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コラムColumn

アートがつなぐ育ちの場 ~児童養護施設、こども食堂、ファミリーホームの交流ワークショップ~ vol.1

芸術家と子どもたちでは、「児童養護施設を拠点とした、インクルーシブな地域交流によるアートパフォーマンスの創作・発表を通じた子どもの育成活動」と題して、2018~2020年度の3年間、清瀬市内の児童養護施設を拠点に、子ども食堂、ファミリーホームの子どもたちとのプロジェクトを実施してきました。(助成:(公財)東京都福祉保健財団「子供が輝く東京・応援事業」)

このプロジェクトでは、2つの新しいことにチャレンジしてきました。

1つめは、多様な場にいる子どもたちとの活動

児童養護施設との関わりは10年ほど続けていますが、今回は、子ども食堂やファミリーホームなど、より多様な場所にいる子どもたちへもアプローチ。

2つめは、交流すること

2つの児童養護施設の交流や、子ども食堂、ファミリーホームなど様々な場にいる子どもたちが交流することで、何か生まれてくるものがあるのではないか。

そして、3年間のプロジェクトの締めくくりを前に、関わってくださったアーティスト、児童養護施設、子ども食堂、ファミリーホームのみなさんとオンライン(zoom)で振り返りと今後の課題などについて座談会を開催しました。今回のコラムでは、その様子を前半・後半に分けて掲載いたします。


■座談会概要

●実施日時:2021年2月7日(日)14:00~16:00
●実施場所:オンライン開催(zoom使用)
●登壇者
  アーティスト:棚川寛子(舞台音楽家)、新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
  児童養護施設:金子祐子(ベトレヘム学園 自立支援コーディネーター)
         角能秀美(子供の家 自立支援コーディネーター)
         長友麻里(子供の家 里親支援専門相談員)
  子ども食堂:福本麻紀(おひさまネットワーク)
  ファミリーホーム:鈴木ひとみ(ファミリーホームしろやま 養育者)
  事務局:堤康彦(芸術家と子どもたち 代表)
●進行:中西麻友(芸術家と子どもたち 事務局長)


■プロジェクトについて

2018年度「児童養護施設単体での実施」
児童養護施設のベトレヘム学園と子供の家それぞれで、アーティストの棚川寛子さんと、施設ごと単体でワークショップを始めました。

2019年度「地域への広がり」
ベトレヘム学園と子供の家の子どもたちが、両方の施設を行き来して交流しながら、棚川さんと活動をしました。並行して、おひさまネットワークにご協力いただき子ども食堂で、アーティストの新井英夫さんと活動を始めました。一方で、里親家庭にプロジェクトへの参加の働きかけをしました。

2020年度「交流の広がり」
ベトレヘム学園と子供の家では、引き続き交流しながら棚川さんと共に活動し、現在は、最後の作品発表に向けてみんなで準備をしています。
おひさまネットワークの子ども食堂では、引き続き新井さんと単体で活動を続け、一方、ファミリーホームしろやまの子どもたちとも新井さんとの単体での活動が始まりました。その後、おひさまネットワークとファミリーホームしろやまの子どもたちが、一つの場所(子供の家)に集まって、子供の家の子たちも交えて互いに交流し、新井さんと一緒に活動を続けています。
そして、「全ての子どもたちと」として、3月には、全員の子どもたちが一つの場所に集まって交流をする予定です。

また、3年間の活動の記録として、3月中に冊子を発行予定です。プロジェクトのより詳しい内容やドキュメントはそちらもご覧ください。(※リンク準備中。

※当初、発表とトークセッションを公開する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大や緊急事態宣言の発令に伴い、発表会を3月に延期、トークセッションは座談会としてコラムで公開する形にしました。


◆児童養護施設での活動(ベトレヘム学園、子供の家)

ー施設の外だと、なかなか場に入っていけない子も、みんなで参加だったので、知らない子とも一緒に好きなことができた

芸術家と子どもたち 中西麻友(以下、中西):これまでの活動を振り返ってみて、子どもたちの変化やワークショップの感想などをお伺いできたらと思います。

子供の家 角能秀美さん(以下、角能):子供の家と芸術家と子どもたちとは、(このプロジェクトより前から)7~8年ぐらい関わりがあるので、当たり前の活動になりつつあって。最初に参加していた子がもう高校生になって、成長まで見届けてもらっています。

