その他「パフォーマンスキッズ・トーキョー フォーラム」レポート (PKT)

更新日:2012.03.13

 パフォーマンスキッズ・トーキョーフォーラム レポート
~学校・特別支援学級・児童養護施設にアーティストがやってくるということ~

3月4日、日曜日の午後、アーツ千代田3331にて、「パフォーマンスキッズ・トーキョー フォーラム」を開催いたしました。
パフォーマンスキッズ・トーキョー(PKT)のこれまでの実施報告や、子供とアーティストを結ぶ事業を行う方々をパネリストとして招いてのディスカッション、さらには音楽とダンスのミニワークショップで構成されたこのフォーラムの当日の様子をご紹介します。

 フォーラム概要はこちらのページをご覧ください。 

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<1>PKT過去の事例紹介+ミニ・ワークショップ(音楽)  
 
まずは、DVDにてPKTの過去の事例を紹介。八王子の小学4年生と音楽家の港大尋さんとが取り組んだワークショップ、発表会の映像を皆さんに見ていただき、続いて、港さんご本人にマイクをバトンタッチ。なぜこのときのテーマに「縄文時代」が出てきたかの説明や、担任の先生とのエピソード等をお話しいただきました。そして、ミニワークショップでは、映像の中で出てきた歌や縄文ダンスを、ダンサーの新井英夫さんを交えて手振りをつけて参加者の方と行いました。港さんは最後に「僕は学校や養護施設で、子供たちと世の中の面白おかしいことを意識してやっています。こんなことがおかしいのでは、といったことをユーモアを交えて盛り込むことを意識している。」と仰っていました。  

港さんによるワークショップの様子

  
<2>パネルディスカッション part1
「学校・子供の施設でアーティストが行うワークショップの事例・効用・そのコーディネート」      

パネリストの皆様は、ご自身が行っている事業の説明やアーティストが行うワークショップを子供たちが体験した様子等をお話しいただきました。 

■小川智紀さん (横浜市芸術文化教育プラットフォーム事務局長)
「横浜市芸術文化教育プラットフォーム」事業では、その事務局は、行政と民間、NPOが協働で運営していて、小川さんは、様々なコーディネート団体をとりまとめながらアートと教育とが交わる場を支えている存在です。この事業を継続させる中で見えてきた、アーティストによるワークショップの効用と学校側が求めてくるものとの違いや、コーディネーターの役割についてお話しいただきました。また、実績の蓄積から得た貴重なデータを共有いただきました。           

小川 「横浜市芸術文化教育プラットフォーム」は、今年度は横浜市の学校77校にて実施(7割は参加型ワークショップ、ほか鑑賞型もあり)。そのジャンルはざっと半分は音楽で、他は美術、ダンス、演劇、伝統芸能など。全体の7割が次年度も継続を希望しています。これまでの内容を独自に分析したところ、音楽ジャンルを希望する学校側の目的として、学校側は創造力(クリエーション)よりも聴かせたい・鑑賞させたいという思いが強い傾向にある。演劇の場合は、コミュニケーション能力をつけさせたいという思いがある。ダンス(コンテンポラリー)の場合は、クリエーション能力に関する欲求というよりも協調性向上を目標にしている場合が多いことなどが分かりました。      


■尾崎承子さん (中央区立月島第一小学校 情緒障害等通級指導学級主任教諭)
通級学級に通う情緒障がい等のある子供たちと日々接する中で、彼らにとってアーティストとの出会いがもたらす効用を、尾崎さんが実際に体験した造形ワークショップ(「芸術家と子どもたち」がコーディネートした美術家の水内貴英さんによるワークショップ)の写真を振り返りながら語ってくださいました。   

尾崎 ワークショップを終えて良かったと感じた点が3点あります。
【①子供たちにとって】アーティストという専門家に自分を認めてもらえることで、自信を持つことができた。苦手意識を抱いていることにも、チャレンジしてみようとする意欲が高まっていた。
【②先生にとって】自分たちだけでは到底用意できない、子供たちの意欲に繋がるような素晴らしい環境・教材を用意していただけた。
【③世の中にとって】目の不自由な方のための点字とか、耳の不自由な方のための掲示板とか、ハード面のバリアフリーには限界があると思う。特に情緒障がいといわれる人たちには、ハード面にはあまりバリアは存在せず、互いに理解しようとする心の寄り添いが一番だと思う。アーティストによるワークショップの機会は、いろいろな方に彼らを知って頂くよい機会になったと思う。


