小学校の特別支援学級で取り組んだ、上村なおかさん(ダンサー・振付家)によるワークショップをご紹介します。昨年度は美術家のアーティストとワークショップを実施した学校ですが、「ゲストが来て何か楽しいことをしてくれた」という体験を継続していきたい、という先生からのリクエスト。今年はダンスや音楽を使って自由にのびのびと表現活動を楽しめるようにということで、友だちと関わったり、普段動かしてない動きを経験したりするような内容に取り組むことになりました。アシスタントにはダンサーの戸川悠野さんをお迎えして、3日間実施した中から2~3日目の様子をお伝えします。

まずは2日目。ワークショップの始まりは身体をほぐすところから。足の先をマッサージしたり、肘、お腹、と身体の部分を一つずつ触ったりつまんだりして感触を確かめ、色々な触り方で自分の身体を労わるようにしてくまなく全身にふれました。続いては二人組のワーク。一人が寝転んで、もう一人が手を差し出した所へ順に足を伸ばして触れていきます。アーティストが見本を見せた後に早速やってみると、上下左右あちらこちらへ差し出される手によって、様々な身体の形が生まれると同時に、相手が届かない所へは差し出さないという自然な優しさも見られました。そうしてだいぶ身体がほぐれたら、次はタンバリンの音に合わせて「シャラララ」と鳴っている時は動いて移動、「パン!」の合図でピタッと静止するワークへ。移動はただの移動ではなく、アシスタントの方へ向かって好きな動きを考えながら進みます。6年生の男の子がスーパースローでゆっくりゆっくり時間をかけて歩く様をアーティストが取り上げ、みんなでその足の動きを観察しました。止まる時は相手にそっと触れて止まります。相手が痛くないように、自分の身体が気持ち良いようにしながら、ゆっくり動く難しさも感じて身体の感覚が開かれていくようでした。
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その後は、教室に青と黄色のビニールテープを交互に一直線に貼り、その上を一人ずつ歩きました。青はゆっくり、黄色は速く、また青になったらゆっくり歩きます。速い遅いも一人ずつ違ったスピードがあります。あっという間に端までたどり着く子、じっくりじっくり少しずつ歩を進める子など、一人ひとりの違いをアーティストが認めながら、息を呑むような静かなソロダンスが続きました。最後には、ビニールテープをあちこちに貼って、音楽をかけながら自由にテープとテープの間を移動、色のルールはそのままに全員で踊る時間です。細いテープの上に同時に何人か集まってギュウギュウになる時もありますが上手く譲り合ったり関わり合ったりして、最後の最後は「今日の形!」でポーズを決めて終えました。
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最終回となる3日目は場所を変えて体育館での実施。校庭に雪の残る寒い日でしたが、広々とした環境の中でたくさん身体を動かす事ができました。最初の身体ほぐしは、お尻だけ床に付けてクルクルと回ったり、全身をブラブラさせてジャンプをしたり、足を開いたり閉じたり、これまでと同じように丁寧に自分の身体に向き合っていきます。続いては、差し込む陽の光を利用して、日向を海に見立てて魚になって動いてみました。アーティストがトーンチャイムを鳴らしながら「いろんな泳ぎ方考えていいよ」と言えば、「ホオジロザメになる」など口々に言いながら、床は冷たいのにニコニコと嬉しそうにそれぞれのイメージを広げていました。
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その後は、体育館に元からある色の線を利用してのワークです。子どもたちにもアイデアを聞いて、赤は「クルクル回る」、白は「滑る」、青は「ブルーなのでブルブル(学校でダジャレが盛んな事を発見したアーティストのアイデア)」、黄色は「カチンコチンで形を決めて止まる」、緑は「ゆっくりと森の生き物になって動く」というルールを一色ずつ確認しながら取り組みました。もちろん全てのルールをアーティストが指定する事もできましたが、この日の子どもたちの様子を見てアイデアを出してもらう事に。結果的に自分たちが決めたルールということも、取り組みへの意欲を高めたようでした。
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アーティストは、色ごとにタンバリン、鈴、マラカス、トライアングル、トーンチャイムと楽器でその場で音を付けながら、面白い動きを認めたり一緒に動いてみたり、子どもたちの表現を広げる環境を作っていきました。子どもたちは色ごとに違う動きにもしっかり反応して、線の上で渋滞になっても喧嘩したりはせずすっと避けたり、出会った友だちと一緒に動いてみたり、様々な関係性も垣間見えました。

その後は一人のダンスの時間。体育館の真ん中を端から端まで「途中にあるポール立ての銀色の蓋の上はジャンプして、それ以外は自由!」と説明してスタート。やりたい子が次々に手を挙げました。かなりの距離ですが、堂々と前を見つめ床を見つめ、くるくると、しっとりと、軽快に、そして時に戸惑いながら一人ひとりのダンスを披露、順番を待つ子どもたちも静かに見守ります。全員が終わってもまだ踊り足りない様子で、「2回目も良いよ」とアーティストから声がかかると、一人ずつではなく次々と前へ進み、そのまま全員でのダンスへ突入。再び一通り色の動きをした後は、一曲分の自由ダンス。広いと思った体育館が狭く感じる程、子どもたちの身体が空間を清々しく埋めていきのびやかに表現する姿に見とれているうち、あっと言う間に終了の時間となりました。
最後の振り返りでは、「見所がちょこちょこあって、みんな音の変化も良く聞いていた。視聴覚室で実施した前回までの経験が残っていて、体育館へと場所が広くなったことで、みんなの中でも表現が広がっていた」とアーティスト。先生からは、「普段ダンスというと運動会行事など決まった動きのものになり、そうすると“できない”“他の子と一緒の動きにならない”などとなってしまうが、ワークショップを通して創作する楽しみを学ぶことができたと思う」との感想をいただきました。毎回先生たちもワークショップに一緒に参加して下さって、子どもたちの変化を丁寧に拾いながら細やかにサポートしていただけた事も、子どもたちがのびのびと安心して表現出来るあたたかい環境につながっていて、子どもたちや先生との再会ができたことを心から嬉しく思いました。
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上村なおか/ダンサー・振付家
http://www.children-art.net/uemura_naoka/

