、たくさん身体を動かした長い長い旅路は、星に辿りついてお休みの時間を迎えます。「流れ星流れた!」「地球が見えた」など、子どもたちには保育室からでも宇宙が見えている様子。それぞれの見ている景色の大きさと広がり、豊かさには本当に驚かされました。

再び朝が来て、しずくの家に戻ったら早速「もう一回やりたい!」という声が。歌や音をつけながら、もう一度みんなで旅をしてワークショップを終えました。最後にみんなでつくった「しずくのぼうけん」を小さな本にしてプレゼントすると、ポケットに大事そうにしまってくれました。
振り返りでは、子どもたちがワークショップを楽しみに待っていてくれたことや、保育園でも最近冒険をテーマに日々の活動に取り組んでいたので、自然なつながりの中でワークショップも楽しめたのでは、というお話を先生から伺いました。アーティストが決めた設定もありつつ、その中で一人ずつの世界を広げていった子どもたちの姿に「みんなの中に‘自分でつくれる’という感覚が残っていけば」とアーティスト。アーティストから生まれる動きや音に軽やかに反応しながら全身でそれらを吸収して、自分たちだけの物語を紡ぐことができる子どもたち。そんな彼らがつくる未来を楽しみにしたいです。
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東山 佳永(とうやま かえ)/踊り手・美術家
http://www.children-art.net/touyamakae/

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