中西:今回、ベトレヘム学園と交流するということで、子供の家のお子さんで、最初、交流に抵抗があった子がいましたね。

角能:そうですね。内弁慶だったり、外に出ることに不安が高い子がどうしても多いので、(他の施設の子と交流するという)未知のものとなると拒否感があったのかなって思います。一番年上の女の子は「下の子の面倒を自分が見なきゃいけない」という気持ちが強くて、さらに「他の施設の子も面倒を見なきゃいけないのか」っていう不安にもつながっていたみたいで。その辺は、事前に丁寧に話し合いの場をもうけてもらったので、何とか前向きに参加できたと思います。

アーティスト 棚川寛子さん(以下、棚川):彼女はね、とってもセンシティブで。「絶対にいや」って言いに来たから。そのあと、角能さんたちから事前にお話ししてくださっていたのもあって、気持ちが大分前向きになって。今では、普通に馴染んでるから、本当に良かったなぁって思っています。やっぱり、初めての事って、彼女みたいに年齢が高くなればなるほど、自分のテリトリーから出て、新しい扉を開くのはハードルがあるんだなぁって思って。他の子はそうでもなかったけど、彼女の印象は強烈にありますね。

ベトレヘム学園 金子祐子さん(以下、金子):うちの子も、すごく内弁慶で。学校も生活も同じメンバーで完結してしまう子が多いので、敵視するように「なんで子供の家に(交流に)行かなきゃいけないんだ」とか、初めてのことに対して「怖い」という気持ちから、「敵」だと感じてしまう子もいました。でも、始まってしまえば、「もうちょっと遠慮したら?」って思うぐらい、伸び伸びとはっちゃけていたので、あぁ、全然平気なんだなぁって思ったり。習い事などで、実際に施設の外に行こうとすると、なかなかその場に入っていけない子もいるんですが、今回はみんなで参加だったので、慣れた子とも知らない子とも一緒に好きなことができて、すごく成長したなって思います。

ある時、子供の家の男の子に、「ちゃんとやりたいんだけど、ベトレの子がちゃんとやってくれないから、何とか説得してほしい」って言われたことがあって。あぁ、この子は、自分だけがやればいいんじゃなくて、みんなでちゃんとやりたいんだっていう気持ちがあるんだなぁって思ってすごく感動したのを覚えています。

始めての交流は提灯づくりから(2019年度)

角能:確かに、「みんなでやっていかなきゃいけないんだ」っていう責任感を子どもたちは意外と持っているんだなぁって思いますね。

棚川:(作品のための)製作過程では、今、自分たちが何をやっているのかよくわかんないかもしれないけど、作品の練習を始めて、頭から順番にやって、それが形になって、お客さんが入って、本番を迎えて。そうやって人前でみんなと一緒に作品をやるという体験を一度してみると、言葉にならない達成感や、自分一人じゃ生まれない想像力や、いろんな人たちと一緒につくる面倒臭さの中の面白さにちょっとずつ気づいたりとか、一人じゃできないことなんだなっていうことが、わかってくるんじゃないかなぁと思います。

 

◆子ども食堂、ファミリーホームでの活動(おひさまネットワーク、ファミリーホームしろやま)

ーそれぞれの居場所の特性と、どういう出会い方が最善なのか

中西:子どもの居場所として、子ども食堂やファミリーホームの必要性が、今、高まっていると思います。子ども食堂(おひさまネットワーク)での子どもたちの反応や、福本さんご自身の感想やお考えなどありましたらお願いします。

おひさまネットワーク 福本麻紀さん(以下、福本):私たちの居場所は、木曜日は(シルバー人材センターの部屋を借りて)誰でも来ていいよっていう形で、いろんな子が出たり入ったりしている日で、金曜日は(子供の家の部屋を借りて)特定の子どもが来ているという子ども食堂です。人数が少ないということもあって、外部から人が来て一緒に何かをするというのは初めての経験でした。

