朝日新聞の日曜教育面のコラム「あめはれくもり」にて、芸術家の子どもたちの活動の中で出会った子どもたちの姿を、9月23日より4回シリーズで連載しています。
このブログ内ではあまりお伝えできていなかったエイジアス(学校にアーティストが出かけ、先生と協力しながらワークショップ型授業を行う)の風景をご紹介できれば、と思います。
以下、掲載コラムの転載です。
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朝日新聞 2007年9月23日朝刊 25面 「あめはれくもり」
「子ども+芸術家=?」 堤康彦
「とんぼざくら」
このまちのおすすめスポットを尋ねた観光客役のスタッフに、小学6年生の男の子が答えた。「えっ、なにそれ?」。話を聞くと、団地の公園に夕方とんぼがたくさん集まり、夕日にあたって金色の桜のように見える。その風景を彼が名づけたのだという。
昨年11月、東京都練馬区内の小学校で行った、美術家・岩井成昭さんのワークショップでの一場面だ。テーマは「ツーリストインフォメーションセンターをつくる」。小学校は大規模団地にあり観光地ではないが、もし旅行者がきたら、自分のまちの魅力をどのように伝え表現するか。子どもたちは、自分なりの視点でまちを見直し、物語にしたり、造形作品にしたり、粘土を使ったクレイアニメにしたりした。
ワークショップ型の授業を提供する活動「エイジアス」を私が始めたのは7年前だ。音楽、ダンス、美術、演劇など様々な分野の現代芸術家を小学校に派遣し、先生と協力して授業をつくる。いまの社会を強く意識しながら、新しい価値や表現を生み出す創造のプロフェッショナルである芸術家。彼らが子どもたちに出会うとき、毎回様々な化学反応が起き、子どもたちは得がたい何かを学ぶ。
少子化や情報化などで大きく変化する現代社会で、子どもにとって切実に必要な学びは何なのか。私はそれは、アートによる学びであり、創造的な教育であると確信している

◇つつみ・やすひこ 10年間のサラリーマン生活を経て、01年にNPO法人「芸術家と子どもたち」を設立。42歳。