MENU
前のページへ戻る

コラムColumn

にじいろのなかまたち 2019-2020 ~児童養護施設の交流ワークショップ~ vol.2 職員のこえ

にじいろのなかまたち 2019-2020

~児童養護施設の交流ワークショップ~

vol.2 職員のこえ

昨年度(2019年度)から、文化庁「障害者による文化芸術活動推進事業」の採択を受けて始まった、児童養護施設カルテット(さいたま市)と二葉むさしが丘学園(小平市)の2つの施設の子どもたちが、ダンスや音楽を通じて交流するワークショップ。
前回のコラムでは、ワークショップに参加している子どもたちに聞いた、ワークショップに参加した動機や、期待することなどを紹介しました。vol.2では、双方の施設職員の方々に伺ったインタビューをご紹介します。

吉田さん(zoom)、緒方さんへのインタビュー(2020年度)

>>ワークショップ概要、子どもたちへのインタビューを記載したvol.1の記事はこちらから


発表会でギターを弾く吉田さん(2019年度)

児童養護施設カルテット 吉田貴樹さん(以下、吉田):一年目とはメンバーがちょっと変わりましたね。新しく小学生3人が入ったことで大分雰囲気が変わりました。抜けちゃった子もいるので全体的な人数は今年のほうが少ないですけど、残っている子たちのほうが、去年よりも楽しんでいる感はすごくあるかな。
中西(芸術家と子どもたち):それは、慣れたというのもあるんですか?
吉田:継続して参加しているのは高校生たちだけなんですけど、小学生のほうが特にはまっているなぁって感じます。本来、やっぱり、あれぐらいの年齢層をターゲットにしたいんですけど、去年、いなかったんですよね、彼女たちぐらいの子が。ほとんどが、今年から入所した子たちです。今年は、小学生が元気で前向きな感じで、はまっているなって感じています。

一緒にワークに参加する緒方さん(2019年度)

 

二葉むさしが丘学園 緒方佑香さん(以下、緒方):去年からメンバーはちょっと減ったんですけど、のびのびさは変わりません。でも、今年はやっぱりzoomということで、去年の方が思いっきりやれていたのかなと、見ていて思います。でも、カルテットのメンバーを(zoomの画面で)見て、「あ、新しくなった!」「この人残ってる!」とか言っていて、喜んでいたりビックリしていたり、子どもたちのいろんな場面が見えて、今年は新しいメンバーともできるウキウキさと、「あ、この子と今度仲良くなれるかなぁ?」みたいなことも聞くので、そういう新しさもあるなぁと思います。

 

―オンライン(zoom)での子どもたちの反応や感じ方はどうですか?

照れながらも、カメラに近づいて一人ずつ自己紹介
(2020年度)

吉田:zoomはzoomでそれを楽しんでいるところはありますね。やりづらさはもちろんあるんですけど、zoomという技術自体を楽しんでやっているところがあります、良い意味で。それが面白くて来ているっていうのも一つあります。だから、子どもたちにとっては、今回のzoomはマイナスだけではなかったような気がします。
中西:それは、みんな映像のある生活に慣れているからですか?
吉田:というより、パソコンを通してリアルタイムでこういう電話みたいな、電話の画面付きっていうイメージが面白いんじゃないですかね。
(全員笑)
中西:そうですよね、カルテットの子たちって、あんまり画面から外れない感じがします。
吉田:そうですね、自分が見えるように陣取っているし、それで揉めそうになったりもしているし。(全員笑)そこを楽しんでいるところがありますね。多分、テレビで見ているアイドルみたいに、自分がテレビに映っていて、相手に見られているという意識はあるんじゃないですかね。

緒方:むさしが丘は、いつもとは違う、画面を通したワークショップというものに興味もあるとは思うんですけど、去年みたいにアーティストと実際に会って何かをするっていうことがないので、遠慮もすごいあるし、自分を思いっきり出せていない感じがあるのかなって思いました。去年は阿比留さん(アーティスト)にぎゅっと抱きついていたり、すごい積極的だった子も、今年は画面からちょっと離れたり、引き気味だったりとか、そういう部分も見えるので。
中西:確かにそうですね。何がどう違うんだろう。

何気ないふれあいが子どもたちの気持ちを後押しする(2019年度)

緒方:甘えたいのかなぁって。
吉田:こっちはそういう意味では、今年から入った小学生3人は去年を体験していないんですよ。このzoomから初めて参加していて、実際に港さんや阿比留さんたち(アーティスト)に会っていないので、これが普通みたいなところがあるのかもしれない。去年から参加している人たちは高校生なので、別に甘えたいとかそういうのはないと思うので。
(全員笑)

―コロナ禍で、オンラインでも実施を受け入れてくださったのはどうしてですか?

吉田:カルテット自体は、結構積極的に外部からのイベントの受け入れ体制があるので。それに、ずっと続けていらっしゃるものなので、わざわざ止めることはないかなという感じです。危ないことがない限りは、誰も「ノー」とは言わないと思います。
緒方:むさしが丘は、去年のワークショップが終わってから、参加していた子どもたちが「次、いつやるの?いつやれるの?」って会うたびに言ってきて。こんなに子どもたちがやりたいなら、コロナの現状だけど、どうにかしてできないかなぁと話し合って、やれるならやりたいねっていうことで。子どもの熱意が強くて。
中西:ありがとうございます。嬉しいです。

―お互いの施設に対しての印象や、職員さん同士の交流から得られたことはありますか?