最初の年(2019年度)の木曜日では、定着して来ている子たちの中にワークショップを導入するのは難しそうだなぁと思いました。その中でも低学年・中学年の数名の子が、新井さんの音楽の遊びを見ながらちょっとやってみたり、っていう感じでした。高学年になると、恥ずかしいのか、やりづらそうだったので、年齢層の特定が必要だなって感じました。

金曜日の活動で即興セッション(2019年度)

金曜日は、特定の子どもが来ていて、特に子ども家庭支援センターから紹介されて来ている要支援家庭のお子さんも多く参加しています。対人関係が苦手だったり、学校に行けていないお子さんが対象なので、ワークショップは難しいかなと思っていたんです。でも、場所と時間がみんなで共有できるので、新井さんが子どもたちの様子を見ながらさりげなく関心を引き付けていくうちに、みんなが楽器をさわることができたので、あぁ、すごいなぁって思いました。

今年度(2020年度)は、(新型コロナウイルス感染防止のため)私の家でやったんですが、場所も狭くなって対象人数も少ないので、すごく盛り上がりました。そのあと、場所を子供の家に移して(ファミリーホームしろやま、子供の家の子たちとの)交流になってからは、やっぱり他の子たちもいるし、場所が変わったということもあって、みんなが参加出来るっていう状況にはなれなかったし、私も目を配れなくて様子を把握できなくなったのが残念でした。

子どもたちは、馴染んだ人と一緒に楽しく過ごすことは、みんな大好きなんですけども、馴染んでない場所や人たちの中で何かをするのは非常に苦手なんです。じゃあ、なんで子どもたちは(ワークショップをしに)子供の家に行くのかなぁと考えると、「せっかく新井さんたちが来てくれるから行かなくちゃ」って、すごく気を遣っていて。自分たちが楽しむために行くっていう感じではないなぁと思いました。

ただ、私は、児童養護施設のお子さんと地域の子どもが一緒の場所を共有することを望んでいたので、その点に関しては、すごく良かったと思っていますし、その反対に、施設の子が地域に出向くことができたら、なお良かったなと思っています。

そのきっかけになったことは非常に良かったんだけども、地域の子ども食堂に行っている子にとっては、不自然な形での出会いで、これが継続した関係性にはならないので、地域で自然に児童養護施設の子どもと出会って関係性が広がっていくことに、私としては関心があります。

アーティスト 新井英夫さん(以下、新井):初めて福本さんの活動の場にお伺いした時に、木曜日と金曜日の雰囲気が全然違うなと感じました。木曜日は、昭和のおじさんの例えで言うと、駄菓子屋に集まっているいろんな子どもたちみたいな感じで、子ども同士で既に関係ができていて、その日にやりたいことがはっきりしているので、僕が行っても乗ってくれる子もいるけど、なかなか全員を巻き込むのは難しかったです。

金曜日は、毎回同じメンバーだったので、受け入れてくれるのかなぁと思ってたんですけど、案外大丈夫で、いつも来ている学生ボランティアに、ちょっと違うおじさんが来た、ぐらいな感じで。最初は一緒にご飯を食べさせてもらって、そのあと少しずつ、表現の活動ができるようになりました。

福本さん宅での影絵遊び(2020年度)

2020年度は、コロナのために福本さんのご自宅でワークショップをすることになって、どうなるのかな?と思ったんですが。何となく部屋の中で遊びが始まっていって、僕も子どもたちとボードゲームをしながら、その中にワークショップ的なことが自然に入っていって。音遊びや影絵など思ったよりいろんなことができたなっていう気がしています。

子どもたちが僕らの存在をどう認識しているのかわからないんですけど、ある男の子が僕らのことを「雑技団の人たち」って言ってくれたのが嬉しくて。楽器持ってきて、ちょっと変わった体の動きをしたり、やったことのない遊びを持って来てくれる人っていうふうに思ってくれたのかなと思います。

それで、正直言うと、今回すごくハードルが高くて、迷いながら迷いながらやっていたのが、交流のために、会場を子供の家に移してからの活動でした。やはり子どもたちは、場所が変わった段階で、ものすごく緊張していたり、異常にテンションが高かったり低かったりで。今日は違うところの子も来てるんだよって言った瞬間に、「じゃあ、僕帰る」って宣言して帰った子もいました。

