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「ダイナミックな造形を子どもたちに体験させたい」という要望を幼稚園より受けて、美術家・山添joseph勇さんによる造形ワークショップが開催されました。全2日間行われたワークショップの2日目、5歳クラスの様子をレポートします。
朝9時半。園のホールに集まった子どもたちは14人。お休みの子がいたので、ちょっと少なめです。ホールには大きなケースにびっしりつまったたくさんのせんたくばさみ。そして大きなモニターには、色々な形をした、色とりどりのせんたくばさみが次々に映し出されていています。
「おはようございます」と話を切り出した山添さん。「今日は何も用意していないけど、せんたくばさみをたくさん持ってきました。何かを作らなくてもいいので(壁面状の空間に)くっつけたり、服や体につけたりして遊んでみてください」
それだけ子どもたちに伝えると、まず5分くらい、モニターに映し出したせんたくばさみを眺めていてもらいました。普段見慣れているせんたくばさみのはずなのに、形も色も、こんなに色々あることに子どもたちは早くも気づいた様子。「これはフランスのだよ」と山添さんが言うと「えーー?!」と驚きの声。今日は面白いことになりそうと、子どもたちも予感がしたようです。
「じゃあはじめよう」という一声で子どもたちは一斉にせんたくばさみの周りへ集まりました。赤、白、黄色、みどり、ピンク、青、半透明のものなどだいたいの色ごとにわかれていますがそれぞれの色のなかにも微妙な色違いがあるので、全部で200色くらいあるとのこと。奥の深い色彩と、多種多様な形の洪水には、圧倒されるインパクトがあります。子どもたちは、さっそく手にとってつなげてみたり、服や髪の毛につけてみたり、壁面のように無色透明のビニールを張った空間に挟んで遊んだり、大中小のサイズがそろったせんたくばさみを家族に見立てて、即興で物語を語ってみたり、自分一人の空間をとって、ひたすら何かをつくろうとしたり。本当に色々なことをして遊びはじめました。どうしたらいいかわからなくてぼーっとしちゃう子は一人もいなくて、みんなどんどん手を動かしてはせんたくばさみで何かしようとしているのが気持ちいいくらいでした。
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せんたくばさみという、つなげるのも切り離すのも、子どもが簡単に扱うことのできる非常にシンプルなツールゆえ、広がりは無限で、時間の経過とともに変わりゆく子どもたちのせんたくばさみとの関わり方は見ていてとても興味深いものがありました。個人の作業がグループ作業に変わったり、一度やりきったものを全部壊してまったく違う新しいものを創りだそうとしたり、個人の作業が終わったからと、友だちのためにせんたくばさみを集める作業をすることにしたり、どこまでもひたすらつなぎ続けていたり・・・。山添さんが「あと10分くらいで片付けの時間だよ」というまでは、この遊びはエンドレスに続くのではないかと思われるほど、子どもたちは夢中になってせんたくばさみと向き合っていました。
最後は、作ったものも、つなげたものも全部崩し、あちこちに散らばったせんたくばさみをかき集めて、色ごとに元のケースに納めておしまいとなりました。作っていく作業と片付ける作業は、目的も意味も異なるものですが、色の美しさのせいか、どちらもとても創造的な作業に感じたのは私だけでしょうか。
ワークショップに参加した先生たちも、せんたくばさみの奥深さを実感してくれて、これからは園の遊びに取り入れたいと前向きな感想をいただくことができました。
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山添 joseph 勇(美術家・深沢アート研究所代表)
https://www.children-art.net/yamazoe_joseph_isamu/
★せんたくばさみ会議 https://pegs.exblog.jp/