2学期は、学芸会や音楽会などの行事に関わるワークショップの依頼も多くなります。その中で、学習発表会に向けて『ユタと不思議な仲間たち』という物語に取り組んだ、小学5年生57人とのワークショップを紹介します。東京育ちのユタが両親を亡くして東北の学校へ転校。座敷童との出会いによってたくましく成長していくお話です。
アーティストは、通称「なにわのコレオグラファーしげやん」こと、北村成美さん(振付家・ダンサー)。今回は、発表日を含めて全6日間しかないので、台詞の指導などは先生が担当、アーティストは身体表現を取り入れた、オープニング、座敷童が自己紹介をする場面、座敷童とユタが乾杯する場面、そして最後に座敷童が旅立ち「友達はいいもんだ」を歌うエンディングの4つのシーンを主に担当することになりました。
さて、初日は「全員の顔が見えて、全員に顔を見せられる場所に3秒で移動してください。答えを人に言わない。」と、いきなりアーティストの問題から始まりました。「1、2、3!」の掛け声で、戸惑いながらも一応正解と思う場所へ移動する子どもたち。最初はみんな舞台に上がってしまい、「それみんなの顔見えてる?」とアーティストは一蹴。「1、2、3!」とできるまでやり直します。そのうち、子どもの中から「円になったらいいんじゃない?」という囁き声が。次第に円が出来てきたところで、「みんなの顔が見えてるなら合図なしで出来るはず。」と、無言でタイミングを合わせて移動、アーティストへの集中力、呼吸がぐっと一点に集まっていきました。
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円が形になってきたところで、そのまま無言でアーティストがいろいろな動きを始めると、アーティストを見つめていた子どもたちが何も言わずにその真似を始めます。床を叩いたり、回転したり、寝そべったり、時に「シュッ」「ハッ」と声も出しながら、様々な動きを真似します。
そうして開始から30分ほどたった頃、真似の動きの流れで正座をして、呼吸を合わせて「よろしくお願いします!!」と挨拶したところで、改めてアーティストが自己紹介と説明をしました。これからのワークショップについて「みなさんに対してもプロと同じようにやります。ただちょっと根気がない。」と叱咤。改めて真似の動きをしてもらい、アーティストの動きを見てから真似をすると、動きにズレが生じることを気づかせます。では、「見る」とはどういうことか。おもむろに男の子を円の中心に連れ出し即興で踊るアーティスト。踊り終えると「分かった?」「ハイ、二人か三人でどうぞ!」と全員に向かって投げかけます。二人組で何をするか言葉での説明は一切ないので「えっ?」と言いながらも、相手を見つけて何やら動き出す子どもたち。対面するという関係性、気分を合わせる、ということを体験するため、何パターンか二人組の動きを繰り返し「これは遊びじゃないねん。全身で見るからお客さんも見る。」と語りかけると、アーティストが見本を見せる時の子どもの静けさも増していきました。言葉で説明するのではなく、見つめる、呼吸を合わせる、感じる、など身体全部を使っての対話が生まれていたように思います。
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2日目、この日は「よろしくお願いします!」の一言の後は、何も説明せずに、真似の動きから始まりました。子どもたちは既に慣れた様子で、水泳の動き、お尻歩き、何かを投げる動作など、アーティストと呼吸を合わせて動きます。
そして、またみんなの顔が見えるよう円になったところで、これからは学芸会に使う動きをつくっていく事を伝え、オープニングや座敷童の自己紹介にも使う「名前ダンス」の創作に取り掛かりました。四人組になり、一人ひとりの名前を全員でも踊れるようにと指示を出したら早速スタート。どんどんアイデアが出て何個も振りを考える子、1つのアイデアに辿り着くのにも時間がかかる子、様々なグループがありますが、時折1つのグループを取り上げてポイントを全員に伝えながら創作を進めます。一人の名前でも4人で手をつなぐなど協力して動きを作っているグループ、好きなスポーツの動きを取り入れるグループ、掛け声に工夫をするグループなど様々。更に、4人の名前を続けてテンポよく踊れるように「せーの」という掛け声をなくす事、「大事なのは終わりと始まりがあること。終わったらちゃんと止まる!」など精度を上げるよう各グループを回って声掛けをしました。
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そして振りが決まったら、1グループずつ発表です。少しでも終わりのポーズが決まらないと「何やってんの!?」、服を気にして触ってしまうと「振付にないことはやらんといて!」、その他にも「私プロやし、こんなん許されへん!」「面白くないもの作るんやったら、やらん方がいい!」等々、アーティストから激が飛びます。どんどん子どもに詰め寄り、一つ一つの動きに納得できるまで、一切の妥協を許さず何度も何度もやり直してもらいます。すると、見ている子どもたちも発表の後に拍手をするべきかどうか判断するようになりました。拍手をもらえないのは何故か、拍手したい気持ちになるような動きとはどういう事かを身体で感じ取ったようで、最後に全員で一斉に名前ダンスを踊った様子は壮観でした。何を見せたくて、何を見せたくないのか、この日の振り返りで先生が仰った通り「前回までは「楽しい時間」だったのが、「発表して見せる。」という意識に変わった。」という2日目でした。
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そして配役も決まり、ひな壇など舞台も設えられた3~4日目は、名前ダンスを取り入れたオープニングや、初回の真似の動きを使った乾杯のシーンなど、どんどん動きを決めていきました。お話の中で57人全員が一度に登場することは難しく、登場人物は4場面に振り分けて配役が決められていますが、全員が登場して一人ひとりが考えた自分の名前ダンスで始まるオープニングは、これからどんな物語が始まるのか、見る人の期待を煽ります。
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乾杯のシーンでも、場面の登場人物以外のひな壇で待機している子どもたちも登場して、タイコに合わせて掛け声をかけたり全員で踊ったりする工夫をしました。乾杯のしぐさ一つとっても、中途半端な飲み方では伝わらない。そこに無いものをあるように見せられるように、アーティストも実際に違いをやって見せながら、一つ一つ丁寧に伝えていきました。
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途中、ワークショップがない期間は先生に練習を任せて、あっという間に迎えた5日目はリハーサル。リハーサル直前の控室では、アーティスト自身も舞台に立つ前にするという儀式を子どもたちと行いました。「舞台に立つと自分一人やけど、みんなに見られたりするやんか。でも、お客さんに伝える時も、お互いに向かい合ってきちんと挨拶することと同じ。」と、全員がお互いに一人ひとりと握手をしてリハーサルに臨みました。
そしてリハーサル後、教室に戻った後は本番に向けてさらに完成度を上げる時間。「せっかくここまでやってんから、もっとよくなる!」というアーティストの言葉に、「もっと進化させる。」という子どものつぶやき。「一人くらい大丈夫。」と思っている人が一人でもいたら台無しになるからと、オープニングの名前ダンスを、改めて一グループずつやってもらいました。出来ていなければすかさず、「声も何もかも小さい!」「何も伝えてへん!!」「一番大きい声出してみて!」とアーティスト。自分の番ではないグループの子も、お互いに顔を見合わせて自分たちの動きについて本当に大丈夫か確認を始めます。そして、ある子が何度も何度もやり直しをさせられていると、いつの間にか周りがその子の動きを覚えて動き出しました。
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一人を囲んで全員がその子の名前を呼び、その子の動きをやってみる。アーティストが声をかけたわけでもないのに、自然に動き出した子どもたち。何度も何十回も、自分の名前に加えて友だちの名前、いくつものダンスを繰り返していると一つ一つは一瞬の動きなのに、いつの間にか袖を捲りあげ、肩で「ハアハア」と息をする子どもたち。みんなの熱気、そして気持ちが教室中に満ちていきました。更に、終わりのポーズが中途半端な子には、周りからも「ちゃんと止まった方が良い。」とアドバイスや、「しゃがんでみたら?」などポーズを提案する姿も見られるように。次のグループへ進もうとすると自ら挙手して見て欲しいとアピールし、アーティストの気合いに全く引くことなく応えていく子どもたち。何回も繰り返すうちに動きは良くなりましたが、「お客さんには一発目でこれができなあかん!」とアーティスト。結局一時間弱を名前ダンスに費やしましたが、その中で伝えたことが全てにつながっている気がしました。
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そして、後は子どもたちがやりきってくれる事を信じるのみ、と迎えた発表の日。児童鑑賞日と保護者鑑賞日の2回の発表のうち、アーティストが来られるのは一回目だけ。出会ってから約一ヶ月、振り返れば初めはアーティストの言葉に全く反応しない子がいたり、気がかりな事もありました。でも、ここまで子どもたちも先生も一丸となって迎えた本番。様々な想いを胸に始まったオープニングから最後まで、一瞬一瞬、一人ひとりが舞台の上で楽しんでいる様子、緊張している様子、そして観客が物語の世界に引き込まれ会場の空気が変わったことを感じました。しかし、ここまで一緒にやってきたみんなだからこそ、「もっとできるばず。」と、発表後にはアーティストから2回目の発表に向けて最終チェック。今まで、どんな事にも一瞬で応えてくれたからこそ、どこまでも登っていけそうな気がする子どもたちの勇姿に胸が熱くなりました。
校長先生が会の始まりの挨拶で、「お客さんが、劇を観る前と観終わった後では世界が違って見えるような劇を。」と仰っていましたが、スタッフも毎回子どもたちの姿に驚き感動し、この出会いによって世界が違って見えたような気がした6日間。このような出会いをくれた、子どもたち、先生、そしてアーティストへの感謝の気持ちでいっぱいです。
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北村成美/振付家・ダンサー
http://www.children-art.net/kitamura_shigemi/