■鈴木章浩さん (児童養護施設二葉むさしが丘学園 自立支援指導員)
二葉むさしが丘学園には、PKTとして、ダンスアーティストの新井英夫さんと、芸術家と子どもたちのスタッフとがおよそ1年間で計14日間通ってワークショップを行い、最終日には発表会も行いました。以下、鈴木さんのトーク内容と資料内容から抜粋させていただきます。      

鈴木 児童養護施設は子供たちの家にかわる生活の場なので、昔から外部の人が自由に出入りできる場所ではない。基本的にはとても閉鎖的な場所として存在していた。それがだんだんとかわってきて、基本理念も、かつての「収容・保護」の場から現在は「自立支援」を促す場に転換している。自立の基礎とは「支え、支えられること(他者への共感)を知る」こと。今回の新井さんとのワークショップが、この「自立の基礎」を言葉ではなく体感として得られるもの、すなわち自立支援につながることだと確信している。     

【入所児童が抱えている課題】
自己肯定感が低い、自己表現の抑圧、裏切られてきた経験によって信頼関係を築くことが難しい、など。
【こういった場所にアーティストがやってくる意義】
身体感覚をつかう経験、上手にできることをもとめないワークショップ、みんなの前で発表し拍手をもらう経験などを通して、自己肯定感や自己表現力の向上、ソーシャルスキル(他者へ譲る・他者の表現に目を向ける・話を聞く・模倣するなど)の獲得、興味の広がり(余暇・遊び・対人との信頼関係)などへ繋がっていくと感じる。       

新井 (児童養護施設での取り組みは)言葉によるコミュニケーションが最初はとても大変だった。それぞれが、興味を示すことがまったく違い、全員にヒットするものはひとつもない。ある物事に対して、特異な才能を発揮する時があり、僕が予想する以上のアクション、作曲、振り付けを、知らぬ間にやっている。他人や大人には伝わりにくいが、その子なりのアプローチの仕方があって、内面ですごくいろいろなことを感じているようだ。すべての子に対してそれを思った。


■臼井隆志さん (アーティスト・イン・児童館 プログラムディレクター)
子供たちの遊びの場である児童館にアーティストを招聘するプログラムを行っている「アーティスト・イン・児童館」。その事例をご紹介いただきながら、児童館にアーティストが滞在する(=地域のなかにアートの拠点をつくっていく)、その意義をお話しいただきました。

臼井
 今、遊びの選択肢がとても多いなかで、アートがもしかしたら面白いかもしれない、ということを伝えなきゃいけないと思ってやっている。児童館=子供の館。子供がいることでどうなるか、どうしたら面白い場所になるのかを考えている。子供たち自身が、自分の居場所が面白くなる方法を考えていくきっかけになればと思う。また、児童館の職員とともに企画をつくっていくので、職員にとっても、新しいことをやってみようかなというきっかけになればと思っている。
 

<3>ミニ・ワークショップ(ダンス)
     

ここでは、新井英夫さんが子供たちとのワークショップで行っている内容を、参加者全員と身体を動かしながら実際に体験しました。参加者同士が手足や身体をくっつけ合い、笑い声が上がり、和気藹々としたワークショップとなりました。      

新井さんによるワークショップの様子


<4>パネルディスカッション part2

「コーディネーターの役割とネットワークづくり」   

ここではパネリストも、参加者も全員で輪になって座り、参加者に書いていただいたパネリストへの「質問カード」をもとにトークを進めました。  

Q.学校側の求める要素と、アーティストが提供するものとの溝を埋めていく、コーディネートの役割について 

小川 学校で実施するパターンは2つある。1つはプログラム内容を固めてそれをまわす方法。横浜のプラットフォーム事業では最初はそのようにしていたが、今は先生と話し合い協働して実施するので、決めすぎずに内容を大まかに検討する方法をとっている。私たちの事務所では、それを「半生(はんなま)」と言っています。 
 コーディネートしていく立場として「半生(はんなま)」という言葉はとてもしっくりきますね。 

Q.アーティストにとって子供とのワークショップを行うことについてどう思いますか?  

新井 アーティストとしての舞台活動と、ワークショップとしての活動を比べた時に、自分が与える世の中への影響度としては同格である。ワークショップは副業ではない。また、未来を生きる子供に向けて実施する、ということに責任を感じている。真価を問われる厳しい現場でもある。 
 例えば、30とか50人とかの人数を相手にすると、名前を全員は覚えられない歯がゆさがある。少人数で、名前も個性も分かっていると付き合い方が変わってくる。自分が今ワークショップを行っている児童養護施設は4人を対象としているので、それぞれの個性がわかる。     

Q.うまく行かないとき、参加しない子がいるときや、逆に盛り上がりすぎるとき、どのように切り替えてやるか?     