福本さんのお宅で個別にやっていた時には参加できていた子が、交流の段階で場所を移るっていうことをプレッシャーに感じちゃったんだなって思って。なかなかそこに関しては解決策があるのかという事もわからず、ある意味、大人の都合で場所の設定を変えてしまったっていうのもあって、今でもちょっとモヤモヤとしているところです。

中西:そうですね。このプロジェクトが3年間で一旦区切りがきてしまうので、なんとか交流を始めなきゃいけないという大人の都合があって、私たちとしてもずっとひっかかっているんです。金曜日の子たちともっと丁寧に関係をつくってから、自然な感じで広げていけたら良かったなと思います。

 

ーファミリーホームの柔軟性のおかげで、別のグループホームにいるお姉さんとの交流の場にもなった

中西:ファミリーホーム(※)は、児童養護施設や子どもの居場所ともまた少し違う場所だと思いますが、ワークショップに参加した感想や子どもたちの様子を共有していただけますか。

ファミリーホームしろやま 鈴木ひとみさん(以下、鈴木):私は、二葉むさしが丘学園(児童養護施設)の職員だったんですが、法人がファミリーホームの開設をしてくれてから、今年で2~3年になります。二葉むさしが丘学園からうちのファミリーホームに移動して来たという子もいて、二葉むさしが丘学園時代に(芸術家と子どもたちの)ワークショップに参加して、新井さんともワークショップを経験したことがあったので、土台があって良かったなと思いました。

お姉さんも交えて身体遊び(2020年度)

まだファミリーホームを始めたばかりなので、「ファミリーホームらしさって何だろう?」「里親っぽさって何だろう?」と考えつつやっています。ある子のお姉さんが別のグループホームに入所していて、そのお姉さんもワークショップに参加できたら面白いんじゃないの?ということで、実際、それが実現できたのは、ファミリーホームの枠の緩さというか柔軟性があるからだと思いました。彼女たちはそれまで1年に1回会うか会わないかという家族だったので、月に1回のワークショップのおかげで、お互いに「お姉ちゃんって優しい人なんだな」「妹はこういうことをしているんだな」っていうことが知れて、すごく大事な交流の場にさせてもらいました。

また、新入所の子で、歌うことや詩を書くのが好きな子がいるんですが、彼女の特技を活かした活動もしていただけて。彼女も自分の歌や詩を取り上げてもらっているんだということに自信を持って発言していたので、すごくありがたいなと感じています。

(おひさまネットワークと子供の家の子たちとの)交流については、うちは全員女の子なので、ちょっとキャピキャピしててびっくりさせちゃったかなっていう気持ちもあったんですけど。ギターを弾いてくれた子供の家の男の子を、すごい羨望の眼差しで見ていたり、「私も弾けるようになりたい」って言ったり。そんなところは交流できていたなぁと思います。おひさまの子たちとも少しだけ交流できて、「あの子はクラスの〇〇君に似てるなぁ」って言っていました。うちの女の子たちも人見知りはするけれども、すごく閉じているって訳ではなかったので、場所や時間のタイミングが合えば、すごくいい交流になっていたのかなっていう印象があります。

ギター演奏に合わせてzoomで交流(2020年度)

新井:交流になって、リアルで回を重ねられたら良かったんですけど、コロナのため、今はzoomになって、さらに複雑になってしまいましたが、多分僕らの世代よりは、そういうのに慣れて楽しむ力も子どもたちにはあると思います。

ファミリーホームの女の子たちと子供の家の男の子がギターを弾いていた時の感じはね、なんですかね~、ティーンエイジャーの男女って感じで、ちょっと胸がキュンとしました。お互いに意識してるなぁ~、みたいな。(全員笑)

中西:そうですね。年齢層の幅があることで、年上の子が自然と小さい子の面倒を見てくれたり、小さい子が自然に甘えたりっていうこともありました。いろんな子がいるとそれだけで交流のきっかけや人の関係が生まれるのだなあと思いました。

※ファミリーホームとは:家庭環境を失ったこどもを里親や児童養護施設職員など経験豊かな養育者がその家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」。事業という言葉がつくが、あくまでも養育者の家庭の中で、5~6人の子どもを預かり、子ども同士の相互の交流を活かしながら、基本的な生活習慣を確立するとともに、豊かな人間性及び社会性を養い、将来自立した生活を営むために必要な知識及び経験を得ることに主要な目的がある。 (出展:日本ファミリーホーム協議会)