小学校の特別支援学級で行われた、音楽家の港大尋さんによるワークショップをご紹介します。昨年度も同じアーティストでワークショップを実施した学校で、今年は「港さんと、とにかく音楽と身体を自由に動かすことを楽しみたい。」という先生からのリクエスト。子どもたちの中に去年のことが何らかの形で残っているようなので、同じアーティストで継続して取り組む方が、安心してより面白い表現が引き出せるのでは、という先生の言葉もあり、同じアーティストにお願いする事になりました。アシスタントにはダンサーの渋谷陽菜さんをお迎えして、3日間のワークショップを実施しました。

ワークショップ初日、子どもたちとの久しぶりの再会。まずは、低学年グループでの実施です。去年と変わらない笑顔を見せてくれる子もいれば、1年生など初めましての子どもたちもいるので、まずはご挨拶。アーティストが「覚えてる?」と聞くと「覚えてな~い!」と返事をした子も、アーティストがジャンベ(アフリカの太鼓)を叩き出すと手拍子をしたり、自分たちも叩きたがったり、去年も聞いたリズムや音にすんなり反応していきました。
一人ずつ叩きながら、真ん中と端を叩く時の音の違いを使って簡単なリズムを叩いていると、ある男の子が、ジャンベを持ち上げた底は空洞になっていて、そこに風が発生することを発見。穴に顔を近づけて風を感じて確認し始める子も出てきました。
そうしてジャンベに慣れた後は、リズムに合わせて身体を動かしていきます。途中、ジャンベの音にあわせてダンサーが即興の踊りを見せました。教室を暗くして、まるでジャングルのような雰囲気の中で踊ります。何に見えたか聞いてみると「ライオン」「蛇」「オオカミ」「宇宙人」「アナコンダ」など、様々な生き物に見えた様子。じゃあ、みんなも一緒に踊ろうということで、ジャンベの音を聞きながら、時にダンサーの真似もしつつ、一人ひとりが即興でいろいろな動物になって踊りました。
一方高学年グループでは、ジャンベで一人一人にリズムを考えてもらうことにも挑戦。「トントントン」「タンタタタンタン」「カカカカカカカ」「タンタタタタタンタン」など、みんなで真似してジャンベを叩いたり言葉にもしたりしました。さらには、出てきたリズムにあわせて即興の動きをつけながらダンスをしました。昨年もジャンベを叩いたりダンスを踊ったりした仲間なので、アーティストがどういう事をするか、お互いの勝手がなんとなく分かっている事や、子どもたちの期待度の高さを感じた1日目でした。

2日目と3日目は、昨年度の経験があってこその子どもたちの反応の良さや、ワークショップへの期待も踏まえて、いくつかの歌や踊りに取り組み、最後には、低学年と高学年で一緒に発表する時間を設けるという計画で臨みました。高学年グループと一緒に取り組んだのは、アーティストの港さん自身による作詞作曲の『がやがやのうた』と、喜納昌吉氏の作詞・作曲の『花』。どちらの曲も歌いやすい歌詞やメロディーで、何回か歌っていると自然に子どもたちの声も大きくなっていきます。ピアノを弾くアーティストの側にくっついていたり、ジャンベを曲に合わせて叩く子もいたり、それぞれの参加の仕方を受け止めつつ、時には歌詞を読みながら言葉の意味も確認していきました。『花』の間奏部分で一人ひとりがソロで踊るシーンを入れたり、「川はどこに行くの?」と問いかけながらイメージを広げて子どもたちにアイデアを出してもらって振付を考えたりしました。

一方、低学年グループは『がやがやのうた』と早口言葉&ダンスに取り組みました。「はらっぱでラッパをふいた」「はらっぱで立派なラッパをふいた」「カッパがはらっぱで立派なラッパをふいた」と少しずつ単語を増やして文章を長くしていきながら、身体の動きもつけていきました。どんどんどんどん言葉が増えて文章が長くなりますが、「もうちょっと足していい?」と聞けば「いいよ!」と答える子どもたち。カッパの動きを考えていたら、動物博士と呼ばれる男の子がカッパの生態について教えてくれるなど、話も弾む中で踊りも組立ていきました。そして最終日には発表することを伝え、歌や早口言葉を少し練習してもらうようお願いして2日目のワークショップを終えました。