新井 うまくいかないときは、うまくいくように努力したいが、その場その場で子供の顔をみて、喧嘩や誰かが活躍できていないような状況でない限りは、放っておいて、もともとの想定とは違う出口を考える。    
小川 うまくいかない、ということをどうとらえるか。どんな人、スペース、時間など、事前の情報収集が重要なので、アーティストと必ず普段の様子を1度は見に行くことにしている。    
臼井 僕たちの団体はいつもうまくいっていないとも言える。放課後の子供たちは空気が読めない子が多い。とにかくそれぞれが自由に発言や行動をする。その盛り上がりの断面をアーティストが切り取り、活動に変える。

Q.ネットワークづくりについて。情報が行き届いていないケースもあるが、もっと広めて行くためには何が大切か?アーティスト自身のこういった活動への理解や、受け入れ施設側の職員の認識を醸成していく必要があるのでは?広めて行くためにはどんな手法があると思うか?

小川 こういったフォーラム等の場があることで、色んな人と出会う事ができる。また、情報を流すためには、行政によるバックアップは重要である。横浜ではまだまだ手探り。30団体あるが、それぞれ美術やその他ジャンルが異なるため、まだみんなで一つのことに取り組んだことがない。今後の展開として、“子供”向けということで一つに集えるのでは、と思っている。

 Q.コーディネーターは各地の地元でやりたい人もいるのでは。コーディネートにお金が発生するというシステムについて。 

 NPO法人芸術家と子どもたちの場合、始めた頃は民間の企業からの資金で、アーティストの謝金を賄っていた。今は東京都や豊島区など、自治体からの予算の割合が大きい。文科省(予算は文化庁)の事業であるコミュニケーション教育推進事業について、今年度からはコーディネート団体が申請できるようになり、そういった国の支援事業も活用している。豊島区は全国的にも珍しく、文化関連での予算ではなく、教育委員会が予算をつけている。 
東京文化発信プロジェクト室長 江川 東京文化発信プロジェクトは東京都歴史文化財団の一事業として位置づけられている。財団は主に東京都の文化施設の運営を行っているが、ソフトにも力を入れ始めている。本プロジェクトには、音楽や演劇、伝統文化などの芸術祭を開催するフェスティバル事業、子供に関するキッズ事業、地域でアートを創造するアートポイント計画の3つがある。PKTは、将来の日本を支える青少年へ向けての重要な育成事業であり、文化を担うことは社会を担うことと同様だと考えている。ワークショップの中で出来上がる結果よりも、ワークショップを通して子供一人ひとりが何らかの体験ができれば良いと思っている。         

           

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このような内容で、フォーラムは閉会となりました。最後に美術家の港さんが、「今日のこの会は、実験的な会ではないかと思う。福祉や教育とは何かが問われていて、それを改めて考える機会となった」と仰っていました。一つ一つの話をまだまだ掘り下げていきたいところでしたが、また次の機会に皆様とさらなるディスカッションができればと思います。         
       

○参加者の感想より(抜粋)
・いつも難しいと感じるのは、広報やつながりの方法です。市役所等とも関わって模索を続けているが、アートは扱ってくれる部署がたらいまわしで未だに困っています。多分野にまたがることに関するということが、今とても求められているのだと実感はしているのですが…。(音楽企画・運営に携わる方) 

・実際の事例をたくさん見せてもらえてよかったです。アート、福祉の融合に可能性を感じています。(社会福祉に携わる方) 

・あまり他団体の意見や活動を知る機会がなかったので、単純におもしろく聞きました。こうした場が励まし合いの場になって勇気をもった取り組みがさらに増えることを期待しています。(会社員) 

・アーティストと子ども達が出会う機会は素晴らしいものだと感じました。ただ会うのではなく、コーディネーターの存在は欠かせないと実感しました。現場の先生も、悩むのではなくアンテナを広げて「協力して!」と声を出してほしい。今の子ども達がおかれるコミュニケーションの問題に対応できるのがアートなのだと思いました。コーディネーターになってみたいです。(学生)             


○関連ウェブサイト
パフォーマンスキッズ・トーキョー
http://www.children-art.net/pkt/            

横浜市芸術文化教育プラットフォーム
http://y-platform.org/            

アーティスト・イン・児童館
http://jidokan.net/ 

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