師走初日の寒い日に、勝部ち子さんによるからだあそびワークショップが開催されました。
勝部さん 「今日は雨で寒いですが、みんな元気ですか?雨とか、寒いとか、みんなには関係ないか?!」
子どもたち 「かんけいなーい!」
今日も元気な声がホールに響きました。勝部さんがこの園に来るのはちょうど1週間ぶりです。
前回と同様、アシスタントのしょうこさんと一緒に来園し、この日もまず最初はみんなの名前を呼び合うことから始めました。大きな輪になって座り、「○○ちゃーん(くん)」とみんなで一斉に一人ずつ名前を呼びます。名前を呼ばれた子はちょっぴりはにかんでみたり、ポーズを決めてみたり。先生の名前ももちろん呼びます。勝部さんとしょうこさんも「ちこちゃーん」「しょうちゃーん」と、子どもたちと同じように呼んでもらいます。ちょっとしたことだけど、こうして一人ひとりの名前を大きな声で呼び合うことで、前回はお休みだった子も、ここで顔と名前を覚えてもらえたり、その場にいるみんなの気持ちがほぐれ、これから一緒にからだあそびをしようね、という一体感がでてくるのです。
紹介の後、まずは少しウォーミングアップしました。
勝部さんが幼児を対象に行うワークの中に、「ネコ」という名前のものがあるのですが、それは四つん這いになり、二人同時にゴロンと一回りしてからジャンプするというものです。着地するときは足音がたたないようにするのが「ネコみたい」ということで「ネコ」と呼んでいます。日頃からよく身体を動かしていると思われるこの園の子どもたちは、あそびの飲み込みが早く、静かに着地するジャンプも、とてもうまく飛ぶことができました。
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このあそびを紹介するとき、勝部さんが子どもたちに、「この動きは何を表現していると思う?」と聞いたところ、子どもたちからは、「うさぎ」「カメ」など色々な答えが返ってきました。勝部さんとしょうこさんが 「そうだね。それもあるね。」とどれも受け入れるように返事をしていると、一人の女の子が 「ほんとはどれが正解なの?」 と聞いたそうです。しょうこさんが 「どれも正解だよ」 と言うと、その女の子は少しきょとんとした顔をしていたそうです。
勝部さんのワークショップは、いつも子どもたちの年齢に見合ったワークを用意して来てくれますが、現場で子どもたちから出てくるアイディアを時には受け入れ、柔軟にシフトしていくこともあります。「こうしなくちゃいけないというのはない」 そのコンセプトが「ネコ」の件に如実に表れていましたが、きっと子どもたちは、知らず知らずのうちに今日のワークショップそのものが 「こうしなくちゃいけないというのはない」 のだということに気づいて行ったのではないでしょうか。
さて、いろいろな面白いからだあそびを取り入れたウォーミングアップが終わると、前回のワークショップで約束した「海」に行くことになりました。この「海」は勝部さんのワークの中で大人気のものです。
勝部さん 「これから海に行きたいと思います。今日は沖縄に行きます!」
子ども 「なんきょくがいいー!」 
なぜか「なんきょく」の大合唱が子どもたちがわきあがりました。
・・・しばらくたって・・・
しょうこさん 「今日行く海が決まりました。なんきょくです!」
子どもたち 「わーーーーい!!」 
子どもたちはおおはしゃぎでした。南極ブームなのでしょうか?理由はわかりませんが、南極行きが決まりました。
飛行機に乗ったあそびを通して南極に着くと、4人1組で波乗りをしました。横一列に3人が寝転がり、その上に一人が横たわります。下の3人がごろごろと転がると、上に乗った子も一緒に転がって、まるで海で波乗りをしているみたいなのです。これは”みんなで息を合わせて″転がることが大事で、お互いが相手の動きを感じ取りながら動くこと、動きながら友だちの身体にケアすることが必要な、実はちょっと高度な動きです。前回2人1組でやったことが活きて、今日はみんなとてもうまく波乗りができていましたが、中にはちょっと勝部さんに指導してもらいながらできたというグループもありました。
最後のワークは、海でつかまえた魚が体に入ってしまった!というあそびです。身体の中に魚が入ったらどんなことになるでしょう?そんなことをイメージして動くと、なんだか踊っているみたいになりました。魚はしょうこさんから勝部さんへ、勝部さんから先生へ、先生から子どもへとだんだんと移っていきます。魚が入ってしまった人は、手足や腰をゆらゆらさせて動きます。その動きがおもしろいのか、魚がはいっちゃった!というイメージがもうできているのか、子どもたちは大興奮で 「いつ自分のところに魚がくるだろう!」 という期待をもちながら待っています。待ちきれない子は飛びはねたり、奇声をあげたりして待っていました!子どもたちに魚がやってくると、待ちきれない子たちがみんな踊りだして、すごいエネルギーがさく裂しました。
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自己表現をしたい子たちが多いんだなぁ、とスタッフは感心したのですが、あとで聞いたら「大人しくて自分を出すのが苦手な子が多いんです」とのこと。え?!スタッフも、勝部さんもしょうこさんも、唖然としてしまいましたが、今日の 「こうしなくちゃいけないというのはない」 という雰囲気を感じ取って、子どもたちが表現できたのではないかと先生たちは受け取られたようです。自然に引き出された子どもの感覚に出会えた時間だったのですね。あとからしみじみとワークショップの力を実感させられました。
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勝部 ちこ(かつべ ちこ)/ダンサー・インプロバイザー
https://www.children-art.net/katsube_chiko/