そして迎えた最終日。それぞれが発表する歌や早口言葉を何回か練習してからお互いに鑑賞です。直前には、アーティストと円陣を組んで先生にも秘密の作戦会議。ワークショップでやった事に更にひと工夫を加えて発表しました。高学年だけが取り組んだ『花』のサビ部分をみんなで一緒に歌ったり、低学年だけが取り組んだ早口言葉を高学年にも教えてあげたり、お互いが経験した時間を共有して、最後は『がやがやのうた』を全員で歌い踊りました。先生もギターで参加したり一緒に踊ったり、一人一人のバラバラが、音楽の中で心地よく混ざり合い、温かい時間となりました。


最後の振り返りでは、「踊りたい人?と聞いた時に何の表情も変えずにサッと手を挙げて踊ることができる。そういう反応が今の世の中に欠けているんじゃないか。音楽があって通じ合った瞬間だった。」とアーティスト。昨年の経験もあったからなのか、今回は去年以上に、アーティストの「歌ってみよう。」「踊ってみよう。」という投げかけに対する迷いのない反応の良さに驚かされましたが、音楽やダンスを通してのコミュニケーションが、子どもたちの持っている様々な表現を色とりどりに引き出していたのだと思います。
また、先生からは、アーティストの言葉かけが「座りなさい。」ではなく、「座っちゃおうか。」など肩の力の抜けた雰囲気でとても良く、指示がなくても子どもたちは「港さんと動いていると何となく楽しいことがある」というのを分かっている、という感想をいただきました。ピアノを弾けなくなるくらい日に日にアーティストに接近するなど、目に見える距離の近さもありましたが、そうした関係性の中でお互いに気持ちよく表現を分かち合うことができたような気がして、幸せな気持ちで学校を後にしました。
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港大尋/音楽家
http://www.children-art.net/minato_ohiro/

小学校の特別支援学級で行われた、美術家の中津川浩章さんによるワークショップをご紹介します。普段は個人製作が多いので共同制作に取り組んでみたい、活動の中で「これ僕の!」と自信を持って表現してほしい、という先生からのリクエスト。一つの教室を丸ごと制作スペースに変えて、20人の子どもたちと2日間のワークショップを実施しました。

部屋に入ると用意されていたのは3m×3mの大きな画用紙。まずは紙の周りにみんなで座って、中津川さんからの説明を聞きます。絵具を使っていろんな絵を描くことを説明した後は、早速絵具をみんなに配ります。用意したのは発色の良いポスターカラー。黒以外の色を薄めに溶いて、手ごろな大きさの入れ物にいれ、一人一色と、好きな大きさの筆を選びます。色を選ぶにも、同じ色だけを使う子やいろんな色を試してみる子など、一人一人の好みが現れます。
そして、いよいよ制作スタートです。最初は一人ずつ、画用紙の上に乗って「まっすぐな線」を描きました。短い線や、画用紙の端まで続く長い線、四角になる線など様々な色と味を持った線が描かれていきます。子どもたちの「描きたい!」という気持ちもどんどん高まり、二人ずつ、四人ずつ、と描く人数も増やしていきました。薄く溶いてあるので、お互いの線が重なったり交わったりした部分も、綺麗な色の重なりを見ることができます。

最終的には全員で画用紙の上に乗り、中津川さんから注文の出るいろいろな種類の線や点、円などを描いている内に、子どもたちの心も次第に開いていくのか、一人一人の自由な線が広がりを見せるようになります。

そして一通り画面が色で埋め尽くされた後は、一度スポンジで水分を拭き取り、その上から、濃く溶いたポスターカラーを使って描いていきました。動物に乗り物、一人一人の好きなものも見えてくる瞬間です。具体物だけでなく、しずくを飛ばしたり、いろんな色の塗り方も試みたりしているうちに、ポスターカラーもどんどんなくなり、あっと言う間に作品が完成しました。

完成した後は、2日目に向けてそのまま乾かします。今回は途中から紫が大人気になり、海や宇宙をイメージさせるような作品になったかと思いきや、乾いてみるとまた違った表情になり、筆の跡やドリッピングの跡が見えるようになり、たくさんの小さな世界がギュッと詰まった大きな作品になっていました。
そして、土日を挟んでの2日目のワークショップ。今日は何をやるのか待ちきれない様子の子どもたちに、何をするのか説明します。「みんなで動物ワールドを作ろう」というテーマのもと、まずはどんな動物を知っているかを聞いてみました。ライオン、ヘビ、ウシ、ペンギン、ゴリラ、コンドル、キツネ、ゾウなど次々に動物が出てきます。
しかし、「じゃあその動物たちを、1日目に描いた絵から切り出してみよう。」という説明には、「難しい!」という声も。アーティストは「正確じゃなくてもいいよ。こんな動物いたらいいな、という動物でもいいし、動物が生きていくのに必要な木や水も作っていいよ。」と話していきます。さらに、「鳥とか作るのに、羽と胴体バラバラに作っていい?」「間違えたら違うの作ってもいい?」「誰かと一緒に作ってもいい?」などどんどん質問が出てきて、それに答えるたび、子どもたちもどんな風に作るかイメージを持てた様子でした。そして、「失敗したら?」という質問には、「失敗はないです。失敗したら、またそれをどうしたら素敵になるか考えるのも楽しいと思わない?」というアーティストの答え。作品のうまい下手を気にしてしまう子どももいるらしいですが、「失敗していい」と言ってもらえた事で、楽しんで制作に取り組めたと先生から終わった後に教えてもらいました。
見本を見せずに言葉だけの説明ではちょっと難しいと思うことも、アーティストの声掛けや、一人一人の表現をそのまま受け止めるという雰囲気を作ることで、安心して制作に取り組める環境を整えることがとても大切だと思いました。

さてさて、質問が終わったら早速画面を切り取りに行きました。最初はグループの代表が大きめの画面を切ってみんなに配っていましたが、だんだん慣れてくると、みんなそれぞれに好きな分だけ好きな形で切り取っていきます。ペンギンにコンドル、ネズミにアザラシなど、思い思いに動物を切り貼りしていきます。大きなゾウを作った子は、「飼育員さんも!」とゾウの鼻に人を乗せていました。そのうち、アンコウや潮を吹いているクジラも登場、緑の部分を切り取っていたら「カエルになっちゃった!」と偶然できた形も楽しみつつ、真っ白だった画面が、様々な生き物の暮らす素敵な世界に生まれ変わりました。