 

ー里親家庭へのアプローチと、生活が関係しているところに新しい活動を取り入れることの難しさ

中西:今回は実現できなかったのですが、最初はこのプロジェクトに里親家庭の子どもたちも参加して欲しいと考えていました。施設やファミリーホーム、子ども食堂に来ている子など、いろんな背景の子が、自然な形で交流する場をどうすればつくることができるのかというのが課題ですが、里親支援専門相談員をされている子供の家の長友さんの視点からお話をお伺いできますか。

子供の家 長友麻里さん(以下、長友):里親家庭の参加のしにくさということで言えば、里親家庭があちこちに点在していたり、お子さんの年齢層の幅が広すぎることなどがあります。施設だったら、そこで暮らしてるから、月に1回とか定例化しやすいけれども、里親さんのお子さんが月に1回集まる場合、場所の設定が難しいですね。それに、基本的にはその里親さんの家で暮らして、学校に行ったり習い事をしたりして生活が完結してるところに、ワークショップっていう新しい活動を取り入れることの難しさもあります。それを一つの家庭がやってもグループワークとして成り立たないので、全体でやるとなった時の難しさもありますね。もし、やる場合には、最初はイベント的な単発のワークショップをやって、「こういう活動をしているところがあるんだ」って知ってもらってからじゃないと先に進めないだろうし、その最初の単発のワークショップを始めること自体も、なかなか難しいと思います。なので、常に子どもが集まってる施設のような場所でワークショップをやる時に、里親さんのお子さんたちにも「来れる子は来てください」と声をかけても、なかなか集まりにくいっていうのはあるのかなと思いました。

中西:ありがとうございます。里親家庭の子どもたちのことも引き続き勉強していきたいなと思っています。

 

◆アートの有用性

ー自分が向いている場所が見つからない時に、一つの選択肢として表現をつくる場があること

芸術家と子どもたち 堤康彦(以下、堤):スポーツだと、既に施設間の交流は行われていますよね。ドッジボールとか野球とか。それと、このアーティストのワークショップでの交流の違いはどんなところだと思われますか。

衣装づくり、ダンス、お芝居を通じて交流が広がる(2019年度 撮影:伊藤華織)

角能:スポーツだとやっぱり、敵対というか、負けてなるものか、みたいなところはあると思います。今、子どもたちがこのワークショップで、「一緒に一つのものをつくり上げている」っていう意識がどれぐらいあるのかわかんないですけども、ある程度はあるのかなと思っていますし、意識しあっているような気はします。

新井:スポーツの場合、どうしても勝ち負けがあったりとか、ルールが結構厳しいですよね。それが向いている子、それで自分が発揮できる子はいいと思うんですね。だけど、なかなか自分が向いてる場所が見つからない時に、一つの選択肢として、こういう表現をつくる場っていうのがあってもいいって思います。

2020年度リハーサルの様子(撮影:伊藤華織)

棚川:みんなであーだこーだ言って作品をつくっている時には、ケンカしたり笑ったり、悩んだり、我慢したり、話を聞いたり、意見を言ったりすることを含めたコミュニケーションや対話のやり取りがそこには常に内包されているので、そこがスポーツとの違いだとすごく感じます。いろんなやり取りがあるっていうのは、とっても大きいと思います。失敗の経験や成功の経験も、作品をつくるという過程で一緒に味わっています。自分が出したアイデアを、褒めてもらったり取り入れてもらっているという経験も大きいし、逆に自分の意見が通らないという事や、ケンカをしたり折り合いをつけるという経験も、あの中で一緒にやってると思います。

(vol.2へ続く)


今回のプロジェクトを通して、それぞれの場にいる子どもたちの背景や、ニーズが異なり、それをふまえて交流することの意味や必要性を、引き続き考えていく必要があると思っています。まだまだ課題も多いですが、vol.2では、今後の可能性についてもお話ししていただきました。

 

記録・編集:広沢純子
写真:芸術家と子どもたち(クレジットの無い物)
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