休憩中の吉田さんとむさしが丘学園の子どもたち
(2019年度)

吉田:正直、今年はzoomなので、交流している感じがまだ少ないです。去年は、餅つき大会でむさしが丘に行かせてもらって、体育館が広いなぁとか、これだったら雨の日でも活動できるなぁとか、そういうことで勉強になりましたし、自分も面白かったなぁっていうのはありますね。今年はzoomなので、ただ引率して横にいるだけで、職員同士もほとんど関わっていないなぁという感じなので、今年に関しての新しい情報っていうのはないかな。
中西:特に、都道府県も違うさいたま市と小平市の施設の職員さんが、こうやって交流する機会というのは普段あまりないのでしょうか?
吉田:あまりないですね。勤務していることの方が多いので、外に出て誰かと交流するという機会は、研修とかに出ない限りは、元々少ないです。
中西:むさしが丘の子たちを見て、カルテットの子たちと違うなぁ、面白いなぁと思うところはありましたか?
吉田:あんまり変わらないんじゃないかなっていう気がします。ただ、カルテットの場合は、去年は小学生がいなくて、ほとんど高校生だったので、むさしが丘さんは、小学生が多くて、みんなが参加して積極的で元気があっていいなぁという印象でした。でも今年、小学生3人が入ってきたら、小学生低学年ってやっぱりこういうものなんだな、と思い直しています。年齢層の問題だったのかなぁっていう感じです。

みんなでつながって身体ほぐし(2019年度)

緒方:私自身も子どもたちも、去年初めてカルテットの方と交流させていただいて、実際に施設に行ったことで、今までそういう交流や他施設に行くことがなかったので、子どもにとっても自分にとっても新鮮で、良い経験になりました。
去年はカルテットの子たちは大きい子が多かったので、むさしが丘のちっちゃい子たちをすごく面倒見てくれて。言葉がけとか、対応も優しかったし。それは子どもたちも言ってたんですけど、「こういうことをしてもらった~」とか「この子がこうでね~」って。そこが…何だろうなぁ、他施設に行くっていう新鮮さと、カルテットの大きい子たちが下の子を温かい目で支えながら一緒に楽しんで見てくれたのが去年はすごく印象に残りました。
今年は、カルテットの小学生が多くてビックリして、その子たちもすごいキャラが強いなぁって思って。(笑)もし実際に一緒に交流できたら、小学生同士もっと仲良くなれるかなぁとか。今はちょっと無理ですけど、会ってみたいなぁって思います。

―今後もいろいろステップアップしながら引き続き事業を続けていきたいと思いますが、要望や期待することはありますか?

zoomで教わりながらピアニカを弾く子どもたち(zoom画面)

吉田:ピアニカで演奏することに小学生の3人がすごくはまっていて、それで本当に弾けるようになったので、こっちの子たちは楽器演奏が好きだなっていう印象があります。やるからにはバンドみたいな形か何か発表会みたいな感じのものをやってみたい。去年、音楽も入ったダンスの発表をしましたけど、そういう発表の場をできたらいいなぁと、それに向けての曲づくりから楽器練習みたいなことをやれるといいなぁと思います。(アーティストさんに)来て、遊んでもらうことより、もう少し上に行って、技術習得みたいなこと、楽器が弾けるようになったとか、成功したよ、できたよっていうのを増やしたいなぁと。

一人ひとりのアイデアからダンスをつくる(2020年度)

緒方:むさしが丘の子たちも、すごく元気に参加してくれているんですけど、去年できなかった楽器を演奏することをやれたら、もっとステップアップもできるし、自分を出すことにもつながるし、良い体験になるのかなぁって思います。結果として去年みたいに、発表っていう形にすると、子どもにも「あぁ、ここまでがんばれたんだ」「これはこういう意味があったんだ」ってつながると思うので、最終的にそういう形にして子どもたちに何かしら残せるといいなぁ、残してあげたいなぁって思います。

中西:改めてお話を聞くと、なるほどと思うところもあって、これを参考にしながら、今後の作戦も練って、またいろいろとご相談したいなあと思います。本当にありがとうございました。


ワークショップの実施には、施設職員の皆さんの協力が欠かせません。今回お話を聞いたお二人以外にも、たくさんの職員の方々が子どもたちをワークショップの日に送り出してくれたり、発表を見てくれたり、様々な形で子どもたちたちのことを見守ってくださっています。子どもたちと日々の生活を共にし、育ちを支えるという多忙な毎日にもかかわらず、ワークショップに一緒に参加して子どもたちと共に楽しみながら場をつくってくださること、この場を借りて、改めてお礼申し上げます。
今年度の事業は2月まで続きます。子どもたちや職員の方々の声に応えながら、アーティストと一緒に、オンラインでできることや、現地実施の可能性を引き続き検討していきたいと思います。

写真:保手濱歌織(2019年度)、伊藤華織(2020年度)
編集:広沢純子
インタビュー日:2020年12月13日
インタビュアー:中西麻友(芸術家と子どもたち 事務局長)
※無断転載・複製を禁ず。