1時間ほど制作に取り組んだ後は、一度みんなの作品を鑑賞して、自分の作品の事や、友どもたちの作品の良かったところなど、感想を聞かせてもらいました。
実施後の先生のアンケートでは、「ダイナミックに表現する楽しさ、描きながらいろんな色が混ざっていくおもしろさを味わうことができた。」「一人一枚の画用紙に向かうのではなく、大勢で大きな作品をつくる体験ができた。」などの感想をいただきました。

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中津川浩章/美術家
http://www.children-art.net/nakatsugawa_hiroaki/

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「ダイナミックな造形を子どもたちに体験させたい」という要望を幼稚園より受けて、美術家・山添joseph勇さんによる造形ワークショップが開催されました。全2日間行われたワークショップの2日目、5歳クラスの様子をレポートします。
朝9時半。園のホールに集まった子どもたちは14人。お休みの子がいたので、ちょっと少なめです。ホールには大きなケースにびっしりつまったたくさんのせんたくばさみ。そして大きなモニターには、色々な形をした、色とりどりのせんたくばさみが次々に映し出されていています。
「おはようございます」と話を切り出した山添さん。「今日は何も用意していないけど、せんたくばさみをたくさん持ってきました。何かを作らなくてもいいので(壁面状の空間に)くっつけたり、服や体につけたりして遊んでみてください」
それだけ子どもたちに伝えると、まず5分くらい、モニターに映し出したせんたくばさみを眺めていてもらいました。普段見慣れているせんたくばさみのはずなのに、形も色も、こんなに色々あることに子どもたちは早くも気づいた様子。「これはフランスのだよ」と山添さんが言うと「えーー?!」と驚きの声。今日は面白いことになりそうと、子どもたちも予感がしたようです。
「じゃあはじめよう」という一声で子どもたちは一斉にせんたくばさみの周りへ集まりました。赤、白、黄色、みどり、ピンク、青、半透明のものなどだいたいの色ごとにわかれていますがそれぞれの色のなかにも微妙な色違いがあるので、全部で200色くらいあるとのこと。奥の深い色彩と、多種多様な形の洪水には、圧倒されるインパクトがあります。子どもたちは、さっそく手にとってつなげてみたり、服や髪の毛につけてみたり、壁面のように無色透明のビニールを張った空間に挟んで遊んだり、大中小のサイズがそろったせんたくばさみを家族に見立てて、即興で物語を語ってみたり、自分一人の空間をとって、ひたすら何かをつくろうとしたり。本当に色々なことをして遊びはじめました。どうしたらいいかわからなくてぼーっとしちゃう子は一人もいなくて、みんなどんどん手を動かしてはせんたくばさみで何かしようとしているのが気持ちいいくらいでした。
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せんたくばさみという、つなげるのも切り離すのも、子どもが簡単に扱うことのできる非常にシンプルなツールゆえ、広がりは無限で、時間の経過とともに変わりゆく子どもたちのせんたくばさみとの関わり方は見ていてとても興味深いものがありました。個人の作業がグループ作業に変わったり、一度やりきったものを全部壊してまったく違う新しいものを創りだそうとしたり、個人の作業が終わったからと、友だちのためにせんたくばさみを集める作業をすることにしたり、どこまでもひたすらつなぎ続けていたり・・・。山添さんが「あと10分くらいで片付けの時間だよ」というまでは、この遊びはエンドレスに続くのではないかと思われるほど、子どもたちは夢中になってせんたくばさみと向き合っていました。
最後は、作ったものも、つなげたものも全部崩し、あちこちに散らばったせんたくばさみをかき集めて、色ごとに元のケースに納めておしまいとなりました。作っていく作業と片付ける作業は、目的も意味も異なるものですが、色の美しさのせいか、どちらもとても創造的な作業に感じたのは私だけでしょうか。
ワークショップに参加した先生たちも、せんたくばさみの奥深さを実感してくれて、これからは園の遊びに取り入れたいと前向きな感想をいただくことができました。
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山添 joseph 勇(美術家・深沢アート研究所代表)

山添joseph勇(やまぞえ じょせふ いさむ )/美術家・深沢アート研究所代表


★せんたくばさみ会議 http://pegs.exblog.jp/

保育園の4歳児クラスで行われた、グラフィックデザイナーの種市一寛さん&宮添浩司さんによるユニット「バレ・バレ」のワークショップをご紹介します。アーティストの方が提案してくれることはいつも刺激になるので、こういった機会を楽しみにしているし、作ることが多少苦手な子も思いっきり楽しんで、今後の制作へつなげていけるような活動を、という先生からのリクエスト。会場は保育室で、いつもの部屋をまるごと海の中に作り変えてのワークショップとなりました。

まずは、ホールで子どもたちと出会います。挨拶の後は海の絵本を見せながらの導入。見た事のある魚の名前などを口々に話し出す子どもたちに、「これからみんなで海に探検に行きたい人?」と尋ねると、「行く!」と元気に答える子や、「ちょっと怖い」と答える子も。そこで、海に行くために「魔法のスーツ」を装着します。ポリ袋で出来たスーツですが、子どもたちのワクワク感が高まって、そのまま海の中(保育室)へと出発です!
最初の数秒はソーッと部屋に入る子どもたち。でも入ってしまえばもう気持ちを押さえずに、てんこ盛りになったすずらんテープの山に埋もれたり、壁に貼られた魚たちや天井のネットなどに触ったり「ワーワーキャーキャー」大興奮の子どもたちに、大人も笑いが止まりません。

そうして空間自体を満喫したところで、アーティストが一つだけ吊るされた魚に注目。「1匹だけだと淋しいよね。お友だち作ろうか?」と問いかけて、制作の時間に突入しました。まずは、丸や三角に切られた3色ほどの画用紙を使って魚の形を作ります。色の選び方や組み合わせ方で一人ひとり違った魚が登場します。

一通り形が出来た所で、「お魚さんにお洋服を着せてあげよう。」と、飾り付けに使う様々な素材(マスキングテープ、シール、毛糸など)を紹介します。材料が登場するとまた子どもたちの興味も深まり、材料の箱に群がりながら、それぞれ自分が使ってみたい素材を持っていきます。マスキングテープは、ハサミで切るのが難しい素材でもありますが、何回も繰り返すうちに、なんとかかんとか切れるようにもなり、この1日だけでもまた子どもたちの成長を感じました。

材料だけでなく、イカやタコなど、アーティストが作った別の見本なども時々見せながら、子どもたちのイメージを少しずつ刺激して制作は進みます。一つ完成するごとに天井から吊るして飾るのですが、大人を見つけては自分の作品がどこにあるか教えてくれる子もいて、誰かに自分の作品を見てもらうことの大切さも改めて感じました。

次々に作品を持ってくる子どもたちに、天井に吊るす作業が追い付かずスタッフもてんやわんやですが、予想以上に4個5個と作り続けても途切れない子どもたちの集中力には感心しきりです。
時間が経つと、材料が増える面白さと同時に、同じ素材でもいろいろな使い方が生まれてきます。形の紙を長~くつなげたり、リボンを長くつかって垂らすようにしてみたり、魚だけじゃなく、お魚さんの家なども加わりました。紙コップなどの立体的な素材も加わると、海はますます豊かになっていきます。


制作が終盤に差し掛かった頃には、「魔法のシール」を少しずつ子どもたちに渡しておきます。そうして60分程が経過したところで、保育室の電気を半分消灯。何事かと思っている子どもたちに、海が夜になるからと片付けの声かけをします。そして一度全員で座ったら、アーティストから魔法の呪文が。「海さん、おやすみなさい。」とみんなで一緒に唱えると、そこはもう夜の海!実は、魔法のシールや、最初からいた魚たちには畜光塗料が仕込んであり、夜の海で光るようになっているのです。子どもたちは「ウワーッ!!!」と大喜びで、暗いにもかかわらず海中を動き回って、全身で楽しさと喜びを表してくれました。

夜の海を堪能した後は、海が朝になり、みんなでホールに戻ってワークショップを終えました。終了後の振り返りでは、先生から、「制作が苦手な子もいたので、あんなに集中するとは思わなかった。」「今日は能力的な個人差があまり出ずに、一人ひとりが興味を持って取り組んでいた。」「いろんな素材を心豊かに使えた。」などの感想をいただきました。また、この日は作品を夕方まで飾っておき保護者の方に見てもらえるようにしたり、実施後も少し海を残しておいたり、その後も園で活用して下さるとのことでした。
アーティストは、楽しい環境を整えて、楽しい仕掛けを用意して、タイミングを見計らいながら子どもたちを刺激します。でもアーティストが一方的に投げかけるだけではワークショップは成り立ちません。子どもたちの時々の反応や制作の様子に応じて、より制作に集中していけるように、より子どもたちがイメージを広げていけるように刺激をしていく。そうして、出来あがった海の豊かさの中で、子どもたちの集中力と、空間や材料への反応の良さ、一人ひとりが持っている力や想像力の広さに本当に感動した一日でした。
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バレ・バレ/グラフィックデザイナー
http://www.children-art.net/bare_bare/

保育園の5歳児クラス15人を対象に行われた、入手杏奈さん(ダンサー・振付家)のワークショップをご紹介します。静かな動きや賑やかな動きなど、楽しくいろいろな身体の動きを経験させたい、そしていろんな事を楽しめる子どもたちなので、アーティストがやりたい事をめいっぱいやってほしい、という先生からのリクエスト。友だちと触れ合ったり、誰かの真似をしたりすることも含め、40分間、汗だくになるまでめいっぱい身体を動かしました。
ホールに入ってきた子どもたちは、まずアーティストとご挨拶。実は、先生が事前に「バレリーナの人が来るよ。」と伝えて下さったので、チュチュも着ていない入手さんに、少しがっかりしたらしい子どもたち。でも、入手さんが「ダンスをしています。」と自己紹介し、少し踊ってみせると、その面白さに「クスクス」と笑いがこらえきれません。スリッパを飛ばしたり、カーテンの裏から手だけ出して踊ったり、最後には一人ひとりの頭を「ポンポン」とタッチして、子どもたちの心をつかみます。

入手さんの挨拶が終わった後は、子どもたちも先生も、みんな一緒になって身体も使ってご挨拶。近くにいる人と「おはようございます。」と挨拶するところから初めて、指と指で挨拶したり、お尻とお尻で挨拶したり。最後には、子どもたちのアイデアで、頭でご挨拶。相手が痛くないように気をつけながら、そっと頭を「コツン」と挨拶します。
そうして身体がほぐれた後は、輪になってのワークです。隣の人にタッチして、そのまた隣の人にタッチして、相手から送られてくるものを、さらに別の人に渡していきます。隣同士だけではなく、ランダムに好きな人に渡す、というのもやってみました。続いては、一度みんな座ってみます。すると、入手さんから「目を閉じたまま真似をしよう。」との声かけが。子どもたちは意味が分からず「え~?」と言う子もいますが、とにかく目を閉じます。そしてどんな真似をするかと言うと、手で床を叩いたり、足をふみならしたり、音を鳴らす動きの真似でした。要領がわかった子どもたちは納得した様子でワークに取り掛かります。自分の聞いた音の鳴らし方が合っているか気になって目を空けてしまう子もいる中で、まじめにギュッと目を閉じて、正解じゃないけど自分が思った動きで応える子も数名。入手さんは、そういう子も「いいね。」と認めます。

後半は、いろんな動きを経験した身体をさらに開いていきます。面白い擬音語や会話等も用いながら、どんどん入手さんの動きを真似していきます。手拍子したり、寝転がったり、「リンリン」は電話の動作、「モジモジ」は身体をクネクネさせながら、「ムキムキ」は力持ちのポーズなど、ホール中を所せましと移動しながら様々な動きを取り入れます。電話をかける動作をしながら、「お父さん?」「お母さん?」「先生?」「象さん?」など、ユーモアのある台詞も加えて、入手さんの面白い動きや言葉に、子どもたちの笑いも止まりません。

さて、そして最後は、たくさん真似した動きを、「曲に合わせてやってみようか?」という入手さんからの問いかけ。ここでも子どもたちは少し「キョトン」とした様子。そうすると、電話の「リンリンリン」という音がどこからともなく聞こえてきます。そしてかかった曲は、『恋のダイヤル6700』byフィンガー5!実は、これまでの動きが歌詞にピッタリ合うように考えられていたのです。「リンリンリリリン」ではもちろん電話をかける動き、「男らしく」という歌詞のところでは、「ムキムキ」でやったポーズ等など。
最初は、テンポの良い曲のスピードや振りについていくのに必死な子もいますが、何回か繰り返していくと、踊ることがどんどん楽しくなっている様子が伝わってきます。ジャンプするところでは、1回目より2回目、2回目より3回目の方が思いっきり飛ぶようになり、最後に好きなポーズを決めるところも、段々格好良くなっていく子どもたち。曲にのって、身体をいろいろ動かす事そのものを楽しめるようにしていきます。

何回か繰り返し踊っているうちに40分はあっという間に過ぎて行き、一度終わりの挨拶もしたのですが、最後に「もう1回踊りたい!」という事で、最後の最後にもう1回踊って、この日のワークショップを終えました。保育室に戻る時も「リンリン」の動作をしながら名残惜しそうに入手さんに話しかける子が絶えません。今回のワークショップは2日間の実施で1週間後に2回目を迎えるのですが、既に次回を楽しみにしてくれている様子に、スタッフも嬉しくなりました。
実施後の振り返りでは、先生から「早速普段の保育でもやってみます。」との言葉をいただきました。梅雨に入って外で遊ぶ機会も減ってしまうかもしれませんが、身体を動かすのが大好きな子どもたちだったので、これからも身体のいろんな楽しさを発見していってほしいと思いました。
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入手杏奈(いりて あんな)/ダンサー・振付家
http://www.children-art.net/irite_anna/

保育園の5歳児クラスで行われた、カブさん(美術家・深沢アート研究所緑化研究室代表)のワークショップをご紹介します。会場になったのは、いつも子どもたちが生活している保育室。一人ひとりが作る過程もありながら、最終的にみんなで一つの作品になる経験をさせたい、との先生からのリクエスト。今回は、セロテープという素材にとことん向き合い、大きな透明の空間を作ろう、という内容でした。

実は、この日の1週間前に既に4歳児クラスでワークショップを実施していたので、隣で見ていた5歳児の子どもたちは期待が高まって、今日のワークショップをとても楽しみにしていたとのこと。部屋に入ってくると、「宇宙にするんだ!」など、既にイメージが広がっている様子でした。ワクワクする気持を押さえながら、まずはアーティストからのご挨拶。その後、今日みんなとやる事、道具の使い方などを説明していきました。
まずは、セロテープの使い方からです。セロテープ台を一人ずつ取り、両手を使ってセロテープをある程度の長さに切る。そしてクルクルっと丸めて滴のようにしていきます。何回か丸めてある程度大きくなったら、最後は顔を描いて自分だけの滴が完成です。小さいところに慎重に、真剣に好きな色を使って描いていきます。

練習が終わったら、今度はセロテープを教室中、好きな所に貼り巡らせます。脚立や机などをきっかけにして、あっちからこっち、こっちからそっちへ。長さが足りなかったり、上手く空中でセロテープを切れなかったり、セロテープ台の扱いも最初は難しい事もあります。でも、さすが5歳さん、大人が手伝おうとしても「いい!」と、自分たちで出来る方法を見つけていきます。経験を通して、子どもが成長していく瞬間でした。

また、貼り巡らせたセロテープには、滴(子どもによってオバケだったり、蛇だったり、好きなもの)などを張り付けて装飾します。ふと気付くと、制作のヒントになるよう流していたプロジェクタのイメージにもセロテープの影が映って面白い事に。自分の影で遊ぶ子もちらほら。

そして、ある程度時間が経つと、セロテープだけでなく、マジックで絵を描く事も始めます。いつもの紙と違って、立った画面に描くのは難しいかと思いきや、そんな事は気にせず友だちとおしゃべりもしながら描いていました。

時間が経つと、自分の空間をある程度決めて、そこを重点的に作り込む子も登場します。真剣にセロテープを見つめる姿は立派な職人さんのよう。そして、高い所にも低い所にもセロテープが貼ってあるので、屈んだり四つん這いになったり、子どもたちは身体を器用にいろんな風に使って部屋中を移動します。下手に大人が入ろうとすると、行く手を塞がれて進めなくなるゾーンもありました。

さらに時間が経過したところで、アーティストからセロテープ以外の素材も紹介されます。セロテープをとことん突き詰める事ももちろん、楽しんで制作できる事も大切、という事で、キラキラの折り紙、アルミホイル、カラーテープなど、子どもたちの想像力を刺激するような工夫です。嬉しそうにアルミホイルを見せてくれた男の子、何かと思えば、アルミホイルの上に、違う光り方をする銀の折り紙がいくつも貼られた素敵な作品になっていました。

始まってから約90分間、子どもたちの集中力は途切れる事がありません。友だちと一緒になって、のりまき&梅干しを隣同士に飾ったり、「大きくなったらオバケと友だちになりたいからオバケばっかり作るの。」と自分の作品を追及したり、それぞれの想像力を活かして、いろんな物語が生まれていました。最後には、みんなで集まって作った空間を眺めてみます。アーティストは、みんなが頑張った事を認めると同時に、「今日は特別ね。」と、いつも好きなだけ好きなようにセロテープを使える訳ではない事を、きちんと子どもたちに説明してワークショップを終えました。
先生からは、「最初は手探りだったけど、どんどん集中していく子どもの様子が分かった。」「アーティストやスタッフがサポートする姿を見て、子どもたち自身もお互いに助け合う事を学んでその場で実践していた。」などの感想をいただきました。また、この日はこの作品を残しておいて、空間を眺めながらお昼ご飯を食べたそうです。一見とてもシンプルな事のようですが、アーティストの導入や、素材を投入するタイミングなどにもいろいろな思いや考えがあってこそ成り立つワークショップ。そして道具の使い方ももちろん、自分の中で様々なイメージを広げて身体全部を使って次々に制作に取り組む子どもたちの姿に、本当に一瞬一瞬彼らが何かを吸収して成長している事をヒシヒシと感じた一日でした。
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カブ(かぶ)/美術家・深沢アート研究所緑化研究室代表
http://www.children-art.net/kabu/

突然ですが、当NPOの活動ではワークショップの現場で多くのボランティアスタッフの方々にご活躍いただいております。事務局スタッフが小人数な事もあり、皆さまのご協力なくしては、私たちの活動は成り立たないと日々感謝しております。
そこで、そのように大変お世話になっているボランティアの方々への感謝のしるしとして、そして同時に、新たにボランティア活動に興味を持って下さる皆様方に、当NPOについてよりよく知っていただくための機会として、交流会とささやかなパーティーを催しました。学生の方や、お仕事終わりに駆けつけて下さった方など、年齢も職業も様々な19人が参加して下さいました。

第一部では、当NPOの全体の事業概要や、ボランティアさんにお願いする仕事内容などを、映像やスライドを交えながら説明しました。実際のワークショップでどんな事が起きるのか、美術として一緒に舞台作品を作って下さったボランティアさんの話や、参加したことのある方々へのインタビューも交えて、なるべく現場の雰囲気が伝わるように努めました。場所が違えば子どもたちの様子も違い、ダンスや音楽、造形など内容も多岐にわたり、毎回毎回が驚きや発見に満ちているワークショップ。その時の事を振り返りつつ話すスタッフにも熱が入り、聞いてもらう時間が随分長くなってしまいした…

そしてお腹も空いたところで、第二部の立食パーティーへと移動しました。2年2組の教室(普段グリグリという畑活動に使っています。)にドリンクや軽食をご用意して、スタッフに聞きたい事など、リラックスしてお話ししていただけるようにしました。参加された方が勉強、研究されている事、ご興味のある事なども伺いながらお話させていただくと、こちらも話しているのがどんどん楽しくなり、予定していた時間はあっという間に過ぎました。当NPOの活動に興味を持って下さったり、応援して下さったりする方がいる事、様々な理由で当NPOに辿り着いて下さった巡り合わせとご縁に、改めて感謝する一日となりました。
また、、パーティーに参加された方で、早速6月から始まる保育園や幼稚園でのワークショップに申し込んで下さった方もたくさんいます。この日だけでは分からなかった事、伝わらなかった事など、また現場で皆様にお会いして交流を深めていけることを楽しみにしています!
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※この日も何回かご質問がありましたが、6~7月は幼稚園・保育園が主になり、8月(夏休み)は公共ホールでの舞台作品をつくる公募型ワークショップ、そして9月以降3月まで小学校・中学校(特別支援学級含む)でのワークショップが続く、というのが当NPOでの大まかな一年の流れとなっております。その都度メールマガジンでボランティア募集を行っておりますので、ご興味のある方は下記リンクより是非ご登録ください!
ボランティア募集→http://www.children-art.net/volunteer/

師走初日の寒い日に、勝部ち子さんによるからだあそびワークショップが開催されました。
勝部さん 「今日は雨で寒いですが、みんな元気ですか?雨とか、寒いとか、みんなには関係ないか?!」
子どもたち 「かんけいなーい!」
今日も元気な声がホールに響きました。勝部さんがこの園に来るのはちょうど1週間ぶりです。
前回と同様、アシスタントのしょうこさんと一緒に来園し、この日もまず最初はみんなの名前を呼び合うことから始めました。大きな輪になって座り、「○○ちゃーん(くん)」とみんなで一斉に一人ずつ名前を呼びます。名前を呼ばれた子はちょっぴりはにかんでみたり、ポーズを決めてみたり。先生の名前ももちろん呼びます。勝部さんとしょうこさんも「ちこちゃーん」「しょうちゃーん」と、子どもたちと同じように呼んでもらいます。ちょっとしたことだけど、こうして一人ひとりの名前を大きな声で呼び合うことで、前回はお休みだった子も、ここで顔と名前を覚えてもらえたり、その場にいるみんなの気持ちがほぐれ、これから一緒にからだあそびをしようね、という一体感がでてくるのです。
紹介の後、まずは少しウォーミングアップしました。
勝部さんが幼児を対象に行うワークの中に、「ネコ」という名前のものがあるのですが、それは四つん這いになり、二人同時にゴロンと一回りしてからジャンプするというものです。着地するときは足音がたたないようにするのが「ネコみたい」ということで「ネコ」と呼んでいます。日頃からよく身体を動かしていると思われるこの園の子どもたちは、あそびの飲み込みが早く、静かに着地するジャンプも、とてもうまく飛ぶことができました。
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このあそびを紹介するとき、勝部さんが子どもたちに、「この動きは何を表現していると思う?」と聞いたところ、子どもたちからは、「うさぎ」「カメ」など色々な答えが返ってきました。勝部さんとしょうこさんが 「そうだね。それもあるね。」とどれも受け入れるように返事をしていると、一人の女の子が 「ほんとはどれが正解なの?」 と聞いたそうです。しょうこさんが 「どれも正解だよ」 と言うと、その女の子は少しきょとんとした顔をしていたそうです。
勝部さんのワークショップは、いつも子どもたちの年齢に見合ったワークを用意して来てくれますが、現場で子どもたちから出てくるアイディアを時には受け入れ、柔軟にシフトしていくこともあります。「こうしなくちゃいけないというのはない」 そのコンセプトが「ネコ」の件に如実に表れていましたが、きっと子どもたちは、知らず知らずのうちに今日のワークショップそのものが 「こうしなくちゃいけないというのはない」 のだということに気づいて行ったのではないでしょうか。
さて、いろいろな面白いからだあそびを取り入れたウォーミングアップが終わると、前回のワークショップで約束した「海」に行くことになりました。この「海」は勝部さんのワークの中で大人気のものです。
勝部さん 「これから海に行きたいと思います。今日は沖縄に行きます!」
子ども 「なんきょくがいいー!」 
なぜか「なんきょく」の大合唱が子どもたちがわきあがりました。
・・・しばらくたって・・・
しょうこさん 「今日行く海が決まりました。なんきょくです!」
子どもたち 「わーーーーい!!」 
子どもたちはおおはしゃぎでした。南極ブームなのでしょうか?理由はわかりませんが、南極行きが決まりました。
飛行機に乗ったあそびを通して南極に着くと、4人1組で波乗りをしました。横一列に3人が寝転がり、その上に一人が横たわります。下の3人がごろごろと転がると、上に乗った子も一緒に転がって、まるで海で波乗りをしているみたいなのです。これは”みんなで息を合わせて″転がることが大事で、お互いが相手の動きを感じ取りながら動くこと、動きながら友だちの身体にケアすることが必要な、実はちょっと高度な動きです。前回2人1組でやったことが活きて、今日はみんなとてもうまく波乗りができていましたが、中にはちょっと勝部さんに指導してもらいながらできたというグループもありました。
最後のワークは、海でつかまえた魚が体に入ってしまった!というあそびです。身体の中に魚が入ったらどんなことになるでしょう?そんなことをイメージして動くと、なんだか踊っているみたいになりました。魚はしょうこさんから勝部さんへ、勝部さんから先生へ、先生から子どもへとだんだんと移っていきます。魚が入ってしまった人は、手足や腰をゆらゆらさせて動きます。その動きがおもしろいのか、魚がはいっちゃった!というイメージがもうできているのか、子どもたちは大興奮で 「いつ自分のところに魚がくるだろう!」 という期待をもちながら待っています。待ちきれない子は飛びはねたり、奇声をあげたりして待っていました!子どもたちに魚がやってくると、待ちきれない子たちがみんな踊りだして、すごいエネルギーがさく裂しました。
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自己表現をしたい子たちが多いんだなぁ、とスタッフは感心したのですが、あとで聞いたら「大人しくて自分を出すのが苦手な子が多いんです」とのこと。え?!スタッフも、勝部さんもしょうこさんも、唖然としてしまいましたが、今日の 「こうしなくちゃいけないというのはない」 という雰囲気を感じ取って、子どもたちが表現できたのではないかと先生たちは受け取られたようです。自然に引き出された子どもの感覚に出会えた時間だったのですね。あとからしみじみとワークショップの力を実感させられました。
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勝部 ちこ(かつべ ちこ)/ダンサー・インプロバイザー

勝部 ちこ(かつべ ちこ)/ダンサー・インプロバイザー